テクノロジーの進歩度合いの尺度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/07 22:41 UTC 版)
「テクノロジー史」の記事における「テクノロジーの進歩度合いの尺度」の解説
社会学者や人類学者は、社会文化的進化に関する理論を生み出してきた。ルイス・ヘンリー・モーガン、レスリー・ホワイト、ゲルハルト・レンスキらは文明の発展の原動力はテクノロジーの進歩であるとしている。モーガンの言う社会発展の主要な三段階(未開、野蛮、文明)の概念は、技術的進歩段階で分けることもでき、未開段階では火・弓・陶芸、野蛮段階では動物の家畜化・農業・金属加工、文明段階では文字と筆記などとなる。 ホワイトは、特定の発明ではなくエネルギーを文化の進化段階を判断する尺度とした。ホワイトによれば「文化の最重要機能」は「エネルギー制御方法」だという。ホワイトは、人類の発展段階を5段階に分けた。第1段階では、人類は自らの筋肉をエネルギー源としていた。第2段階では家畜化した動物をエネルギー源としていた。第3段階では植物のエネルギーを使っていた(農業革命)。第4段階では天然資源(石炭、石油、天然ガス)のエネルギー活用法を学んだ。第5段階では原子力エネルギーを利用できるようになった。ホワイトは P=E*T という式を導入した。ここで、Eは消費エネルギー量、Tはエネルギー利用技術の効率である。ホワイトは、年間一人当たりのエネルギー利用量が増えるか、エネルギーを利用する際の技術的効率が向上することで文化が発展すると主張する。ロシアの天文学者ニコライ・カルダシェフはこの理論を発展させ、より発展した文明でのエネルギー利用を分類したカルダシェフの文明階梯を生み出した。 レンスキはより現代的な手法を採用し、情報に着目した。(特に自然環境を適合させることを可能にするような)情報や知識が増えれば、社会がより進歩したとする考え方である。彼は通信手段の発展段階に従って、人類の発展を4段階に分けた。第1段階では情報は遺伝子で伝達される。第2段階では人類が知覚力を獲得し、経験から学習しそれを伝達することができるようになった。第3段階では記号を使うようになり、論理を構築できるようになった。第4段階ではシンボルを生み出し、言語と筆記を生み出した。通信技術の進歩は、経済システムや政治システムの進歩に直結し、富の分配、社会的不平等といったことにも密接に関連する。レンスキはまた、テクノロジー・通信・経済の段階から社会を次のように分けた。 狩猟採集社会 単純農耕社会 発展した農耕社会 工業社会 特殊ケース(漁業主体の社会など) 1970年代末以降、アルビン・トフラー、ダニエル・ベル、ジョン・ネズビッツといった社会学者や人類学者は、現代を産業社会が終わろうとして脱工業化社会が始まろうとしている時代と捉え、産業や財よりもサービスや情報が重要になるとした。脱工業化社会がさらに進展した社会については特にサイエンス・フィクションで描かれることが多いが、例えば技術的特異点後の社会のビジョンに近いと言われている。
※この「テクノロジーの進歩度合いの尺度」の解説は、「テクノロジー史」の解説の一部です。
「テクノロジーの進歩度合いの尺度」を含む「テクノロジー史」の記事については、「テクノロジー史」の概要を参照ください。
- テクノロジーの進歩度合いの尺度のページへのリンク