アントン・ハイセル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 23:07 UTC 版)
「アントニオ猪木」の記事における「アントン・ハイセル」の解説
ブラジル政府を巻き込んだ国際的なプロジェクト「アントン・ハイセル」(1980年(昭和55年)に設立)は、猪木自身にとって生涯最大の事業であった。これは、ブラジル国内で豊富に収穫できるサトウキビの絞りかす(バガス)の有効活用法として考案された事業で、当時からブラジル政府は、石油の代わりにサトウキビから精製したアルコールをバイオ燃料として使用する計画を進めており、バイオテクノロジーベンチャービジネスの先駆けであった。このアントン・ハイセルを開始するにあたって、猪木は自民党の大物議員に「アントン・ハイセルによって世界中のエネルギー問題や食糧問題が全て解決する」と言って協力を呼びかけたが断られ、逆にブラジル情勢を危惧し辞めるよう説得されるが、猪木はこの事業に傾倒していった。 この一大プロジェクトとも言える計画に、解決しなければならない大きな問題が発生する。サトウキビからアルコールを絞り出した後にできるアルコール廃液と絞りかすの弊害、公害問題である。そこで家畜に飼料として食べさせるが、直ぐに下痢を起こしてしまう。また、土中にバガスをそのまま廃棄すると、土質を悪化させるため、その土地では農作物が取れなくなるなどの弊害が生じる結果になってしまう。 それでも猪木は世界の食料危機問題に対応すべく、バガスの再生飼料を食べた家畜の糞を有機肥料として、農業生産の向上と家畜の増産を目指すも、結局は日本とブラジルの気候の違いから発酵処理に失敗する。さらに追い討ちをかけるように、ブラジル国内のインフレが原因で生産コストはさらに悪化の一途を辿る。 これらの原因により、経営は数年で破綻する。マスコミ報道によれば、アントン・ハイセルのおよその負債額は数十億円とも言われ、テレビ朝日に放送権を担保に12億円の肩代わり(後に、株券と引き換えに佐川清佐川急便会長に債権を移動)してもらうがそれだけでは補えず、遂には新日本プロレスの収入の大半を補てんしてしまう。しかしこれが仇となり新日本プロレスでは初代タイガーマスク(佐山聡)や長州力などスター選手をはじめ13名もの選手が大量離脱するなど当時クーデターと言われた騒動が起き、やがて猪木の社長解任劇に発展する。山本小鉄などの動議により猪木代表取締役社長と坂口副社長は解任されテレビ朝日の社員が役員に就任したが、両者とも混乱の終結と共に数か月後に復帰した。 なお、ブラジルではサトウキビからエタノールを抽出するバイオ燃料事業は環境対策や2005年(平成17年)以降の原油価格高騰などから、内容が見直され積極的に行われている。 後日、猪木はアントン・ハイセルに対して「ブラジルの様々な偉い人から騙されていた」とコメントしていた。
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