季節変化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 09:30 UTC 版)
時期としては、春にもっとも多く発生する。降水量が少なく地面が乾燥する冬は、シベリア高気圧の影響で風があまり強くない穏やかな天候が続くうえ、ほとんどの乾燥地帯の表土は積雪に覆われてしまうため、黄砂が発生しにくい。春になると、表土を覆った積雪が融け、高気圧の勢力が弱まる代わりに偏西風が強まり、低気圧が発達しながら通過するなどして風が強い日が増えるため、黄砂の発生も増えると考えられている。春の中盤に入り暖かくなってくると植物が増え、夏になると雨も多くなるため、土壌が地面に固定されるようになって次第に黄砂の量は減り、秋に最少となる。 発生地側の新疆ウイグル自治区での砂塵嵐の日数を調べた統計では、最多の4月に年間の約20%が集中し、3月から6月の4か月間に年間の約70%が集中する。敦煌から河西回廊での砂塵嵐の日数を調べた統計では、春の3か月間に年間の5割弱が集中する。ただし、秋にも約1割の発生があり、年間を通して発生している。 一方、飛来地側の日本では、春にあたる2月から5月の4か月間に年間の約90%が集中し、夏にあたる7月 - 9月はまったくと言っていいほど観測されない。ただし、これは地上での観測をもとにした統計であり、上空を通過する薄い黄砂は夏にも観測されている。 また近年、地上では視程も低下しないため黄砂として観測されないときに、自由大気(自由対流圏)と呼ばれる高層で薄い砂塵が観測されることが分かってきた。これは「バックグラウンド黄砂」と呼ばれている。普段地上でほとんど黄砂が観測されない夏や秋にも発生するほか、高山では酸性霧の中和に関与していることが解明されてきている。バックグラウンド黄砂の特徴として、発生地付近で砂塵嵐の発生がなく、砂塵を巻き上げて運ぶ低気圧さえない状態にもかかわらず、発生することが挙げられる。また、バックグラウンド黄砂の成分の特徴として、通常ではCa(カルシウム)がおもにCaSO4(硫酸カルシウム)の形で存在しているのに対して、バックグラウンド黄砂ではおもにCaCO3(炭酸カルシウム)の形で存在していることが挙げられる。これは、バックグラウンド黄砂が、地上から排出される大気汚染物質に含まれているSO42−(硫酸イオン)とほとんど混ざっていないことを意味し、普通の黄砂とは異なる経路を通ってきていることを示している。
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