カルスト泉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/04 14:17 UTC 版)
カルストの山地は雨水が地下に浸透するため、一般に水に乏しく、例外的なものを除いては湧泉は見られない。しかし山麓や沖積地などには石灰岩体に貯留した地下水が流れ出たり、湧き上がったりするところが多く、これらを総称してカルスト泉と呼ぶ。 湧出地の様子からみると次のようなものがある。洞窟から地下川が流れ出るもの: 秋吉台の秋芳洞、滋賀県河内風穴など。 洞窟をともなわず石灰岩の岩間から流れ出るもの: 秋吉台の帰水、広島県帝釈峡の養鱒場の湧泉など。 沖積地において湧き上がり、池や川をなすもの: 秋吉台の温水(ぬくみず)の池、福岡県糸田町の泌泉(たぎり)、同平尾台の大清水(おしょうず)、大分県佐伯市井上の番匠川など。 水文地質学的には上記3つの型の湧泉は、その場所が石灰岩と非石灰岩との岩層境界(不整合、断層、重なり関係など)に位置するか、全くの石灰岩体中に位置するかによって細分される。 海岸線において海水に堰き止められる形で湧くもの: 琉球列島の石灰岩からなる島々の潮間帯に湧くもの。 海底に沈んだ鍾乳洞から湧くもの: 地中海沿岸の海底泉など、氷期の海面低下時に形成された洞窟に起源をもつ。 地下水の湧き型からみると次のように分類される。周年性のもの: 1年を通じて常時湧いている。秋吉台の秋芳洞、岩手県龍泉洞の地下川など。 季節的のもの: 雨の多い季節に定常的に湧くもの。秋吉台の釣水や景清洞の地下川(三角田川)など。 一時的なもの: とくに激しい降雨の後だけに湧くもの。 間欠的のもの: 降雨とは関係なく、時間をおいて周期的に湧くもの。岡山県阿哲台の潮滝など。 地下水の賦存型からみると次のように大別される。地下水面下深層の地下水が湧き上がるもの: 短期的には降水の影響がみられず、水温や水質、流量等が安定している。秋吉台の温水の池、福岡県糸田町の泌泉など。稀には温泉水や汽水(沖縄県本部町の塩川)が湧くものもある。 地下水面下浅層の地下水が湧くもの: カルスト泉の多くがこの型に属し、水温や水質、流量等の日変化、季節変化、経年変化等に地表の川と同じような特徴がみられる。秋吉台の秋芳洞や帰水、平尾台の不動洞など。 地下水面より上の循環水帯を定常的に流れる地下水流が湧くもの: 石灰岩地に接して非石灰岩のつくる山地が広がっている場合などにみられる。流れ方の特徴は同上。熊本県球泉洞、福岡県平尾台の千仏鍾乳洞や青龍窟の地下川など。 石灰岩中や被覆土壌中の宙水が湧くもの: カルスト台地上に湧くごく小規模のもの。秋吉台の姫山の水や女郎ヶ池など。
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