エネルギーのやりとりの詳細
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 04:31 UTC 版)
「スイングバイ」の記事における「エネルギーのやりとりの詳細」の解説
質量 m1 の主星の周りを、公転半径 r2in の真円の公転軌道を公転速度 v2in で公転している質量 m2 の惑星に対して、質量 m3 の宇宙機が速度 v3in で進入して、スイングバイを行うとする。そして、スイングバイ後の惑星の惑星の公転半径は r2out 、公転速度は v2out 、宇宙機の速度は v3out となるとする。なお、 m 1 > m 2 ≫ m 3 {\displaystyle m_{1}>m_{2}\gg m_{3}} であり、速度は主星に対するものである。 惑星の軌道の変化は少ないので、スイングバイ後の公転軌道も真円と考えて概算する。スイングバイ後の惑星の軌道について正確にいえば、増速スイングバイが行われた後は、スイングバイが行われた付近を遠地点とする楕円軌道になり、減速スイングバイが行われた後は、スイングバイが行われた付近を近地点とする楕円軌道になる。 主星の重力と惑星の公転による遠心力が釣り合っていることから、次の関係がある。G は万有引力定数である。 G m 1 m 2 r 2 i n 2 = m 2 v 2 i n 2 r 2 i n {\displaystyle {\frac {Gm_{1}m_{2}}{r_{\rm {2in}}^{2}}}={\frac {m_{2}v_{\rm {2in}}^{2}}{r_{\rm {2in}}}}} スイングバイの前後で、惑星の運動エネルギーと惑星の主星に対する位置エネルギーと宇宙機の運動エネルギーの合計は等しいことから、次の関係がある。なお、よほど r2in が小さい場合以外は宇宙機の主星に対する位置エネルギーの変化は無視できる。 1 2 m 2 v 2 i n 2 − G m 1 m 2 r 2 i n + 1 2 m 3 v 3 i n 2 = 1 2 m 2 v 2 o u t 2 − G m 1 m 2 r 2 o u t + 1 2 m 3 v 3 o u t 2 {\displaystyle {\frac {1}{2}}m_{2}v_{\rm {2in}}^{2}-{\frac {Gm_{1}m_{2}}{r_{\rm {2in}}}}+{\frac {1}{2}}m_{3}v_{\rm {3in}}^{2}={\frac {1}{2}}m_{2}v_{\rm {2out}}^{2}-{\frac {Gm_{1}m_{2}}{r_{\rm {2out}}}}+{\frac {1}{2}}m_{3}v_{\rm {3out}}^{2}} これらを計算すると、惑星の公転半径と公転速度の変化は、宇宙機の得たエネルギー E ( = 1 2 m 3 v 3 o u t 2 − 1 2 m 3 v 3 i n 2 ) {\displaystyle E\left(={\frac {1}{2}}m_{3}v_{\rm {3out}}^{2}-{\frac {1}{2}}m_{3}v_{\rm {3in}}^{2}\right)} を用いて、次のように表されることが分かる。 Δ r 2 = r 2 o u t − r 2 i n ≃ − 2 r 2 i n 2 E G m 1 m 2 {\displaystyle \Delta r_{2}=r_{\rm {2out}}-r_{\rm {2in}}\simeq -2{\frac {r_{\rm {2in}}^{2}E}{Gm_{1}m_{2}}}} Δ v 2 = v 2 o u t − v 2 i n ≃ E m 2 v 2 i n {\displaystyle \Delta v_{2}=v_{\rm {2out}}-v_{\rm {2in}}\simeq {\frac {E}{m_{2}v_{\rm {2in}}}}} つまり、スイングバイで宇宙機の運動エネルギーが増える(加速する)場合、惑星の公転半径は小さくなり、惑星の公転速度は速くなる。そうはいっても、非常にわずかな変化であり、ほとんど無視できる量である。
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