アグフア・ゲバルトとは? わかりやすく解説

アグフア・ゲバルト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/30 04:46 UTC 版)

アグフア・ゲバルト株式会社
Agfa-Gevaert NV
種類 株式会社
市場情報 EuronextAGFB
略称 アグフア
本社所在地 ベルギー
モルツェル英語版
設立 1867年
代表者 クリスチャン・レノード英語版
営業利益 29億4,800万ユーロ (2010年)
純利益 1億0,500万ユーロ (2010年)
従業員数 11,766人 (2010年12月)
関係する人物 パウル・メンデルスゾーン
カール・アレクサンダー・フォン・マルティウス
2人とも創業者
外部リンク agfa.com
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アグフア・ゲバルト株式会社オランダ語: Agfa-Gevaert NV[1]は、印刷機材、医療機器マイクロフィルムポリエステルなどを製造するベルギーおよびドイツの企業である。元来は写真用品を製造する企業であったが、すでに撤退した。本社所在地はモルツェル英語版である。

1981年から1999年まではドイツの総合化学薬品メーカーであるバイエルの子会社であった。

2004年以降の写真事業 ⇒ アグファフォト・ホールディング

アグフア・ゲバルトの成立

アグフア

アグフアは1867年ドイツベルリンで作曲家であるフェリックス・メンデルスゾーンの息子、パウル・メンデルスゾーン・バルトルディとカール・アレクサンダー・フォン・マルティウスの2人が創業した[2]化学薬品メーカーである。名前の由来は「アニリン製造株式会社」(Aktien gesellschaft für Anillinfabrikation)の頭文字を採ったもの。

1892年に発売された希釈式現像液ロジナール英語版が好評で、2007年までの実に115年販売されるロングセラーとなった。ロジナールは現在、2003年に新たに設立されたアドックスがアグファの最新のレシピに基づいてリメイクした『ADOX RODINAL』を製造しているほか、旧東ドイツのORWOが製造していたロジナール『ORWO R09』を、1950年代のレシピに基づいてリメイクした『ADOX APH-09』を製造している。またロジナールの特許が既に切れていることから、『R09』銘でアグファのレシピに基づいて製造している会社があり、ネット上にはロジナールを自家調合する為の方法を公開した動画やサイトが存在する。

1925年リーチェルを合併してフィルム式カメラも製造販売に乗り出した。

1936年に現在ポジフィルムとして一般的な方式となっている多層発色内式反転フィルムとして世界初のアグフアカラー・ノイ英語版を発売、世界初のネガカラーフィルムプロセスを開発し、1939年にはネガカラーフィルムプロセスによるアグファカラーネガフィルムを販売するなどカラーフィルム開発にも大きな足跡を残している。

かつて、同じドイツの同業者であるBASFOEMカセットテープを販売しており、磁気媒体部門は後にOEMを受けていたBASFと合併した。

ゲバルト

ゲバルトは、正式名称ゲヴァルト写真製造オランダ語: Gevaert Photo-Producten N.V.)は、1894年にベルギー・アントウェルペンで「リーヴェン・ゲヴァルト商会」(フランス語: Lieven Gevaert et Cie.)として創業した印画紙メーカーである。「ゲバフィルム」等の映画用フィルムや、少数ながらカメラも製造していた。名前の由来は創業者であるリーベン・ゲバルト(リーフェン・ヘファールト)から。

事業統合

アグフアとゲバルトは1964年に事業統合してアグフア・ゲバルトが誕生し、世界第3位の写真フィルムメーカーとなった。事実上の合併であるが、ベルギーで外国企業との合併が禁止されていたため、ドイツとベルギーでそれぞれ「アグフア・ゲバルト」を設立する形を採った。

オフセットソリューションズ事業の譲渡

アグフア・ゲバルトグループがAURELIUS(アウレリウス)グループにオフセットソリューションズ事業の譲渡に関する株式売買契約を締結し2023年4月6日よりAgfa Offset(アグフア オフセット)からECO3(エコスリー)に社名変更した。[1]

写真事業の衰退

1983年にカメラ事業から撤退した。以後のアグフアブランドのカメラは全てOEM供給を受けている。

デジタルカメラの普及で販売額が減少し、2004年11月アグフア・ゲバルト幹部社員らが設立した別会社アグフアフォト(Agfa Photo)にフィルム部門を売却、撤退した。アグフアフォトはアグフア・ゲバルトから商標を借り受けてアグフアブランドのフィルムの生産を続行していたが、2005年5月27日に破産申請を行った。

その後、独Hans O. Mahn & Co. KG社がアグフアブランドのモノクロフィルム・印画紙事業を引き継いだほか、ドイツのLUPUS IMAGING & MEDIAがアグフアフォトブランドのフィルムやメモリカードを発売している。また日本ではSuperHeadzブランドでロモLC-Aホルガを販売しているパワーショベルがLUPUS IMAGING & MEDIAと業務提携を締結、日本でのアグフアブランドの日本総代理店となり、35mmフィルムの販売や、本国では生産されていない110/120フィルムを独自に再生産することを発表している。名前だけが「アグファフォト」と残るが、中身はモノクロがドイツのマコ、ビスタはイタリアのフェッラーニアのOEMである。発表後120フィルム発売は白紙になった。

さらに「アグフアフォト」ブランドのデジタルカメラを日本のエグゼモードが販売していた。

日本法人

エコスリージャパン株式会社
ECO3 Japan, Ltd.
種類 株式会社
市場情報 非上場
略称 ECO3
本社所在地 日本
105-0004
東京都港区新橋4-21-3 新橋東急ビル10階
設立 1950年12月27日
業種 商業
事業内容 製版・印刷業界向けワークフローシステム、CTPシステム、フィルム・プレートなどの消耗材
産業用UVインクジェットシステムの販売
代表者 岡本勝弘
資本金 4億9,950万円
従業員数 100名 (2020年1月現在)
関係する人物 増谷麟
ウォルター・ストーク
イングバート・シュミッツ
フィリックス・ステューダー
外部リンク [2]
特記事項:略歴
1950年 日独通商株式会社
1958年 日本アグフア株式会社
1965年 日本アグフア・ゲバルト株式会社
2023年 現社名
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日本アグフア・ゲバルト株式会社(にほんアグフア・ゲバルト)は、1950年(昭和25年)12月27日に設立されたアグフア・ゲバルトの日本法人である[1]

略歴・概要

1925年(大正14年)、写真機・写真フィルム等の輸入販売のためにアグフア合名会社が設立されたのが、日本法人の最初である[3]。それ以前は、各社が代理権を更新していた[3]

現在の日本法人の前身は、1950年(昭和25年)設立の日独通商株式会社(にちどくつうしょう)である[3]。初代社長は増谷麟、1956年(昭和31年)まで同職を務めた。1958年(昭和33年)には、アグフアが60%出資し、日独通商が日本アグフア株式会社(にほんアグフア)と改称した[3]。同年に製作・公開された日本映画『彼岸花』では、監督の小津安二郎が自らの初めてのカラー映画に対し、「アグフアカラー」をチョイス、以降、遺作の『秋刀魚の味』(1963年)までの6作を、アグフアカラーで撮影した[4]

前年の合併によるアグフア・ゲバルト成立を受けて、1965年(昭和40年)には、現社名に改称している[3]

1990年(平成2年)、コパル(現在の日本電産コパル)との合弁会社アグフア・コパル株式会社を設立している[3]。1999年(平成11年)、アグフア・ゲバルトが上場し、日本法人は日本のバイエル・グループから離脱した[3]。それを機に、日本法人の代表が、ウォルター・ストーク(1987年 - 1999年8月)からイングバート・シュミッツ(1999年9月 - )に交代した[5][6]

日本でのアグフアの一般への知名度は高くはなかったが、ダイエーなどのスーパーマーケットによるプライベートブランド商品へのOEM供給を盛んに行っていた時期がある。1993年(平成5年)にはゼロだったシェアを、ダイエーのプライベートブランド商品を手がけた翌1994年(平成6年)には、僅か1年で5%にまで伸ばしたという[7][5]。ダイエーへのOEM供給契約が終わると再びシェアが低迷したため、2001年(平成13年)には、定価100円で販売されるべく大創産業(ダイソー)に24枚撮りフィルム製品を供給、前年1.5%に落ちたシェアを3%に伸ばそうと試みた[5]

2004年(平成16年)のアグフア・ゲバルトの消費者イメージング事業の売却以降は、写真に関する事業は行っていない。ダイソーの写真フィルムもコダックに切り替わり、2007年(平成19年)以降流通しているアグファブランドの写真フィルムは、アグファフォトのものであり、同社の製品は扱っていない。当時の代表はフィリックス・ステューダー、2007年3月末で退任し、翌4月1日に松石浩行が社長に就任[8]。2019年1月1日に岡本勝弘が社長に就任した。

