シェーンベルクによる管弦楽編曲版
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/13 15:17 UTC 版)
「ピアノ四重奏曲第1番 (ブラームス)」の記事における「シェーンベルクによる管弦楽編曲版」の解説
新ウィーン楽派の1人として知られるアルノルト・シェーンベルクはバッハやブラームスなどの曲をオーケストラ用に編曲している。これは管弦楽法の学習の一環として、また偉大な先輩作曲家への敬意の表現としてである。このピアノ四重奏曲についてはシェーンベルクがアメリカに移住後の1937年に編曲され、翌1938年5月7日に、ロサンゼルスでクレンペラーが指揮するロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団により初演が行われた(録音が残されており、CD化もされている)。 シェーンベルクは編曲の理由として私信で「私はこの作品が好きだが滅多に演奏されず、しかもピアノ・パートに優れた演奏家がいるとそのパートが強調されるためにかえってまずい演奏になるため、全てのパートが聴こえるように編曲した」「(オーケストレーションについては)ブラームスの書法を忠実に守り、もし本人が今行ったとしても同じ結果になったようにした」と語っている。そのため、この編曲では楽曲の構造自体はそのままで、ピアノパートをオーケストラに置き換えることが中心となっている。 しかしその管弦楽法についてのコメントは部分的にはうなずける箇所もあるが、特に第2、第4楽章では明らかに、シェーンベルクの時代の管弦楽法を駆使した編曲を行っており、必ずしも彼の言葉を額面通り受け取るわけにはいかない。例えばブラームスの管弦楽を用いた作品では打楽器はあまり用いられていないが、シェーンベルクの編曲では第2、第4楽章において多彩な打楽器を用いている。シンバルや大太鼓などオーソドックスなものから、グロッケンシュピール、シロフォンやスネアドラムなど、ブラームスが用いなかったものまで動員している。また、ブラームスは交響曲などでホルンを多用したが、トランペットは音色が派手であるとして積極的には用いなかった。ホルンは(既に19世紀にバルブが開発されていたにもかかわらず)一部を除けばバルブなしでも吹けるような音に制限し、古典派的な使用法に徹している。しかしシェーンベルクの編曲では、トランペットを含めて、金管楽器も旋律楽器として積極的に用いている。楽器の発達を反映してか、早いパッセージを吹く場面もある。また、オーケストラでの演奏に合わせるためか、強弱指定が拡張され(pp~ffからpppp~fffまで)、ブラームスの特徴である速度や強弱の微妙な言い回し("piu"~、"poco"~など)がほぼ全て省略され、さらに弦楽器が細かくディヴィジされているなど、原曲にある程度配慮しつつ各楽器のダイナミクスが注意深く指定されている点も特記される。 ニューヨーク・シティ・バレエ団は、このシェーンベルク編曲版を用いたバレエ『ブラームス=シェーンベルク・カルテット(英語版)』(振付:ジョージ・バランシン)を1966年に初演している。
※この「シェーンベルクによる管弦楽編曲版」の解説は、「ピアノ四重奏曲第1番 (ブラームス)」の解説の一部です。
「シェーンベルクによる管弦楽編曲版」を含む「ピアノ四重奏曲第1番 (ブラームス)」の記事については、「ピアノ四重奏曲第1番 (ブラームス)」の概要を参照ください。
- シェーンベルクによる管弦楽編曲版のページへのリンク