オン・デマンド式/スタンバイ式(パッシブ式)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 10:31 UTC 版)
「四輪駆動」の記事における「オン・デマンド式/スタンバイ式(パッシブ式)」の解説
パートタイム式には、二駆と四駆の切り替えに戸惑うユーザーも多く、また直結状態に気づかないまま舗装路で高速走行をするなどで車を壊したり火災を起こしたりするトラブルも少なくなかった。そこで、切り替え操作を必要せず、自動化を図ったオン・デマンド式が考案された。センターデフの代わりに流体クラッチ(流体継手、単にカップリングとも呼ばれる)を持ち、通常は前後どちらかの主駆動輪で走行し、主駆動輪と残りの二輪(従駆動輪)に回転差が生じると、従駆動輪にも駆動力を自動的に伝達する方式。従駆動輪の働きは補助的であり、長時間や強い駆動力の伝達には不向きである。必要となってから駆動配分を行うため、パッシブ(受動)式とも呼ばれる(実際にはカップリングは高粘度のオイルで満たされた湿式クラッチなので完全に切れることはなく、従駆動輪にも常にある程度のトルクが掛かっている)。従駆動輪の連結を切断する必要がなく、4WD切り替えスイッチなどはほとんど設けられない。 ビスカスLSD付センターデフ方式と混同されがちであるが、長時間の耐久性や駆動力配分でまったく別の動作を示すもので、センターデフを持たないこのスタンバイ方式のほうが機構的に単純である。頑丈な円筒形ケースに多板クラッチとシリコーン樹脂を封入し、前後輪の回転差で発生する攪拌熱によるシリコンの膨張で多板クラッチを圧着し、差動を制限するビスカスカップリングをリアデフの前のプロペラシャフトに挿入した方法である。電子的な制御用のデバイスが一切不要で、特にフォルクスワーゲンが採用した初期の大型のものは、レスポンスや効きも申し分ない物であった。その後、ビスコドライブ社への特許料が不要で、なおかつ製造も簡単で安価なトリブレード(3葉プロペラ)式やデュアルポンプ式の流体クラッチが登場したが、総じてレスポンスが悪く、繋がりが唐突であるなど、洗練度にも欠けるものであった。 特に後者のスタンバイ式4WDは、悪路で滑って後輪が駆動するまでにはっきりとラグがあり、コーナーなどでフロントが滑ったあげくリアに駆動力が加わり車体の大きな動揺、スピンに陥ることもしばしばあった。悪路走破性において実際にメリットがない場面も多く「無い方がマシ」「なんちゃって4WD」などとと揶揄されることも多い。現在、普通車以上のカテゴリでの採用は珍しくなったが、ケース内圧力を高めるなどの改善を図りつつシステムの軽さというメリットを生かし、排気量1500cc未満のコンパクトカー・軽自動車では多く採用されている。 なお、本項目ではセンターデフ式フルタイム4WDと区別したが、日本においては、本田技研工業(いすゞ自動車にOEM供給されていた製品を含む)が「リアルタイム4WD」の名称を使った以外は、ほぼすべての乗用車メーカーがビスカスカップリング式4WDを「フルタイム4WD」と呼称している。特に4WDの代名詞であった富士重工業(現・SUBARU)と、三菱自動車工業がこれに倣ったことの影響は大きい。また市販ベース競技車として「スズキ・アルトワークス」「ダイハツ・ミラ TR-XX」が採用し実績を残したことも大きい。
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