アップルストア立てこもり事件とは? わかりやすく解説

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アップルストア立てこもり事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/11 07:01 UTC 版)

アップルストア立てこもり事件
人質を連れている様子
場所 オランダアムステルダム
座標 北緯52度21分49.0秒 東経4度52分57.0秒 / 北緯52.363611度 東経4.882500度 / 52.363611; 4.882500座標: 北緯52度21分49.0秒 東経4度52分57.0秒 / 北緯52.363611度 東経4.882500度 / 52.363611; 4.882500
日付 2022年2月22日 (2022-02-22)
午後5時30分 (UTC+1)
標的 店内の顧客
攻撃手段 人質と共に立てこもり。
警察に数回発砲した。
武器 自動小銃拳銃
死亡者 1人
負傷者 1人以上
犯人 Abdel Rahman Akkad
(アブデル・ラーマン・アカード)
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アップルストア立てこもり事件(アップルストアたてこもりじけん)は、2022年2月22日(現地時間)[注 1]オランダアムステルダムにある「Apple Amsterdam」で発生した人質立てこもり事件[1]オランダの公共放送NOSは、人質事件強盗事件とみられる事件から始まったと報じていた[2]。また、検察官による情報だと、実行犯は五時間にわたってアップルストアに立てこもっていた[3]アムステルダムのホームページではこの事件のことを「Gijzeling in de Apple Store」と表記している[4]Netflixの映画「iHostage」のストーリーになったことでも有名である[5]

概要

2022年2月22日(火曜日)午後5時30分ごろ[1]オランダアムステルダムライツェ広場の前に位置する「Applestore Amsterdam(1階)」で自動小銃拳銃武装した男(アブデル・ラーマン・アカード[6])が数人の人質を取り店内に立てこもっていたが、約5時間後に地元の警察により犯人逮捕され、人質も解放された。実行者本人(27歳)が病院に搬送後に死亡し、数人が負傷したとされる[7][8]

事件発生に伴い、オランダ全土のApple Storeが水曜日に閉店し[3]、事件現場である「Applestore Amsterdam」では2日間の休業の措置が執られた[1]。また、これによりアムステルダム中心部で地元住民や観光客に人気のスポット、特にバーカフェが多数あるライツェ広場周辺の住民は不安に陥った。広場はすぐに封鎖され、カフェ劇場も閉鎖された[9]

事件の始まり

火曜日の午後5時30分頃、アブデル・ラーマン・アカードという名の男が迷彩服を着て武装し(自動小銃拳銃を持っていた)、地元住人や観光客に人気のライツェ広場に位置するアップルストアに侵入し、店内にいた顧客が多数逃げ出した[3][10]。10分後の午後5時40分頃に警察への通報があり、数十人の警察官が駆けつけた[3][9][11]。なお、最も早くに現場に到着した警察は午後5時41分に到着したということである[6]。地元警察のパウ署長オランダ語版によると、特殊警察部隊が現場に到着し、店の周辺を封鎖した際、犯人警官に向けて自動小銃を向けていたという[3]。このとき、犯人アムステルダムテレビ局であるAT5英語版に体に爆発物を巻き付けていると思われる写真を送信しており[11]犯人爆発物らしきものを2つ身につけていたことが確認されている(後に偽物であることが発覚する)[3]人質事件が始まった時に広場にいた人々は警察の命令でカフェに避難するよう求められ、取材のために来たジャーナリストなども距離を置かれていた。警察は、夕方の間に約70人[3]アップルストアから解放されたと発表したが、数十人がまだ残っていた[9]。残っていた数十人のうち大半は事件が発生したとき、店の上層階におり、店員と買い物客で、食堂に避難していたとみられる[12]。うち4人は一階のクローゼットに隠れたが、ブルガリア人の男性が人質としてとられた(上の画像)[3][9]

犯人の要求

ブルガリア人の44歳の男性[6]人質にした後、犯人は2億ユーロ相当(当時の日本円で259億1900万円相当[13])の仮想通貨身代金として要求した上、市外への無料通行も要求した[3]。これに対し、警察側は、身代金を用意するという行動には移さなかった[1][2][7][10][11]。また、人質犯の男は人質とともに爆弾を使って自爆すると脅し(この時点で爆弾偽物であることはわかっていない)、彼は警察に対して次のように叫ぶようにして発言をしている(警察と電話越しで話した内容である)[14]:

    “His death is on your conscience.”   「彼の死はあなたの良心次第だ」     — Abdel Raman Akkad アブデル・ラーマン・アカード

ブルガリア人男性(人質)の解放

事件発生から5時間近くが経過した現地時間午後10時30分、ブリガリア人男性の人質犯人が欲しいと頼んだ[10]。そこで、犯人警察を要求したところ、警察キャタピラカメラなどがついている警察ロボットに店の入口までボトルを届けさせた[6]を取ろうと、店のドアを開けた瞬間、ブルガリア人男性の人質は店の外へと逃げ出し、犯人のアブデル・ラーマン・アカードがその後を追った。次の瞬間、人質犯警察部隊DSI英語版の車に激しく衝突され、ボンネットの上に転がり落ちた(フロントガラスが割れるほどの衝撃だった)[6][10]

