アリストファネスとは? わかりやすく解説

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アリストファネス【Aristophanēs】

読み方:ありすとふぁねす

[前445ころ〜前385ころ]古代ギリシャ喜劇詩人ペロポネソス戦争前後アテナイアテネ)を風刺した作品が多い。作「」「平和」「女の平和」など。


アリストファネス【Aristophanēs】

読み方:ありすとふぁねす

[前257ころ〜前180ころ]アレクサンドリア文献学者。ホメロス・エウリピデスなどの校訂をした。


アリストファネス

名前 Aristophanēs; Aristophanes

アリストパネス

(アリストファネス から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/02 08:21 UTC 版)

アリストパネス

アリストパネス古希: Ἀριστοφάνης古代ギリシア語ラテン翻字: Aristophanēs紀元前446年頃 - 紀元前385年頃)は、古代アテナイ喜劇詩人風刺詩人である。アリストファネス、あるいはアリストパネースアリストファネース長母音でも表記される。なお現在のギリシア語ではアリストファニスのように発音される。

代表作はソクラテスに仮託する形でソフィストを風刺した『雲』、デマゴーグクレオンを痛烈に面罵した『騎士』、アイスキュロスエウリピデスの詩曲を材に採り、パロディーなどを織り交ぜて優れた文芸批評に仕上げた『蛙』など。

生涯

アリストパネスの著作以外の経歴はあまり詳細には伝わっていない。彼はアテナイ市内に生まれ、父はピリッポスといった。紀元前430年から428頃に劇作家としての修行を始め、カリストラトスの指導により最初の3作を匿名で発表した。44の喜劇作品を書いたが、うち現在まで完全に伝わっているものは11篇にとどまる。アリストパネスは大ディオニュシア祭の競演にたびたび入賞した、当時のアテナイを代表する喜劇作家であった。また3人の息子、ピリッポス(ギリシア人は父の名を男子に付ける風習を持っていた)、アラロス、ニコストラトスも喜劇作家となった。 なおアリストパネスはアテナイに近いアイギナ島に2回旅行している。

作風

ペロポネソス戦争に対しては一貫して批判的であり、『女の平和』のような直接に戦争に反対する内容の作品もある。アテナイの同時代の実在の人物、ソクラテスエウリピデスなどを取り上げて風刺することが多かった。特にエウリピデスは何度か登場し、彼の悲劇『ヒッポリュトス』でのセリフ「舌は誓ったが心は誓わない」は何度ももじって利用している。また、『女だけの祭』では女性蔑視が甚だしいが為に女性の敵と目され、何とか殺されることの無いように、あれこれ策を弄して立ち回ろうとする人物に戯画化されている。ソクラテスは、直接の批判の対象というよりは、ソフィストの代表として扱われている。政治家の中ではデマゴーグクレオンを特に標的とし、思いの丈の限りを尽くして痛烈に諷刺したため、『バビュロニア人』を競演した際(紀元前426年)には、クレオンによって言い掛かりとしか思えない罪状(国家転覆罪)で以て告訴されている。

その他

プラトンの『饗宴』において、宴[注釈 1]に集う人々の中の一人として登場している。この中でアリストパネスが戯画化されたと思しき下りがあり、それはプラトンが師であるソクラテスを揶揄われた事に対する仇討ちとしてアリストパネスを揶揄ったとも取れるが、プラトン自身はアリストパネスを評価しており、これは話の流れを考えての事と解されている[2]。また、愛の神エロースを讚美する即席演説において、男女両性者(アンドロギュノス)について言及している。これは異性愛同性愛、そして同性少年愛が何故人々の中に存しているかに関して、その由来となる譚を語る中で触れているものである[3]。更にはアリストデーモスの言によればとして、アリストパネスとアガトーンがソクラテスと大杯を回し飲みしつつ語り合っている時に[注釈 2]、ソクラテスが「同一人が、喜劇悲劇二つの創作技術を修得しうること。および、しかるべき技術によって悲劇作者は喜劇作者でもありうること[5]」を、二人に同意させようとして、二人が答えに窮して寝たふりをしてやり過ごそうとして両人共に本当に寝入ってしまったとしている[6]

