ギリシア神話のダナエ
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「ダナエ (ティツィアーノの絵画)」の記事における「ギリシア神話のダナエ」の解説
プラド美術館所蔵の『ダナエ』はスペイン王フェリペ2世の依頼でティツィアーノが描いた、『ポエジア』という総称で知られるギリシア神話を題材とした作品群の一部である。当時オウィディウスの詩によって知られていたダナエに関するギリシア神話のエピソードは次のようなものである。アルゴス王アクリシオスが男児を授かるかどうかの神託を受けたところ、王自身は男児に恵まれないが娘のダナエが息子を産み、そしてその息子にアクリシオスは殺されるという予言が下った。この神託を恐れたアクリシオスは男性が近づかないようにダナエを地下室に幽閉する。ダナエは自身の息子が父王を殺害するという神託を知っていたが、黄金の雨に化身したゼウスに誘惑され、男児を妊娠してしまった。 ダナエが男児ペルセウスを出産したことを知ったアクリシオスは、自身の孫ペルセウスがゼウス神の子供であることを無視して、母子を箱に閉じ込めて海へと流してしまう。母子が閉じ込められた箱はセリーポス島に漂着し、ペルセウスはその島のディクテュスによって育てられた。その後成長したペルセウスは、事故とはいえ神託通りにアクリシオスを殺害することになる。アクリシオスの死因については文献によって様々な説がある。古代ローマ時代の著作家アポロドーロスの作品とも言われる『ビブリオテーケー』によれば、神託の内容をペルセウスが知ったことが分かると、ペルセウスを恐れたアクリシオスはテッサリアへと亡命した。テッサリアではラリサ王テウタミデスが亡くなった父のための追悼競技大会を開催しており、その競技大会の円盤投げ競技に出場したペルセウスが投擲した円盤の軌道が逸れて観客席のアクリシオスに命中し、即死したとされている。 中世からルネサンス期を通じてダナエは上流階級の堕落の象徴であり、女性美や道徳を汚す存在と見なされていた。また、古代ギリシアのある警句家はダナエとゼウスのエピソードについて次のように書き残している。 オリンポスの主神ゼウスが黄金の雨となってダナエのもとを訪れ、ゼウスの誘惑に屈した結果ダナエは身篭った。ダナエが幽閉されていた青銅で囲まれた部屋に忍び込んだゼウスがダナエの純潔を奪ったということは、ゼウスがダナエを黄金で買ったと同義である。このエピソードは、全てのものを上回る黄金の価値が青銅の壁や桎梏を無効化することを意味する。黄金はいかなる束縛からも解放する能力、あらゆる錠前をこじ開ける力を持ち、自分を軽蔑している女性をも平伏させることができる。ダナエも黄金の力の前に屈服した女性であり、金さえあれば恋人を得るために愛と美の女神アプロディーテーに祈りを捧げる必要はない。
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