データの2次利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/15 14:32 UTC 版)
電子カルテに蓄積されるデータは、個々の患者への診療の記録であると同時に、症例データベースとしての役割も担う。類似症例の分析を通じて、医療の質の向上に役立てられる。近年では、病院経営の観点から、医療行為の効率化の一検証手段としての役割も担うようになった。医療に携わる様々なスタッフがそれぞれの見地から直接・間接的にデータの2次利用を行っている。入力の効率化を目指して発展してきた電子カルテ・アプリケーションは、このような状況下において更なる機能追加を求められてきている。現在では、これらの多様性に対応すべく、電子カルテ・データベースを中心とするデータ2次利用環境の構築が活発に行われている。 一般的には、電子カルテ及び他の部門システムからの日々作成されるトランザクションデータをDWH(データウェアハウス)に蓄積し、そのデータを基に経営分析、医療行為分析等を行う場合が多い。昨今ではDWH(データウェアハウス)を使用せずに経営諸表の出力ができるシステムもリリースされている。 一部の電子カルテシステムでは、DB(データベース)に問い合わせする条件(検索条件モデル)を電子カルテ上の機能を用いて病院側にて作成を要する場合がある。この場合、検索結果で得られる情報精度並び真正性は、病院側が保障しなければいけない場合が多い。特に、個々の病院にて必要とされる統計資料は、診療形態、施設基準等の法制にて要求される内容も違いがあり、病院内の部門から業務上求められる統計資料等も同様に違いがある。そのため、あらゆる病院に対応できる汎用の問い合わせ条件(検索条件モデル)は、ほぼ存在しない。存在する場合としても汎用統計であるためカスタマイズが必要となり別途カスタマイズ費用を求められる場合がある。 2次利用のデータは、ドリルダウン等の横断、縦断検索が可能なことが前提で考えられているため、時間軸を持った3次元データになり膨大なデータ量となる。2次利用を行うシステムでは、膨大なデータを処理する能力を有する必要があるため、DWH(データウェアハウス)構築費用が高額になる場合がある。蓄積データが増えることでもハードウェアのスケーラビリティ向上のために追加費用を要する。 DWH(データウェアハウス)を構築していない病院情報システムでは、日々の医療業務中に電子カルテのDB(データベース)並びに医事会計システム、その他の部門システムに対して、直接、問い合わせを行い統計結果をはじき出している事例があるが、結果として、各システムに対し多大な負荷をかけている時がある。システム導入初期費用を抑えるためにDWH(データウェアハウス)構築をせずにシステム運用を開始したところ、各部門システムを跨いだ統計処理を実現しなくてはいけない状況、並びに各部門システムへの問い合わせ負荷を軽減させなければならない状況で、DWH(データウェアハウス)を追加導入する場合もある。追加導入の場合、各部門システムの情報をDWH(データウェアハウス)に集約する仕組み等の構築が必要であるため病院情報システム初期導入時に一括導入しておいた方が、トータルコストを抑えることが可能な場合が多い。
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