中華料理 特徴

中華料理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/24 08:06 UTC 版)

特徴

食材と調味料の多様性

中国の国土面積はロシアを除くヨーロッパ全体に匹敵するほど広く、各地方の気候や産物、習慣の違いによりそれぞれの食文化が形成された。また、歴代王朝漢民族同化・支配された諸民族、もしくは漢民族を支配した異民族は料理の豊富さをさらに進めた。野菜は食用となる植物ほぼ全てが使われ、食肉山羊のほか鳥類(家鴨)など多様である。魚介類は、海に面する広東省福建省山東省などを除いて、淡水魚をメインとする地域が多い。

熱いうちに食べる習慣

現在の中華料理の「火を通した熱い食事を取る」原型は南宋時代(1127 - 1297年)で一気に完成したとされる。宋王朝以降の中国では、強い火力を用いることがますます重視され、中華鍋を使い、日本料理西洋料理に比べて、食用油ラードごま油など)を多用する炒め物が多いという傾向がある。逆に生野菜の使用や冷たい料理は少なく、伝統的な料理では涼麺や粉皮、杏仁豆腐程度である。中国文化においては飲料水においても冷たい水は好まれず[3]白湯、常温で提供される[注釈 1]

精進料理

宗教的な理由による食のタブーを持つ人々もおり、仏教徒(チベット仏教は除く)、道教信者の一部向けの精進料理素菜と呼ばれる(台湾素食など)。イスラム教徒向けには、豚肉及びその加工製品、ラードを用いない清真菜清真料理)がある。調理器具、技法、忌避されない素材・調味料には類似性がある。

世界各国の料理との融合

中国文明は周辺地域にも伝播し、日本料理朝鮮料理ベトナム料理などは中華料理の影響を強く受けている。また世界各地に渡った華僑華人が移民先の国に持ち込んだため、東南アジア南北アメリカ、ヨーロッパなどに広く普及し、また現地化も進んでいる(日本式中華料理アメリカ風中華料理など)。

日本も含む世界各地の中華料理関係団体を集めた「世界中国烹飪連合会」は、1992年から中華料理の世界大会も行われている[4][5]。この大会の中には、持ち込んだ国の料理と融合したり、中国大陸に存在しない食材を利用したり、現地人の料理人が考案したりした、中国本土にも見られない進化を遂げた「中華風」とも言うべき中華料理もある。

中華料理は外国に大きな影響を与える一方、中華料理の手法も日本料理を含む国外の料理に大きな影響を受け、独自の発展を遂げる例も珍しくない。大皿に盛られた料理を取り分けるスタイルから、フランス料理のように一人前ずつ盛った料理をコース順に出し、素材や料理法も現代的に洗練されたヌーベルシノワなどはその一例である。


注釈

  1. ^ 台湾でも似た傾向がある。中国国外の中華料理店はこの限りではない。
  2. ^ 例として、唐代の『食医心鑑』、宋代の『中饋録』『山家清供』、元代の『飲膳正要』『居家必要事類全書』(日用類書)、清代の『随園食単』がある。[9]。一部は和訳もある[10]
  3. ^ 2018年の世論調査では、「中華料理」と言う(「中国料理」とは言わない)が82%、どちらかといえば 「中華料理」と言うことのほうが多いが11%、と「中華料理」派が圧倒的である[18]

