ICカード ICカードの概要

ICカード

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/16 04:57 UTC 版)

「接触型ICカードリーダ/ライタ」と「マイナンバーカード(個人番号カード)
「非接触型 ICカード リーダ/ライタ」と「マイナンバーカード」

カード内にRAMROMEEPROMといった半導体メモリを組み込むことにより、情報量が従来の磁気ストライプカードと比べて数十倍から数千倍になる。さらに、CPUコプロセッサなどを内蔵することで、カード内部で情報処理が可能になるという特徴がある。これを応用して、Intelが専用のドックに専用のICカードを挿入し、パーソナルコンピュータとして利用できるインテル Compute Cardを開発した。情報処理や記憶は全てカード上で行う。

歴史

ICカードの普及以前は、1960年IBMによって発明された磁気ストライプカードが使われていた。

ICカードは、ドイツでは1968年ヘルムート・グレトルップ(Helmut Gröttrup)とユルゲン・デトロフ(Jürgen Dethloff)が共同で、日本では1970年有村國孝が、フランスでは1974年にローラン・モレノ (Roland Moreno) が、それぞれ発明している。グレトルップは1968年に特許を申請したが、認められたのは1982年になった。

ICカードをその機能により分類すると、次の4つに分けられる。

  • メモリーカード(メモリのみ、ヒューズメモリなど) : 使い捨てプリペイドカードなどに利用
  • ロジック付きカード(アクセス制御機能などを備えたもの)
  • CPU搭載カード
  • その他(専用コプロセッサなど)

CPUを搭載して単体で演算能力を持つICカードは1970年代後半に登場した。製品としてはブルモトローラが共同で、1973年から1979年に掛けてメモリカードやマイコンカード(EEPROM内蔵CPU、CPU搭載EEPROM、1チップ化したもの)を開発した。これがICカードの始まりとなった。ブルのICカード部門会社のブルCP8は日本国内において大日本印刷と合弁でSPOM JAPANを設立した。マイコンカードの基本技術はCP8技術、或いはSPOM (Self Programmable One-chip Microcomputer) 特許として知られ、世界中のカードメーカーにライセンスされた。その後、現在のSTMicroelectronics NV1982年にセキュア・メモリICを開発した。

日本では1981年大日本印刷が研究を開始し、1983年大日本印刷凸版印刷がICチップインカードを、東芝1984年にICカードを、日立製作所(現在のルネサス エレクトロニクス)が1985年にICカードマイコン (HD65901) をそれぞれ開発した。ソニー1988年から非接触ICカードの研究開発に着手していた。

初期のCPUは4bit - 8bitCPUであったが、その後16bit - 32bitCPUが搭載された。8051、8052、6805、Z80H8、AE-4、AVRARMMIPSなどの既存アーキテクチャを使うものだけでなく、独自の非公開アーキテクチャを採用するものもある。

メモリサイズは当初256bit - 8kByteであったが、徐々に大きくなり、2003年頃には32kByte - 512kByte、1MByteになっている。

不揮発性メモリとしては、EEPROMの他にフラッシュメモリFeRAM (FRAM) を搭載したカードがある。当初、EEPROMの書き換えにはIC駆動に用いるVccとは別に専用の電圧を必要としていたが、その後Vccだけで動作できる様に改良された。

RSA用コプロセッサ搭載カードは1990年代前半に登場した。DES/トリプルDESはソフトウェアで実装される場合と、専用回路で実現する場合がある。

当初のICカードはプログラムをROMに格納していたが、1990年代後半にはプログラムを不揮発性メモリにダウンロードできる仕組みを持つプラットフォーム型ICカードと呼ばれるMULTOSカードやJavaカードが開発された。MULTOSカードはMasterCard大日本印刷日立製作所が開発し、プラットフォーム型ICカードの先駆けとなった。MULTOSカードは、MELという専用のアセンブラライクな言語でプログラムを記述する。1999年にはクレジットカードとして大規模に発行開始し、世界初のプラットフォーム型ICカードの実用化となった。Javaカードはカード内にJava VMを内蔵し、Javaで記述されたプログラムを実行する事ができる。Javaの実行環境を含めたJavaカードなどでは、暗号化電子署名の技術を使う事ができるものもある。

カードOS(通信制御・ファイル管理など)にITRONを採用しているカードもある。また、TRONプロジェクトが提唱している電子身分証のeTRONカードもICカードの一種である。

ICカードはプラスチックを使っているが、凸版印刷リサイクル可能なを材料としたものを開発し、2009年4月から販売を開始した。併せて回収と再生までのリサイクルの体制の確立も行う[1][2][3]

形式

ICカードはその目的に合わせて様々な機能を有し、それらは様々な形式で実装される。以下はその一例である。

  • 電源[4]
    • 接触型: 接点端子を介した電流による給電[5]
    • 非接触型: アンテナコイルを介した電磁誘導による給電[6]
  • 通信
    • 接触型: 接点端子を介した電流による通信[5]
    • 非接触型: アンテナコイルを介した電波による通信[6]

電源と通信は同じ形式でおこなう場合が多く、これら2機能に基づいて「接触型ICカード」「非接触型ICカード」の2形式にしばしば分類される[7]


