《何卒》の正しい読み方
「何卒」の正しい読み方
「何卒」の正しい読み方は、「なにとぞ」である。「卒」は普通「とぞ」とは読まない。「何卒」は例外的な読み方をする語であり、当て字の類である。「何卒」は、もともと指示代名詞「何」+格助詞「と」+強調を表す係助詞「ぞ」からなる表現である。そのため「何とぞ」の方が本来的な表記とも言い得る。「何卒」が一般的な表記として定着しているが、「何とぞ」と表記しても誤りではないし違和感を持たれることもない。
「何卒」の意味解説
「何卒」は、相手に対して強く願う気持ちを表す言葉である。相手の行為に期待するニュアンスが含まれていて、協力や理解をお願いする、依頼をする、提案について検討してもらうなどの場面で用いられる。懇願する思いを伝えるための丁寧な表現として、手紙やビジネスメールなどの書き言葉として使われることが多く、日常の会話で用いることはほとんどない。また、古語における「何卒」は、手段を尽くそうとする意志を表す言葉として使われている。「なんとかして」「どうにかして」という意味合いで、物事を行うための方法を出し切ろうと考えていることを表現している。現在は「自分が手段を出し切る」という意味で、「何卒」を用いることはない。
なぜ「何卒」と読むのか・理由
「何卒」を「なにとぞ」と読むのは、当て字の一つである「熟字訓(じゅくじくん)」という特殊な読み方に該当するからである。「熟字訓」とは、2字以上の漢字の組み合わせ全体に、日本語の訓読みを当てて読むことである。そのため、「何卒」の「卒」は、単体では「とぞ」と読まれることはない。一般的に知られている読み方のみが「熟字訓」と認められるが、「何卒」が「なにとぞ」と読むことは広く浸透しているため、「熟字訓」による読み方であると言える。また、「なにとぞ」の語源は、「なんとか」であるとされている。「なんとか」に、強調を表す助動詞「ぞ」を付けた「なんとかぞ」として使われるようになったあと、時代の経過と共に訛って「なにとぞ」になったと言われている。
「何卒」の類語・用例・例文
「何卒」の類語には、相手に強く願う気持ちを表す「どうぞ」「どうか」「くれぐれも」などがある。また、「是非とも」「是非」「是非に」「切に」なども、意味の似ている類語としてあげられる。何卒ご査収のほどをよろしくお願いいたします
何卒ご協力賜りますようお願いいたします
季節の変わり目でございますので、何卒ご自愛くださいませ
滞在中は何かとお世話になりますが、何卒よろしくお願い申し上げます
何卒お繰り合わせの上、ご出席のほどをお願い申し上げます
明日まで休業とさせていただきますので、何卒ご了承ください
何卒ご笑覧いただければ幸いでございます
大変ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承いただけますようお願い申し上げます
来週の会合には、何卒ご出席くださいませ
本企画案につきまして、何卒ご検討いただけますようお願いいたします
弊社の置かれております状況に、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます
大変深く反省しておりますので、何卒ご容赦くださいますようお願いいたします
「何卒」の英語用例・例文
「何卒」は、英語で「please」「by all means」「kindly」などと表すことができる。そのほかにも、「hope〜」「ask for〜」などを用いることで、「何卒」と同じニュアンスを持つ英語表現となる。Please investigate urgently.
(何卒、早急な調査をしていただけますようお願いいたします)
Please excuse my rudeness
(非礼を何卒お許しくださいませ)
We ask that you kindly give us a definite answer.
(何卒、明確なご回答をいただけますようお願い申し上げます)
By all means, let's talk.
(何卒、話してくださいますようお願いいたします)
I hope to continue to receive your kind cooperation.
(今後とも何卒よろしくお願いいたします)
We ask for your kind understanding and cooperation.
(ご了承のほど、何卒よろしくお願い申し上げます)
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