アサリの現状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/18 01:09 UTC 版)
日本においては三河湾が一大産地となっており、愛知県は2004年より漁獲量日本一となっている。1960年代は全国で年間約10万トンの漁獲量があったが、1980年代の14万トンを頂点として減少し1994年には5万トン、2009年には2万トン以下まで減少した。減少の原因は「乱獲」や「生息域の埋め立て」などの他に、富栄養化や水質汚染に伴う環境悪化(青潮)、ナルトビエイやツメタガイなどによる食害、輸入稚貝を原因とする「パーキンサス原虫」の感染に伴う繁殖力の低下などの可能性が指摘されている。2017年以降は国内での漁獲高は1万トンを下回っており、国内での需要の大部分は年間3万から4万トン台の輸入により賄われている。 漁獲量、輸入量の年別推移表年漁獲量 (単位: トン)輸入量 (単位: トン)2004 36,589 52,242 2005 34,261 38,956 2006 34,984 40,731 2007 35,822 26,602 2008 39,217 26,247 2009 31,655 30,949 2010 27,185 40,314 2011 28,793 30,831 2012 27,300 34,794 2013 23,049 36,836 2014 19,449 31,039 2015 13,810 40,002 2016 08,967 42,819 2017 07,072 42,482 2018 07,736 34,221 2019 07,976 35,218 データ出所 漁獲高:令和元年漁業・養殖業生産統計 全国統計 年次別統計 魚種別漁獲量 あさり類 輸入量:財務省貿易統計による生きているあさり(統計品目番号0307.91-460(2011年まで)、0307-71.320(2012年以後)) 北海道など限られた水域を除く多くの産地で自然個体群の再生産が急速に悪化し、前述のとおり漁獲量が激減してきている。2001年にはそのことに危機感を抱く水産学者や海洋生物学者らによって、日本ベントス学会全国大会(函館市・北海道大学水産学部)にて「今、アサリが危ない」とのシンポジウムも開かれるに至った。アサリ漁場の回復のため、人工干潟の造成や、客土、覆砂事業、貧酸素水塊対策なども行われている。 また、北朝鮮や韓国並びに中国などからの輸入品が直接販売されたり、剥き身の冷凍品の形でも流通している。なお、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会は、日本が輸入するアサリの65%余りが北朝鮮産であり、経済制裁に効果ありと捉え、不買運動を積極的に行っている。改正された油濁損害賠償保障法(船舶油濁損害賠償保障法)の影響により日本の港に来港する北朝鮮船籍の船が減ったこともあり、統計上は輸入量が激減しているが、後述の畜養による合法的な産地偽造、または中国産と偽る非合法な偽装などが行われているかは不明。既にいくつかの業者が産地偽装の罪で摘発されている。(2005年4月7日時点)2016年10月14日以降は、北朝鮮からの輸入が全面的に禁止になったため合法的な輸入はない。 また、これらの輸入品をかつての大産地の漁協が購入して干潟や浅瀬に畜養し、日本産として再漁獲して販売することが多くなってきている。この制度を悪用して、中国や韓国産のアサリを「熊本産」「有明海産」と産地偽装して全国のスーパーマーケットなどに流通していることが2022年1月にマスコミから報じられ、熊本県や農林水産省が対策に乗り出す事態となった。 詳細は「アサリ産地偽装問題」を参照 1990年代後半からは、アサリの天敵である亜熱帯産のナルトビエイが海水温の上昇で瀬戸内海や有明海でも生息数を増やしており、アサリの産地で有名な大分県、福岡県、山口県、岡山県を中心に深刻な被害をもたらしている。特に壊滅的な被害を受けている大分県中津市では定期的にナルトビエイの駆除を行うなどし、県からの補助金で稚貝の放流を増やすなどして、産地復活に力を入れている。
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