アメリカでの車内信号システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/11/08 14:46 UTC 版)
「車内信号」の記事における「アメリカでの車内信号システム」の解説
アメリカ合衆国での車内信号システムは、州際通商委員会(ICC: Interstate Commerce Commission)が1922年に出した、自動列車保安装置のない列車は80マイル毎時以上出してはいけないという規制によって推進された。アッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道やニューヨーク・セントラル鉄道のようないくつかの大鉄道会社は、点制御の電磁誘導式自動列車保安装置を導入することによりこれに対応しようとしたが、ペンシルバニア鉄道では運転の効率性を改善できる可能性を見出して、最初の連続制御車内信号システムを導入した。 ペンシルバニア鉄道の導入に対応して、ICCは他の大鉄道会社に対して、少なくとも1つの地域では連続制御車内信号技術を試験的に導入して、技術の比較と運用の経験を積むように指令を出した。指示を受けた鉄道会社はあまり乗り気ではなく、ほとんどの会社ではその会社内で孤立した路線や交通量の少ない路線に導入することで、車内信号に対応した設備を搭載しなければならない機関車の数を減らせるようにした。 鉄道会社の中には、ペンシルバニア鉄道では拒否された電磁誘導式のループコイルを使ったものを選択したところもあった。セントラル・レールロード・オブ・ニュージャージー(サザンディビジョンに導入)、レディング鉄道(アトランティック・シティ本線(Atlantic City main line)に導入)、ニューヨーク・セントラル鉄道などである。シカゴ・アンド・ノース・ウェスタン鉄道(Chicago Northwestern)とイリノイ・セントラル鉄道(Illinois Central)は、2現示式のシステムをシカゴの郊外路線のいくつかに導入した。この車内信号では進行か制限かの情報を表示した。さらにシカゴ・ノースウェスタンは、エルムハースト(Elmhurst)と西シカゴの間の路線では中間の信号機を撤去して、車内信号だけに頼って運行するということも行った。 ペンシルバニア鉄道のシステムは、大規模に導入された唯一のものであったため、アメリカにおいてデファクトスタンダードとなり、現在用いられている車内信号システムはほぼこの方式である。近年、コミュニケーションベースの技術を利用して、路側設備や関連する従来の信号システムに関するコストを削減し、速度制限を強制し完全な停止を実現し、踏切の障害などにも対応する新しい車内信号方式が出現している。 新型の車内信号システムの最初のものとしては、ニュージャージー・トランジットが交通量の少ないパスカック・バレー線(Pascack Valley Line)に試験目的でGP40PH-2形ディーゼル機関車を使って導入した速度制御システム(SES: Speed Enforcement System)がある。SESでは、トランスポンダを路側の閉塞信号機に取り付けて信号現示の速度を強制するようになっている。SESは、警報を出して運転士がブレーキを掛けるような猶予を与えずにただちにブレーキを自動的に作用させるようになっている。SESは2007年に、ペンシルバニア鉄道式の車内信号システムに更新されてパスカック・バレー線から撤去された。 アムトラックは、ACSES(Advanced Civil Speed Enforcement System)と呼ばれるシステムをアセラ・エクスプレスに導入することを決定した。ACSESは、従来のペンシルバニア鉄道式車内信号のオーバレイとして導入され、SESと同じ方式のトランスポンダを使ってカーブやその他の線形上の速度制限を強制する仕組みになっている。車上の信号装置がパルスコードの信号機の現示速度とACSESの線形による制限速度を処理して、より低い方を適用する。ACSESでは絶対信号機の手前で完全に列車を停止させる機能を有し、さらに停車した機関車からデータ通信無線で送られた信号により、運転指令員がその信号機の現示を操作することができるようになっている。後にこれは車内信号装置のディスプレイ上に「停止現示解放」ボタンを設ける方式に変わった。ACSESはボストン - ワシントンD.C.間の北東回廊に徐々に導入が進められているが、使用されるのはたいていの場合高速列車のみである。
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