エネルギーのロス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 03:14 UTC 版)
電気機器の消費電力量(kWh)は、単位時間(h)ごとの電力(kW)の総和なので、消費電力が減少すればそれに比例して消費電力量は低減される。しかし現実には、例えば白熱電球の電源電圧を5%低下させると、明るさ(光度エネルギー)は5%よりさらに減少する(ある実験では100Vの明るさに対し83.3%に低下した)。これは、物体の温度と発する光の波長・強度が比例関係になく、赤外線の割合が増すことなどによる。ヒーターの場合も、断熱材を使っても熱移動をゼロにすることは出来ず、同様となる。 もし明るさを犠牲にしてでも電力量を低減したいならば、ワット数の小さい電球に交換する方が安価で効率低下も少ないし、ヒーターなら設定温度を下げれば済む(ただし、白熱電球の寿命改善は期待できる)。まして、電圧低下後に従前と同じ性能を確保しようと電球の数を増やしたり、ヒーターの通電時間を延長した場合、損失が増している分だけ消費電力は増える。 節電器自身についても、変圧器の損失(巻線の電気抵抗、鉄芯の渦電流損失、漏れ磁束などで、3kWで20W程度)や制御回路があればその電力消費量が必ず発生する。 一方、ある性能を発揮する事(仕事)を求められる電気機器の場合、消費電力が減少すると仕事率の低下によって、消費電力量は変わらないか、むしろ増加する。特にヒートポンプ式冷暖房器や冷蔵庫などは稼働時間が長くなるだけでなく、圧縮機のロスやモーター過熱(トルク減少で滑りが増す場合)によって電力消費量は確実に増加する。工作機械などでは単に作動時間を長くするだけでは補償できず、例えば切削加工ではトルク低下により性能を損う(切り込めない、切削面が粗い、など)恐れが高い。 また、電力会社からの供給電圧が想定より低下した場合は著しい性能低下の恐れがある。モーターの場合、過電流保護回路も低電圧で不動作だった場合、焼損に至る。この場合、経済的損失はもちろん、製品製造におけるエネルギーロスは大きなものとなる。 なお、内部に電力変換装置を持つインバーター制御の蛍光灯やLED電球、コンピュータ、オーディオビデオ機器などのいわゆる電子機器は、電源電圧がかなりの範囲で変動しても内部の消費電力を一定にできる(電源電圧が低下するとその分電源電流が増える)ので、電圧を低下させても電力使用量に変化はない。
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