フランスの英雄詩
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オーベロンの名が13世紀前半に文学に登場し始め、『Les Prouesses et faitz du noble Huon de Bordeaux』という名の武勲詩において英雄を手助けする妖精の小人オーベロンが最初である。ボルドー伯爵セグイン(Seguin)の息子であるユオンは住処である森を通り抜けるときに、隠者からオーベロンに注意するように忠告された。しかし、彼の礼儀正しさはオーベロンの歓迎するところとなり、ユオンは探索行においてオーベロンの手助けを得られることとなった。ユオンは皇帝の息子シャルロを自己防衛のためとはいえ殺害してしまったために、バビロンのアミールの宮廷を訪ね、許しを得るべく様々な偉業をなさねばならなかった。そして、オーベロンの助けなくしては成功はなしえなかったのである。 このエルフは背丈は低いが非常に端正な姿であった。オーベロンの説明によると、彼の洗礼の際に怒った妖精が背丈に呪いをかけたが、後に怒りが和らいだ際に償いとしてすばらしい美しさを与えてくれたという。アルベリヒは『ニーベルンゲンの歌』においてドワーフ、小人として描かれるが、その背丈が低いことに関してはこのように説明されている。 現実のセグインは、839年にルートヴィヒ1世の元でボルドー伯になり、845年にノルマン人との戦いで戦死した。禿頭王シャルルの息子である幼年王シャルル (Charles the Child) は、この物語のシャルロと酷似した待ち伏せ状況下でオーボワン(Auboin)という人物によって負わされた傷により866年に死去した。このようにオーベロンは9世紀の出来事を基にした13世紀のフランスの宮廷物語に登場している。オーベロンにはいくらかケルト風の装飾が与えられている、例えば(聖杯に似た)徳の高い人物に対して常に満たされている杯がある。トマス・ブルフィンチによれば以下のように紹介されている。「魔法の杯は晩餐を与えてくれた。その力はワインを生み出すだけでなく、望むときに食物をも生み出した。」この物語においては、オーベロンは妖精グロリアンダとユリウス・カエサルの息子とされている。 トリノ市に存在する物語の写本には、オーベロンの独立した物語の形式で、ユオン・ド・ボルドーの話に対する序幕と4つの後日談が含まれている。後年のフランス版も同様の形になっている。 シェイクスピアも、ジョン・バウチャー (2代バーナーズ男爵)(英語版)による1540年頃の英訳(訳題: Huon of Burdeuxe)を通じて、この物語とオーベロンについて知ることとなった。フィリップ・ヘンズロー(英語版)の日記によると、1593年12月28日に Hewen of Burdocize という戯曲が演じられたとの記録がある。
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