注釈

  1. ^ 現在は 「Oulucard」。
  2. ^ かつてはType-Cとも呼ばれていた。現在はNFC-FおよびNFC-Vに分類されている。
  3. ^ 商標は岡山県バス協会の登録商標である。
  4. ^ a b 学生ルルカ2016年10月31日まではバス専用だったが、同年11月1日から電車・バス共通化された。但し、電車・バス共通学生ルルカへの変更は手続きが必要。
  5. ^ Type-B
  6. ^ これは乗車券だけでなく、特急券としての効力も持っている。
  7. ^ 2016年9月1日より、名古屋市が交付している敬老パスがこれまでの磁気カードからmanacaへ順次切り替わり、11月1日からは、同じく名古屋市が交付している福祉特別乗車券も磁気カードからmanacaへ移行となった。
  8. ^ 1998年以降発売した全機種が対応可能である事を技術エンスロ委員会の懇談会で表明したのはソニー一社のみで、CA-Systemに関するロジックはFPGAなのでファームウェアアップデートで対応可能とした。一方ソニーからのOEMを受けていない他社は一部の機種で、CA-Systemを含む暗号化・復号処理をハードワイヤードのASICで構築してセキュリティを高めた結果、今回の改定は勿論、それ以前に提唱されたダビング10を含め、セキュリティに対する変更を受け入れられない機種が存在する事を明らかにした。耐タンパー性の観点から、パナソニック東芝はエンジニアリングスロットからのファームウエアのリモートセキュリティ変更は不可能で、セキュリティに関する変更は適切に署名されたSDカードの挿入のみ対応とした。全カードの交換は部材費で27億円、人件費やエンジニアリングスロットの使用料、ハードウエアの変更・交換などを含む総費用は200億円を超えると試算されており、また問題のあるB-CASカードや受信機は2038年問題で自動的に解決する事から、計画の中には本問題に対する対処を総被害額を超えてまで対応する必要は無い「放置・無視」する事も選択肢に含めている。莫大な費用をかけて旧式となる現行ハイビジョンを救済するより、4K2Kに移行する際に解決すれば良いとも指摘されている

出典

  1. ^ リサイクル・リユース可能な紙素材のICカード「KAMICARD」を開発”. 凸版印刷 (2009年2月27日). 2009年4月7日閲覧。
  2. ^ 凸版印刷 リサイクル・リユース可能な紙素材のICカードを開発”. 印刷タイムス (2009年2月27日). 2009年4月7日閲覧。
  3. ^ 読売新聞2009年3月26日12版19面
  4. ^ "半導体チップを動かす電力を供給する手段によって、「接触型」と 「非接触型」に分類されます。" DENSO. ICカードとは(技術編). 2022-09-16閲覧.
  5. ^ a b "接点端子 接触型において、リーダライタとのデータ交換" DENSO. ICカードとは(技術編). 2022-09-16閲覧.
  6. ^ a b "アンテナコイル 非接触型において、リーダライタとのデータ交換" DENSO. ICカードとは(技術編). 2022-09-16閲覧.
  7. ^ "ハードウェアという切り口では、ICカードは「接触型」と「非接触型」に分類される。" 長谷川. (2005). 知っておきたいICカードのタイプと使われ方. @IT.
  8. ^ ICカード75の質問-1 - NTTカードソリューションインターネットアーカイブのキャッシュ)
  9. ^ 「IC キャッシュカードの店頭即時発行」の取り扱いを開始! (PDF)
  10. ^ 生体認証「ICキャッシュカード」取扱開始:京都信用金庫
  11. ^ ゆうちょ銀行 電子マネー搭載キャッシュカード 内より
  12. ^ ICキャッシュカードの取扱開始について (PDF, 長崎銀行ニュースリリース:2010年1月15日発表)
  13. ^ インターネットバンキングリニューアル | auじぶん銀行
  14. ^ “20年までに全量IC化、政府、クレジットカードで目標”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2014年7月9日). https://messe.nikkei.co.jp/nf/news/128245.html 
  15. ^ 商務流通保安グループ 商取引監督課『クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画を取りまとめました~国際水準のクレジットカード決済環境の整備を進めます~』(プレスリリース)経済産業省、2016年2月22日http://www.meti.go.jp/press/2015/02/20160223005/20160223005.html2016年10月25日閲覧 
  16. ^ 加藤園子 (2016年2月22日). “カード不正利用2年連続100億円超えか 転売目的?中国人組織が関与”. 産経新聞 (産経新聞社). https://web.archive.org/web/20160224083508/http://www.sankei.com/affairs/news/160223/afr1602230024-n1.html 2016年10月25日閲覧。 
  17. ^ 原隆 (2015年5月11日). “Visaの10年越しの変心、スマホ決済事業者に広がる憤怒と安堵”. ITPro (日経BP). https://xtech.nikkei.com/it/atcl/column/14/346926/050800244/ 2016年9月14日閲覧。 
  18. ^ ソース
  19. ^ NicePass 遠州鉄道(ウェイバック
  20. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 全国相互利用サービス対応ICカード乗車券
  21. ^ Koskilinjat OY
  22. ^ ITpro (2008年3月26日). “Suicaを地域ポイントカードとして活用、都内の駅前商店街で導入広がる”. 2008年7月20日閲覧。
  23. ^ 東日本電信電話株式会社. “ICカード公衆電話の見直しについて 〜ICカード公衆電話の磁気カード公衆電話への一本化〜”. 2008年3月7日閲覧。
  24. ^ 24th Chaos Communication Congress. “Mifare --- Little Security, Despite Obscurity”. 2008年3月7日閲覧。
  25. ^ 鳥取ループ. “B-CAS 事故 '8674422' 2012年テレビ視聴制限崩壊の真実 [単行本]”. 2014年2月24日閲覧。


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