出典

  1. ^ a b 読売新聞大阪編集局 編『雑学新聞』〈PHP文庫〉2000年、60頁。 
  2. ^ a b 第1428回放送用語委員会(東京)2018年10月19日 用語の決定 および報告 〜「水族館」「洗濯機」「進学校」「デミグラスソース・ドミグラスソース」ほか〜」『放送研究と調査』第69巻第1号、NHK放送文化研究所、2019年1月。 
  3. ^ 日中の生活習慣の違い「冷たい水を好む日本人と、お湯を好む中国人」=中国メディア (2019年3月5日)”. エキサイトニュース. 2020年6月1日閲覧。
  4. ^ 第5回中国料理世界コンクール、中国広州で開催”. 日本中国料理協会. 2017年10月31日閲覧。
  5. ^ 世界中国烹饪联合会”. 百度. 2017年11月6日閲覧。
  6. ^ 石毛直道『世界の食べもの 食の文化地理』(講談社学術文庫、2013年。ISBN 978-4062921718)65頁
  7. ^ 宮崎市定 著「宋代における石炭と鉄」、礪波護 編『中国文明論集』岩波書店〈岩波文庫〉、1995年。ISBN 9784003313312 
  8. ^ 岩間一弘『中国料理の世界史 美食のナショナリズムをこえて』慶應義塾大学出版会、2021年。ISBN 9784766427646 37-39頁。
  9. ^ 坂出祥伸「日用類書について」『初学者のための中国古典文献入門』筑摩書房ちくま学芸文庫、2018年(原著2008年)。ISBN 978-4480098696
  10. ^ 中村喬 訳『中国の食譜』平凡社東洋文庫、1995年。ISBN 978-4582805949
  11. ^ Traditional Chinese diets: A template for healthy eating habits” (英語). Harvard Health (2023年7月1日). 2023年6月21日閲覧。
  12. ^ 「“インチキNY中華街”同メニューでも1ドル高」産経iza(2007年3月14日付配信)
  13. ^ 大河内正敏『味覺』(1947年、東京・有情社)p.118
  14. ^ 本場の味求め「ガチ中華」『産経新聞』朝刊2022年11月14日(生活面)
  15. ^ 「しゆうまいと支那そばの作り方」(昭和11年 第2巻第12号 p22山田政平)|http://eiyotoryori.jp/
  16. ^ 小項目事典,デジタル大辞泉,世界大百科事典内言及, 日本大百科全書(ニッポニカ),精選版 日本国語大辞典,日本の郷土料理がわかる辞典,ブリタニカ国際大百科事典. “卓袱料理とは”. コトバンク. 2022年12月21日閲覧。
  17. ^ 第2版,世界大百科事典内言及, 日本大百科全書(ニッポニカ),和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典,ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,百科事典マイペディア,精選版 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,世界大百科事典. “普茶料理とは”. コトバンク. 2022年12月21日閲覧。
  18. ^ 塩田雄大「“すべき”の問題をどうするべきか〜2018年「日本語のゆれに関する調査」から〜」『放送研究と調査』第68巻第12号、NHK放送文化研究所、2018年。 
  19. ^ 帝国書院編集部(守屋美佐雄)『新編・中学校社会科地図(初訂版)・文部科学省検定済み教科書46(帝国)地図-704中学校社会科用』帝国書院編集部編、2008/1/25、21頁下段より。
  20. ^ https://www.cookdoor.jp/useful/glossary/chinese-food/2248101/
  21. ^ https://www.cookdoor.jp/useful/glossary/chinese-food/2253001/
  22. ^ https://www.cookdoor.jp/chinese-food/dictionary/21225_china_025/
  23. ^ https://www.cookdoor.jp/useful/glossary/chinese-food/2254301/
  24. ^ https://www.cookdoor.jp/useful/glossary/chinese-food/2234501/
  25. ^ 中華料理・中国料理店用語集 明油(みんよう)クックドア飲食店用語集(2022年11月28日閲覧)
  26. ^ 中華料理・中国料理店用語集 蒸(ちょん)クックドア飲食店用語集(2022年11月28日閲覧)
  27. ^ 中華料理・中国料理店用語集 紅焼(ほんしゃお)クックドア飲食店用語集(2022年11月28日閲覧)
  28. ^ 中華料理・中国料理店用語集 泥(にぃ) クックドア飲食店用語集(2022年11月28日閲覧)
  29. ^ 中華料理・中国料理店用語集 排(ぱい)クックドア飲食店用語集(2022年11月28日閲覧)
  30. ^ 国土交通省 総合政策局 観光事業課日本交通公社多様な食文化・食習慣を有する外国人客への対応マニュアル (PDF)』(レポート)、国土交通省、2008年2月、108頁。2016年8月25日閲覧
  31. ^ ※記事名不明※『中日新聞』朝刊日曜版2020年4月12日1面


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