ギリシア神話との関連
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「ワルキューレ (楽劇)」の記事における「ギリシア神話との関連」の解説
『ヴァルキューレ』の物語や人物設定は主として『エッダ』や『ニーベルンゲンの歌』などの北欧神話やドイツ英雄伝説に依っているが、ドラマの手法や展開的には、ギリシア神話とりわけギリシア悲劇の影響が色濃く見られる。 第1幕においてジークムントとジークリンデが互いに兄妹であることを知る場面は、ギリシア悲劇に見られるアナグノーリシス(Anagnorisis、認知または再認)の手法である。ここではとくに、父アガメムノーンを殺された復讐に際して再会するエーレクトラーとオレステースの姉弟の物語と関連が深い。この題材に基づくギリシア悲劇には、アイスキュロス『供養する女たち』、ソフォクレス『エレクトラ』、エウリピデス『エレクトラ』がある。 第2幕以降でブリュンヒルデがヴォータンの命に逆らい罰せられる物語は、ギリシア神話において、ゼウスの命に逆らって人間に火をもたらしたために罰せられ、カウカソスの岩山に縛り付けられたプロメーテウス(アイスキュロス『縛られたプロメテウス』)、あるいはテーバイ王の命に逆らってポリュネイケースを埋葬したアンティゴネー(ソフォクレス『アンティゴネ』)を彷彿とさせる。 第3幕で登場するブリュンヒルデを除く8人のヴァルキューレたちは、ギリシア悲劇のコロスの役割を与えられている。また、幕切れでブリュンヒルデがヴォータンによって眠りにつく場面は、直接的にはグリム童話の『いばら姫』のモチーフと重なるが、ここでヴォータンはローゲを呼び出し、岩山に炎を縛り付けており、上述の『縛られたプロメテウス』との関連性に「火」のモチーフも重なる。
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ギリシア神話との関連
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「ジークフリート (楽劇)」の記事における「ギリシア神話との関連」の解説
ジークフリートの原型のひとつはギリシア神話のアポローンと見られる。アポローンは「ポイボス(光り輝く)」と呼ばれ、第3幕でブリュンヒルデがジークフリートを「光明」、「輝かしい」などと連呼することと対応している。また、ワーグナーは自著『芸術と革命』において、「アポローンはギリシアの地におけるゼウスの意志の執行者」としており、これはヴォータンとジークフリートの関係に投影されている。 一方、第3幕第2場でヴォータンがジークフリートの行く手を遮り、ノートゥングによって槍を折られる場面は、ギリシア神話の英雄オイディプースがテーバイに向かう三叉路において、実の父とは知らずにラーイオスを殺してしまう場面と重なっている。オイディプースは捨て子で養父母に育てられており、ジークフリートが養父に育てられているのと共通する。その後オイディプースは、怪物スピンクスを退治し、実の母とは知らずにイオカステーと結婚するが、ジークフリートもまたファーフナーを退治し、祖父ヴォータンの娘であるブリュンヒルデと結ばれる。 このように、ジークフリートとブリュンヒルデの関係には、オイディプースとイオカステーの母子相姦のモチーフが潜んでいる。また、オイディプースとイオカステーとの間にテーバイ悲劇の「救済者」としてのアンティゴネーが生まれたように、ジークフリートとブリュンヒルデ、つまり男性的要素(詩人)と女性的要素(音楽)の合体によって理想の芸術が生まれるとするワーグナーの思想もここに重ねられているのである。
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