犯人に突撃したベアキャット武装車

犯人の死

大型車両ベアキャット武装車英語版」にはねられた犯人道路に横たわった状態で、付近のビル屋上で待機していた警察狙撃兵レーザー光線に照らされた[6]。そこに先ほどと同じ種類の警察ロボットを到着させ、横たわる犯人が身につけている2つの爆発物が作動しているかどうか(本物かどうか)を確認した[1][2][6][9]。作動していないことを確認した警察は、近くの病院犯人搬送された。このとき、犯人であるアブデル・ラーマン・アカードは、重症を負っていたということである[6]。翌日、犯人病院死亡が確認された[9]

人質犯から逃げ切ることに成功した44歳ブルガリア人男性は、ヘルメットをかぶりを持った警官のもとに逃げ切った。その警察官人質に寄り添い、慰めるように腕を回していた[9]。また、クローゼットに隠れていた4人や上階にいたうちの一部は、事件後に解放された[2]

捜査と関係者への対応

犯人警察逮捕された後、発生現場の付近を捜査したり、警察官などに事情聴取をすることで様々なことが明らかになっている。また、捜査終了まで、警察は「関係者と警察安全のため」、人質事件の画像の公開やライブ配信などをを控えるよう呼びかけた[15]

事件当事者の発言

この人質事件を受け、事件に大いに関わった警察官副市長新聞記者、法務大臣などの様々な人々が発言している。事件に落胆する声はあるものの、警察官人質犯から逃げ切ることに成功したオランダ人男性などを称賛する声が多い。事件犯人にあたるアブデル・ラーマン・アカードが重症を負い、死亡に至ったことは人種差別などには当たらず、そのことを批判する声は見られない[3][6][14]

午後5時40分頃に警察への通報があり、その際に駆けつけたパウ署長オランダ語版オランダ人男性の人質警察に対して次のように称賛している[6]:

"The hostage has played a hero role. In a few split seconds he escaped this hostage situation, otherwise it would have been an even longer night and nasty night.A car from the special forces reacted very alertly."
「人質は英雄的のような役割を果たしました。ほんの一瞬で人質犯から脱出しました。もしあの時にあの行動をとっていなければ、さらに長く恐ろしい夜になっていたことでしょう。特殊部隊の車両も迅速に対応してくれました。」 — Frank Paauw パウ署長

ダグブラッド・ファン・ヘット・ノールデン新聞社オランダ語版アムステルダム特派員、マーシャ・デ・ヨング=クラマーは、ライツェ広場で何かが起こっているのに気づき、自転車で駆けつけた。彼女は次のように話している[14]:

“We had no idea yet what was going on, but when a BearCat went past us, we knew it was really bad. That’s a war equipment!”
「何が起こっているのかは全く分かりませんでしたが、ベアキャット(装甲車)が私たちの前を通り過ぎた時、これは本当にひどい状況になっているということに気が付きました。あれは戦争武装車ですからね!」 — Mascha de Jong-Kramer マーシャ・デ・ヨング=クラマー

オランダディラン・イェシルギョズ=ゼゲリウス法務大臣英語版は、警察の迅速な対応を称賛した[3]:

“Their controlled and decisive action deserves nothing but compliments. It prevented worse.”
「彼らの冷静で決断力のある行動は称賛に値することだ。より深刻な事態を防いだのである。」 — Dilan Yeşilgöz-Zegerius ディラン・イェシルギョズ=ゼゲリウス法務大臣

アムステルダム副市長ルートガー・グロート・ヴァシンク氏オランダ語版は、事件の発生に失望している[3]:

“Just when the city was about to reopen and return to normal life, violence is again emerging in the heart of Amsterdam.”
「街が再開し(コロナから)通常の生活に戻ろうとしていたその時、アムステルダムの中心部で再び暴力が発生している。」 — Rutger Groot Wassink ルートガー・グロート・ヴァシンク氏

映画(ドキュメンタリー)化

iHostage
監督 ボビー・ブールマンス
脚本 シモン・デ・ワール
製作 サビーヌ・ブライアン
ディエデリック・ファン・ローイェン
出演者 スフィアン・ムスリー
アドミール・セホヴィッチ
制作会社 Horizon Films
上映時間 102分
製作国 オランダ
言語 オランダ語、英語
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アップルストア立てこもり事件は、映画化されたり、ドキュメンタリー化されたりした[6]

iHostage

ボビー・ブルーマンス監督オランダ語版による映画であり、ジャンル犯罪映画である[18]。当時、彼は現場の近くに住んでいたと彼自身が話している[19]。ボーマンス監督は事件時系列に描き、数時間にわたる葛藤を犯人人質警察、それぞれの多様な視点を通して徹底的に描いている。アメリカの映画配信サービス「Netflix」にて2025年(令和7年)4月18日より配信が開始され、世界92か国でトップ10にランクインするなど大ヒットとなった[19]

