キリスト教とガブリエル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 02:19 UTC 版)
「ガブリエル」の記事における「キリスト教とガブリエル」の解説
ガブリエルはキリスト教の伝統の中で「神のメッセンジャー」という役割を担うことが多い。たとえば『ルカによる福音書』では祭司ザカリアのもとにあらわれて洗礼者ヨハネの誕生をつげ、マリアのもとに現れてイエス・キリストの誕生を告げる。 するとザカリヤは御使に言った、「どうしてそんな事が、わたしにわかるでしょうか。わたしは老人ですし、妻も年をとっています」。御使が答えて言った、「わたしは神のみまえに立つガブリエルであって、この喜ばしい知らせをあなたに語り伝えるために、つかわされたものである。時が来れば成就するわたしの言葉を信じなかったから、あなたはおしになり、この事の起る日まで、ものが言えなくなる」。 — ルカによる福音書1章18節から20節(口語訳) 六か月目に、御使ガブリエルが、神からつかわされて、ナザレというガリラヤの町の一処女のもとにきた。この処女はダビデ家の出であるヨセフという人のいいなづけになっていて、名をマリヤといった。 — ルカによる福音書1章26節と27節(口語訳) 聖書本文に名前は出ないが、伝統的に『ヨハネの黙示録』にあらわれて、ヨハネに神のことばを告げる天使もガブリエルであると考えられてきた。最後の審判のときにラッパを鳴らし、死者を甦らせるのもガブリエルだという。 カトリック教会ではガブリエルは通信事業の守護者であり、その聖名祝日はラファエル・ミカエルと共に9月29日である。ガブリエルが聖母マリアを訪れてイエスの誕生を告げた出来事は「お告げ」あるいは「受胎告知」といわれ、カトリック教会では3月25日に記念されている。聖母マリアの純潔を示す、白百合を携えて描かれていることが多い。また、ロザリオの祈りの喜びの玄義の第一玄義はこの「お告げ」の出来事になっている。 正教会でも生神女(マリア)のもとを訪れてイイスス(イエスの中世ギリシャ語・教会スラヴ語読み)の誕生を告げたのはガウリイルであると伝承されており、生神女福音祭のイコンにその情景が描かれる(正教では通例「受胎告知」の用語を用いず、「生神女福音」の語彙が用いられる)。正教会の聖堂に設置されるイコノスタシスではしばしば天軍首ミハイルとともに南門・北門にガブリエルのイコンが描かれる。杖または百合をもっていることもある。 ただし、正教会をはじめとした東方教会は西方教会とは異なる歴史を辿ったため、図像表現についても西方教会における状況がそのまま当て嵌まる訳では無い。西方教会のように優美で女性的な表現はビザンティンイコンにおいては皆無であり、西方教会の文化的影響を蒙った地域においてもそうした傾向は限定的であり、イコンのみならず宗教的題材を扱った世俗絵画においても同様のことが言える。
※この「キリスト教とガブリエル」の解説は、「ガブリエル」の解説の一部です。
「キリスト教とガブリエル」を含む「ガブリエル」の記事については、「ガブリエル」の概要を参照ください。
- キリスト教とガブリエルのページへのリンク