サリヴァンの理論(「発達論的アプローチ」)
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「ハリー・スタック・サリヴァン」の記事における「サリヴァンの理論(「発達論的アプローチ」)」の解説
サリヴァンは出生以降の他者との交わりの様式を5つに分けている。 第一がinfancy era(乳児期)であり、ここでは自らに快楽(母乳による空腹軽減)を与える絶対他者(神の前概念)との二値的な関係である。この時期の体験様式を「宇宙的融即cosmic participation」としている。 第二にchildhood era(幼児期)であり、ここでは第一次集団(同じ家に住む家族)との交流、特に支配/服従関係を中心にした交流が営まれる。この時期以降に観察されるの病理として、精神発達遅滞を伴わない対人関係の障害(現代の自閉スペクトラム症)を指して「精神病質の幼児psychopathic child」という言葉を精神医学界に初めて提出した。また、幼児期に養育者の生殖器に対する態度(乳児自慰に対する親の過剰反応など)が取り込まれ、「去勢不安」としてみられる情緒的反応を作ると考えた。(幼少期の具体的な対人的イベントによって人格形成が進むという発言は、当時のフロイト派から激烈な反発を受けた。この頃のフロイト派の理論は人格形成がリビドーなどの個人内の力動によって完結すると主張していたためである。) 第三にjuvenile era(児童期)であり、就学によって家族以外の人間と交流し、直接の面識を持たない人間とも書物や伝聞を介して間接的な交流を持つようになる。このときにカースト制、すなわち貧富の差別、人種差別の萌芽が現れる。 第四にadolescence era(青春期)があり、二次性徴を通して生じた性の葛藤、特に同性・同年代の集団における性の取扱いが主題となる。青春期はさらに三つに分類され、前青春期preadolescence(初めての親友chumを得てから、二次性徴の完了するまでの期間)、青春期中期mid-adolescence(性欲が出現し、それを対人関係の中に位置づけるまでの期間)、青春期後期late-adolescence(性行動のパターン化が完了してからの期間)である。同性間に育まれる広義の性的交流を人格発展の基本的な場としている。性欲の出現する直前、かつ「水入らずの親友」を希求する気持ちの芽生えた前青春期に、精神障害の治療だけでなく、文化史的な意義のあることを指摘している。 なお性の葛藤を対人関係の中で満足に昇華できたものだけがadulthood(成人期)に達する。(なおサリヴァンの著作のなかで成人期に関する記述は、その定義を除けばほぼ皆無である。)
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