なお、映画内には実際のストーリーと少し左右している部分やアップル社スマート製品小ネタとして使うシーンなどがある[注 3]。また、撮影地が非常に実際の現場に似ているが、アップルストア店内の様子はセットによって再現された(しかし、屋外シーンのほとんどは、アムステルダム中心部のライツェ広場で撮影された)[20]

De Gijzeling in de Apple Store

英語版タイトルは、「The Hostage Situation at the Apple Store」である。ルース・ゲリッツェンによるオランダドキュメンタリーであり、オランダテレビで公開された。このドキュメンタリーには、人質事件の実際の映像に加え、犯人自身がボディカメラで撮影した動画も含まれている[14]

外部リンク

映像外部リンク
犯人がBearCatと衝突する瞬間 
露骨なコンテンツが含まれます
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アメリカテレビ局である「The Sun」によって、公開された動画オランダ人男性の人質警察らに見せつけているシーンと犯人特殊部隊大型車両ベアキャット武装車英語版」とぶつかる2つのシーンが公開された(モザイク加工なし)[21]

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ 2022/2/22と事件が発生した日付には2が連続しているが、犯人が意志してこの日付に犯行したという情報はない。
  2. ^ AT5英語版The Sunなどである。
  3. ^ 事件開始後にクローゼットに閉じ込められた4人のうち、1人の女性が心臓痛めアップルウォッチ心電図を計測するシーンがある。

出典

  1. ^ a b c d e Apple Storeで人質立てこもり オランダ・アムステルダムで”. ITmedia NEWS. 2025年5月3日閲覧。
  2. ^ a b c d e f Hostage situation ends at Amsterdam Apple Store – DW – 02/22/2022” (英語). dw.com. 2025年5月6日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l France-Presse, Agence (2022年2月24日). “Amsterdam Apple store gunman dies of injuries” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/world/2022/feb/23/amsterdam-hostage-who-helped-end-siege-praised-for-bravery 2025年5月6日閲覧。 
  4. ^ a b Amsterdam. “Gijzeling in de Apple Store” (オランダ語). Stadsarchief. 2025年5月6日閲覧。
  5. ^ iHostage:実際の人質事件に着想を得た緊迫のカメラショー”. www.sortiraparis.com. 2025年5月6日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i j k l Abdel Rahman Akkad: Gunman who held 70 shoppers to ransom in Amsterdam” (英語). The US Sun (2025年4月15日). 2025年5月7日閲覧。
  7. ^ a b Apple Storeで人質立てこもり オランダ・アムステルダムで”. ITmedia NEWS. 2025年5月6日閲覧。
  8. ^ France-Presse, Agence (2022年2月24日). “Amsterdam Apple store gunman dies of injuries” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/world/2022/feb/23/amsterdam-hostage-who-helped-end-siege-praised-for-bravery 2025年5月6日閲覧。 
  9. ^ a b c d e f g h Amsterdam : fin de la prise d'otage dans un Apple Store, l'homme armé a été maîtrisé” (フランス語). Le Figaro (2022年2月22日). 2025年5月6日閲覧。
  10. ^ a b c d 銃で武装した男がApple Storeに立てこもる事件が発生 - iPhone Mania”. iphone-mania.jp (2022年2月24日). 2025年5月6日閲覧。
  11. ^ a b c “Amsterdam Apple store: Man arrested over hostage standoff dies” (英語). (2022年2月22日). https://www.bbc.com/news/world-europe-60486726 2025年5月6日閲覧。 
  12. ^ Hostage situation at Amsterdam Apple Store ends”. www.aa.com.tr. 2025年5月10日閲覧。
  13. ^ ユーロから日本円への過去の為替レート | 為替レート計算ツール | Wise(ワイズ)”. Wise. 2025年5月6日閲覧。
  14. ^ a b c d Apple Store Amsterdam hostage situation to become Netflix film” (英語). The Northern Times (2024年2月23日). 2025年5月7日閲覧。
  15. ^ Standoff Ends at Amsterdam Apple Store; Hostage Safe” (英語). Voice of America (2022年2月22日). 2025年5月10日閲覧。
  16. ^ a b c d DPG Media Privacy Gate”. myprivacy.dpgmedia.nl. 2025年5月9日閲覧。
  17. ^ a b Amsterdam Apple Store hostage taker wore bodycam all night; Video in new documentary | NL Times” (英語). nltimes.nl (2024年2月13日). 2025年5月9日閲覧。
  18. ^ iHostage : 作品情報・キャスト・あらすじ”. 映画.com. 2025年5月10日閲覧。
  19. ^ a b chorioka (2025年4月26日). “映画『iHostage』(Netflix配信)あらすじと解説/実際に起った人質事件を時系列でリアルに描いたオランダ産スリラー”. デイリー・シネマ. 2025年5月10日閲覧。
  20. ^ Sáenz, Lissete Lanuza (2025年4月22日). “Netflix’s Dutch Thriller iHostage‘s Real-Life Filming Location Isn’t Actually Where You Think It Is” (英語). StyleCaster. 2025年5月10日閲覧。
  21. ^ (2022年2月23日). “Hostage held at gunpoint in Apple Store before cop car takes down suspect” (英語). The US Sun. 2025年5月10日閲覧。



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