社名変更

2023年にオフセットソリューションズ事業をアウレリウスへの事業譲渡したことに伴い、日本アグフア・ゲバルト株式会社からエコスリージャパン株式会社に社名変更した。[3]

歴代社長

  • 増谷麟(1950年 - 1956年、日独通商)
  • ウォルター・ストーク(1987年 - 1999年8月)[6]
  • イングバート・シュミッツ(1999年9月 - )[6]
  • フレディー・デュフェレール( - 2005年12月)[9]
  • フィリックス・ステューダー(2006年1月 - 2007年3月)[8][9]
  • 松石浩行(2007年4月 - 2018年12月 )[8]
  • 岡本勝弘(2019年1月 -)[10]

脚注

  1. ^ a b 日本法人の名称日本アグフア・ゲバルト株式会社に倣った。会社概要、日本アグフア・ゲバルト、2012年1月23日閲覧。
  2. ^ AGFA公式サイト History of AGFA
  3. ^ a b c d e f g 有価証券報告書バイエル・アクツィーエンゲゼルシャフト、2004年6月30日付、2012年1月25日閲覧。
  4. ^ 厚田雄春蓮實重彦『小津安二郎物語』、筑摩書房、1989年6月 ISBN 4480871632 p.260.
  5. ^ a b c アグフア PBフィルムを拡販、経営戦略考、2001年2月16日付、2012年1月25日閲覧 / 日経産業新聞、2001年2月16日付、18面記事。
  6. ^ a b c 日本アグフア・ゲバルト/社長交代、日本印刷技術協会、2012年1月26日閲覧。
  7. ^ 日米小売価格比較に関する富士フイルムの追加反論書(概要)富士フイルム
  8. ^ a b c 日本アグフア・ゲバルト株式会社 社長交代、日本アグフア・ゲバルト、2012年1月26日閲覧。
  9. ^ a b 日本アグフア・ゲバルト/社長交代のお知らせ[リンク切れ]、日本印刷技術協会、2012年1月26日閲覧。
  10. ^ ニュース:アグフア、次期社長に岡本勝弘氏 - 来年1月就任予定”. PJ web news【印刷ジャーナル】. 2020年7月13日閲覧。

関連項目

外部リンク


アグフア・ゲバルト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/16 20:02 UTC 版)

ネガフィルム」の記事における「アグフア・ゲバルト」の解説

アグフア・ゲバルトのフィルム2005年5月に、写真部門から独立したアグフアフォト社が破産申請行ったことで、事実上生産及び販売終了された。以下は最終ラインナップ。なお、2007年には株式会社パワーショベルが、アグフアブランドでフィルム販売しているドイツLupus Imaging & Media社と業務提携し、日本でのアグフアフォトブランドのフィルム販売を行うことを発表している。 Vista 忠実な色再現実現するEYE VISION テクノロジー」を採用新しいシアンカプラー採用により、赤色領域内の微妙な色を正確に再現赤みの強い発色をする。感度ISO100・ISO200・ISO400・ISO800がラインアップされていて安価なフィルムだった。35mmサイズのみがあった。製造終了ULTRA 油絵のようなこってりした発色をする。感度ISO10035mmサイズのみがあった。以前は、ULTRA50 (ISO50) として35mm120ブローニーサイズがあった。製造終了PORTRAIT スキントーンのディテール鮮明に再現し柔らかな色彩描写実現感度ISO160で35mm120ブローニーサイズがあった。製造終了OPTIMA PRESTIGE 被写体色彩そのまま実現するナチュラルなカラー・サチュレーション。感度ISO100ISO40035mm120ブローニーサイズがあった。製造終了。 以下は2013年2月現在、株式会社パワーショベルから日本国内にて発売中AGFAブランドフィルムである。詳しくパワーショベル AGFA製品紹介参照して頂きたい。 リンク http://www.superheadz.com/agfa/ Vista ISO400は高度な色飽和度持ちトイカメラに向くフィルムとなっている。ISO100色濃い発色柔らかなグラデーション風合い楽しめるフィルムとなっている。販売35mmサイズのみでISO400/100ともに36撮りのみでメーカー希望小売価格ISO400630円、ISO100525円。 AGFA PHOTO 110フィルム ISO200でAGFA特有のマゼンタ色が強い発色をする。こちらもトイカメラ向きとなっている。24撮りのみで希望小売価格630円。

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