イロハカエデとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > イロハカエデの意味・解説 

いろは‐かえで〔‐かへで〕【×伊呂波×楓】

読み方:いろはかえで

ムクロジ科落葉高木関東以西山地自生手のひら状に五〜七つ裂け秋に紅葉する。花は春につけ、暗紅色。名は、裂け目を「いろはにほへと」と数えたことによる。庭によく植え、材は建築器具用。たかおかえで。いろはもみじ


以呂波楓

読み方:イロハカエデ(irohakaede)

高雄紅葉別称


イロハモミジ

(イロハカエデ から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/19 16:27 UTC 版)

イロハモミジ
紅葉しかけの
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
: ムクロジ目 Sapindales
: ムクロジ科 Sapindaceae
: カエデ属 Acer
: イロハモミジ A. palmatum
学名
Acer palmatum Thunb. (1784)[1]
シノニム
和名
イロハモミジ(いろは紅葉)
イロハカエデ(いろは楓)
タカオカエデ(高雄楓)
コハモミジ(小葉紅葉)
英名
Japanese maple

イロハモミジ(いろは紅葉[3]・伊呂波紅葉[4]学名: Acer palmatum)は、ムクロジ科カエデ属[注 1]落葉小高木または落葉高木である。別名で、イロハカエデタカオカエデなどとも呼ばれるが、単にモミジと呼ばれることが多い。

日本では最もよく見られるカエデ属の種で、紅葉の代表種。本種より作られた園芸種も多い(#変種・園芸種を参照)。

名称

和名イロハモミジは、葉が手のひらのように5 - 7つ裂片があり、この裂片を「いろはにほへと」と数えたことに由来する[4][5][6][7]。別名で、イロハカエデ(伊呂波楓)[8][4]タカオカエデ(高雄楓)[4][3]、コハモミジ(小葉紅葉)[4]、タカオモミジ(高雄紅葉)[1]、チョウセンヤマモミジ(朝鮮山紅葉)[1]ともよばれている。「タカオカエデ」の名は、京都の高雄山に多く、名所であることに由来する[9][6]。また、「カエデ」は葉の形がカエルの手(前脚)の形に似ることから「蛙手」の意味で名付けられたものである[6][7]

春の新緑と秋の紅葉が美しく、一般に「モミジ」と言えば、カエデ類を代表して本種のことを指している[8][4]植物学では、カエデとモミジは区別していない[5]。園芸上では、葉が鋭く深裂する場合はモミジ、浅く切れ込んでいる場合はカエデと称することが多い[5]

イロハモミジの花言葉は、「遠慮」「大切な思い出」とされる[10]

学名は「小さな手のカエデ」を意味する。ドイツ語での Fächerahornは「扇状のカエデ」の意味[11]

分布・生育地

東アジア日本朝鮮半島の南部[8][6]中国[10]台湾)に自生する。

日本では、本州福島県以南の太平洋側、四国九州に分布し[4][9][10]、平地から標高 1000メートル (m) 程度にかけての低山で多く見られる[8]。秋の紅葉が見事で、各所にもみじの名所をつくる[8]。山野に生えるほか、昔から人の手によって庭園や寺社の境内に植えられており[8]、庭木としてよく使われている[4]

特徴

落葉広葉樹小高木から高木[9][4]。樹高4 - 15 m[9]、幹の直径は 80センチメートル (cm) 以上に達する。樹皮は淡い灰褐色で[8]、成木では縦に筋が入るが、若木のうちは滑らかである[3]。一年枝は細く緑色や紅紫色で、日光が当たる側が赤く、日影側が緑色になる傾向がある[3]

対生し、葉身は長さ 3.5 - 6 cm、幅 3 - 7 cm で、掌状に深く 5 - 7裂する[4]。葉の大きさはカエデ類のなかで、最も小さい部類である[9]。裂片は細く、葉縁には鋭い大小不揃いの二重鋸歯があり[9]、裂片の先は長く尾状に伸びる[4](10 - 12月)には黄褐色から橙色、紅色に紅葉して散る[7]。ふつう、日当たりの良かった葉は赤く染まり、日当たりの悪かった葉は黄色くなることが多い[12]。落ち葉は、雨天のとき以外は次第に丸まって色褪せていく[13]。葉はオオモミジヤマモミジなどに似るが、本種の葉は一回り小さく、鋸葉が粗く不揃いなところで区別される。

期は(4 - 5月)[8]雌雄同株で、雄花両性花をつける[8][10]。若葉の芽生えと同時に、本年枝の先に複散房花序を出して、直径 4 - 6ミリメートル (mm) の花を下垂してつける[4][6]。花色は暗紫色で[4]、5個の片と、黄緑色もしくは紫色を帯びる萼片より小さい 5個の花弁をもつ。雄しべは8個つく[4]風媒花で花後に果実をつける[4]

果実は翼果で、長さ1 - 2 cm 程度の翼があり、秋(10月ごろ)に熟すと風を受けて回転しながら飛ばされる[7]

冬芽は枝先に仮頂芽を2個つけ、枝に対生して側芽をつける[3]。冬芽の芽鱗は8枚で外側の2枚が小さく、冬芽基部に毛や膜質の鱗片があるが、ない場合も多い[3]。冬芽わきの葉痕は細くてわかりにくく、維管束痕は3個ある[3]

