タングステンおよびその合金
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 02:17 UTC 版)
「耐火金属」の記事における「タングステンおよびその合金」の解説
詳細は「タングステン」を参照 タングステンは1781年に、スウェーデンの化学者カール・ヴィルヘルム・シェーレによって発見された。タングステンはすべての金属で最も高い融点、摂氏3,410度を持つ。 最大22パーセントまでのレニウムをタングステンと合金にすることで、その高温強度と摩耗耐性を強化することができる。電弧(電気アーク)を形成する必要があるときには、合金構成材としてトリウムが用いられる。トリウムを添加しない場合に比べて、電弧が容易に発生し、より安定的に維持される。粉末冶金用途では、焼結処理において結合剤を用いなければならない。タングステン重合金の製造においては、ニッケルと鉄の混合物、またはニッケルと銅の混合物が、結合剤として広く用いられる。合金におけるタングステンの構成率は通常90パーセント以上である。タングステン粒子への結合剤の拡散は、焼結温度においてもかなり低く、粒子の内部はほぼ純タングステンである。 タングステンとその合金は、高温の環境で高い強度が必要であるが、高い密度は問題とならないような場所で良く用いられる。タングステン製のフィラメントは、大多数の家庭用白熱電球に用いられるが、産業用の放電灯の電極としても用いられる。より高い温度で電力を光に変換することで、電球の効率が上がるため、白熱電球のフィラメントの用途では高い融点であることが重要である。TIG溶接の設備では、溶融しない恒久的な電極を用いる。高い融点と電弧に対する摩耗抵抗性のため、タングステンが電極材料として適切なものとされている。 タングステンの高い密度と強度は、兵器の弾体として使用する際にも重要な特徴となる。例えば、戦車砲弾に劣化ウランを使う代わりの材料となる。タングステンは高い融点を持つことから、ポラリスミサイルなど、ロケットエンジンノズルのような用途に用いるためにも良い材料となる。タングステンの用途の中には、耐火金属としての特徴とは関係せず、単に高い密度に関連しているものもある。たとえば、航空機やヘリコプター、あるいはゴルフクラブのヘッドにおけるバランスウェイトとしての役割がある。この用途では、より高価なオスミウムなど、同等の密度の材料であれば同様に使用できる。 タングステンのもっとも一般的な用途は、ドリルや機械加工、切削工具などに炭化タングステンという化合物の形で用いられるものである。タングステンの最大埋蔵量は中華人民共和国が保有しており、他に韓国、ボリビア、オーストラリア、その他がある。 また、ノズルやブッシングなどにおいて、保護コーティングやその他の多くの形で、潤滑剤や抗酸化物質として用いられる。タングステンは他に、印刷用インク、X線スクリーン、写真薬剤、石油製品処理、布の防炎加工などでも用いられる。
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