オクシリンコス・パピルスの断片に「賽は投げられた」との台詞があった[注釈 3]

現存する作品

日本語訳

注釈

  1. ^ アガトーンの初優勝を祝う為に本人の邸宅にて催された宴という設定である。時に紀元前416年[1]
  2. ^ この時点で夜が明けて翌朝になっていて、アリストデーモス自身は寝起きな上に、まだうとうとしていた事と、話の最初から立ち会っていなかった事から、話の大部分を憶えておらず、要点だけを掻い摘んで伝えたとしている[4]
  3. ^ 「サイコロが投げ上げられている。危険を冒す行動に出てしまったということ。」[7]のことか。ただし、これは存疑のあるフラグメントであるので、必ずしもアリストパネスの詩曲の一部だとは言い切れない。
  4. ^ アリストパネスと同時期に活躍した喜劇詩人エウポリスはその著『バプタイ』の中において、『騎士』はアリストパネスと自分との共作だと陳べている。それに対しアリストパネスは『雲』の中でエウポリスを剽窃者として嘲っている[8]
  5. ^ 原典において役名は、デモステネスやニキアス同様、単に“下男”であり、区別をつけるためにそれぞれ甲・乙・丙と割り振られているだけであるが、便宜上解りやすくする為に下男・甲をデモステネス、下男・乙をニキアス、下男・丙をパプラゴニア人と表記したとしている[10][11]、またギリシア語で「パプラゴニア人」とは馬鹿で頓馬な人間の代名詞である[12]
  6. ^ ロジャーズの英語訳に則して“パプラゴーン(PAPHLAGON)”とここでは表した[9]。他に松平千秋訳ではパプラゴニア人[注釈 5]山田恒人訳ではパファルゴニア人[13]となっている。
  7. ^ クレオンに擬した登場人物であるパプラゴーン[注釈 6]役の俳優が報復を恐れ演じるのを拒否した為、アリストパネス自身がその役を演じたとされている[14][15]
  8. ^ 競演時の詩曲は断片のみ現存している[16]。第三位(つまり最下位だった)と評価が低かたことから、アリストパネスは再び『雲』を上演して見物を非難しなければならないと考えた。しかし書き改めに取り掛かったものの、さらに酷い「失敗」に出会ったので、改訂した劇を世に問うことを中止してしまった[17][18]。それは紀元前418年乃至紀元前417年に近いものと思われる。ただ、この書き改めは折に触れ行われたらしく、結果前後矛盾などが生じる事となった[19]。現存しているのはこの書き改められた第2稿である。
  9. ^ スーダ辞典及びヒュポテシスなどに現存しているテクストには無い『平和』からの引用や解説が見られ、それは上演されたとされている。また、ラヴェンナ本及びヴェネチア本と呼ばれる重要な写本についている解説においても第二の『平和』の存在が言及されてはいる。そして現に第二の『平和』とされるフラグメントも現存している。しかし、それらの引用者はいずれも第二の『平和』には言及せず、単に『平和』からの引用としている上に、これらの引用は誤記や他の詩曲の題名の脱落などによる誤写に起因するものとも考えられる。フラグメントが現存しているが故に第二の『平和』の存在は否定し得ないが、さりとてこの詩曲はB.C.421年に上演してこそ意味のある物であり、再上演が実際に行われたのかについては疑念を持たざるを得ない。その為現存しているテクストを第1稿と看做す事には疑義や躊躇いはあるものの、他方再上演の如何に関わらず第二の『平和』が第一の『平和』を大幅に改作した物であると看てこれに鑑み、フラグメントとして現存している作品を第2稿とすることもまた可能と言える。[20][21][22]
  10. ^ 2人のアテネ人が地上に愛想をつかして鳥を集め、空中に城を築いて「鳥の王国」(Cloud cuckoo land)をつくる…。
  11. ^ 同じ『テスモポリア祭を営む女たち』と題するフラグメントが現存している。しかしこちらは『テスモポリア祭を祝った女たち』なる別題が示す通り続編に当たる。テスモポリア祭が舞台である事については双方同じだが、『営む女たち』がその二日目、『祝った女たち』その三日目を主題としており[23][24]、それ故第1稿第2稿の区別はできない。
  12. ^ 現存しているのは再上演(紀元前405年乃至紀元前404年)に合わせて書き改められた第2稿である。ただし写本間で一部に齟齬がある[25][26]
  13. ^ 紀元前408年にも『福の神』を競演している。しかし、僅か八片の短い断片が現存しているのみならず、内四片はその真偽が疑われてさえいる。それが為に紀元前388年に競演された『福の神』との関係性が不明であり(再演のために書き直された作品なのか、又は全く異なる作品なのか)、それ故第1稿第2稿の区別はできない[27]

出典

  1. ^ 森、新潮、2006年、p.6 参照
  2. ^ 森、新潮、2006年、p.46~47(185C-E)、199~202 参照
  3. ^ 森、新潮、2006年、p.57~70 参照
  4. ^ 森、新潮、2006年、p.161 参照
  5. ^ 森、新潮、2006年、p.161~162 参照及び引用
  6. ^ 森、新潮、2006年、p.162 参照
  7. ^ 全集4、岩波、2009年、p.420 参照
  8. ^ 高津、1957年、p.44、130訳註 参照
  9. ^ Rogers、Harverd、1924年
  10. ^ 全集1『騎士』、人文、1961年
  11. ^ 劇集『騎士』、新潮、1963年
  12. ^ 高津、1957年、p.131訳註 参照
  13. ^ ホジャート、平凡社、1970年、p.57 参照
  14. ^ 全集1『騎士』、人文、1961年、p.206 参照
  15. ^ ホジャート、平凡社、1970年、p.58 参照
  16. ^ 全集4、岩波、2009年、p.331~333 参照
  17. ^ 全集4、岩波、2009年、p.331 参照
  18. ^ 高津、1957年、p.151 参照
  19. ^ 高津、1957年、p.151~159 参照
  20. ^ 高津、1956年、p.10~11 参照
  21. ^ 全集2、岩波、2008年、p.200~203 参照
  22. ^ 全集4、岩波、2009年、p.311 参照
  23. ^ 呉、1975年、p.141 参照
  24. ^ 全集4、岩波、2009年、p.317~324 参照
  25. ^ 高津、1950年、p.179~180訳註、p.183 参照
  26. ^ 全集3、岩波、2008年、p.380 参照
  27. ^ 全集4、岩波、2009年、p.345、p.441 参照

参考文献

  • 『ギリシア喜劇全集 アリストパネス篇』 第1巻 人文書院 1961年
  • 『ギリシア喜劇全集』 第2巻 岩波書店 2008年
  • 『ギリシア喜劇全集』 第3巻 岩波書店 2009年
  • 『ギリシア喜劇全集』 第4巻 岩波書店 2009年
  • 『ギリシア劇集』 新潮社 1963年
  • 『蛙』 高津春繁 訳、岩波文庫、1950年
  • 『平和』 高津春繁 訳、岩波文庫、1956年
  • 『雲』 高津春繁 訳、岩波文庫、1957年
  • 『女だけの祭』 呉茂一 訳、岩波文庫、1975年
  • 『饗宴』 プラトーン 著、森進一 訳、新潮文庫、1968年、改版2006年
    • 元版『饗宴』 森進一 訳 〈プラトン名著集〉新潮社、1963年
  • マシュー・ホジャート『諷刺の芸術』、山田恒人 訳、平凡社、1970年
  • Benjamin B. Rogers, ARISTOPHANES Ⅰ, "THE ACHARNIANS", "THE CLOUDS","THE KNIGHTS","THE WASPS", Cambridge, Harvard University Press, London, William Heinemann Ltd., 1924(First Printed),1967(Reprinted).

関連項目


アリストファネス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2010/10/22 10:19 UTC 版)

霧 - the route of infection KANARIA.」の記事における「アリストファネス」の解説

世界声を聞くことが出来存在を指す。個々感情持たず世界望み絶対とする。アリストファネスの言葉世界意志そのものとされている。

※この「アリストファネス」の解説は、「霧 - the route of infection KANARIA.」の解説の一部です。
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