ヤマモミジオオモミジは、本種の亜種とされることがある[7]。オオモミジは、イロハモミジに似ているが全体に大きく、果序は下を向いたまま果実が熟していくのが特徴である[14]

ヤマモミジ

ヤマモミジ(山紅葉[15]、学名: Acer amoenum var. matsumurae)は、ムクロジ科カエデ属の落葉高木。イロハモミジの亜種 (Acer palmatum subsp. matsumurae (Koidz) Ogata) または変種とされる場合があるが、オオモミジの変種 (Acer amoenum var. matsumurae) とされる場合もある。和名は「山モミジ」の意味である[16]

日本の北海道本州青森県から島根県日本海側の多雪地に分布し、山地に生える[15]。庭にも植栽される[16]。落葉高木で、高さ5 - 10メートル (m) になる[16]。タカオカモミジは本種の1変種である[16]。若木の樹皮は滑らかで、太い幹の樹皮は縦に浅く裂ける[17]。一年枝は細くて無毛で、つやのある黄緑色をしており、短冊状に葉痕が詰まっていることもある[17]

は径5 - 10 cmで掌状に7 - 9裂し、一般にイロハモミジより大きめになるが[16]、変異が大きい。葉柄は長く、葉の基部は心臓形で、中央の裂片はやや長く先端は尾状に尖る[15]葉縁に大小不揃いの二重鋸歯があり[18]、単鋸歯のオオモミジとは違いが見られる[15]。秋の紅葉はイロハモミジと同様に美しい[18][16]

花期は晩春(5 - 6月)[16][17]。新葉よりもわずかに早く、本年枝の先端から散房花序を出して、暗赤色の花を下向きにつける[15][16]。花は雄花と両生花があり、花弁は5個、雄蕊は8個つき、萼片は濃紅色をしている[15]。花が咲き終わると、花序(果序)の柄が上に持ち上がる[14]

果期は7 - 9月[10]。果実は翼果で長さ2 cmあり、ほぼ水平に開く[15]

冬芽は紅色で目立ち、芽鱗8枚に包まれており、基部は膜質の鱗片に包まれ縁に毛がある[17]。枝先に仮頂芽を2個つけ、側芽が枝に対生する[17]。葉痕は三日月形からV字形で、維管束痕が3個つく[17]

変種・園芸種

本種には下記をはじめとする様々な変種があり、また紅葉を観賞するのに園芸品種も多く作出されている[6][3]

  • ベニシダレ Acer palmatum var. dissectum Koidz.
  • ノムラカエデ Acer palmatum var. sanguineum (Nakai)
  • アオシダレ Acer palmatum f. aosidare Nemoto
  • チリメンカエデ Acer palmatum f. dissecta (thunb.) Sieb.et Zucc.
  • ヒガサヤマ Acer palmatum f. hikasayama Koidz.
  • シメノウチ(アオノ七五三) Acer palmatum f. linearilobum (Nakai)
  • オオサカズキ Acer palmatum f. ohsakazuki Koidz.

利用

イロハモミジは、美しい紅葉で知られる日本で最も有名なカエデである[9]。庭や公園、街路、寺社に多く植えられ、都市部でも鮮やかな赤色に紅葉し、多くの人に愛でられている[9]。一般にモミジといえば、本種やオオモミジ、ヤマモミジを差し、これらから多くの園芸品種も作り出されている[9]

脚注

注釈

  1. ^ APG体系ではムクロジ科に分類されるが、古いクロンキスト体系新エングラー体系ではカエデ科に分類されていた[1]

出典

  1. ^ a b c d 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Acer palmatum Thunb. イロハモミジ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月23日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Acer palmatum Thunb. var. coreanum Nakai イロハモミジ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月23日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 107.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 西田尚道監修 学習研究社編 2009, p. 9.
  5. ^ a b c 田中潔 2011, p. 141.
  6. ^ a b c d e f 邑田仁・米倉浩司編 2013, p. 174.
  7. ^ a b c d e 亀田龍吉 2014, p. 12.
  8. ^ a b c d e f g h i 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 139.
  9. ^ a b c d e f g h i 林将之 2008, p. 44.
  10. ^ a b c d e 田中潔 2011, p. 140.
  11. ^ Susanne Fischer-Rizzi : Blätter von Bäumen II. Hukusuisha. = 喜多尾道冬・林捷編『続・ドイツの樹の文化誌』白水社1994年(ISBN 4-560-01590-2)55頁。
  12. ^ 亀田龍吉 2014, p. 13.
  13. ^ 亀田龍吉 2014, p. 14.
  14. ^ a b 長谷川哲雄 2014, p. 28.
  15. ^ a b c d e f g 西田尚道監修 学習研究社編 2009, p. 22.
  16. ^ a b c d e f g h 邑田仁・米倉浩司編 2013, p. 175.
  17. ^ a b c d e f 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 108.
  18. ^ a b 林将之 2008, p. 45.

参考文献

関連項目


「イロハカエデ」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「イロハカエデ」の関連用語

イロハカエデのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



イロハカエデのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのイロハモミジ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS