中華料理
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特徴
食材と調味料の多様性
中国の国土面積はロシアを除くヨーロッパ全体に匹敵するほど広く、各地方の気候や産物、習慣の違いによりそれぞれの食文化が形成された。また、歴代王朝で漢民族に同化・支配された諸民族、もしくは漢民族を支配した異民族は料理の豊富さをさらに進めた。野菜は食用となる植物ほぼ全てが使われ、食肉も豚、牛、羊、山羊のほか鳥類(鶏、家鴨・鴨、鵝)など多様である。魚介類は、海に面する広東省、福建省、山東省などを除いて、淡水魚をメインとする地域が多い。
熱いうちに食べる習慣
現在の中華料理の「火を通した熱い食事を取る」原型は南宋時代(1127 - 1297年)で一気に完成したとされる。宋王朝以降の中国では、強い火力を用いることがますます重視され、中華鍋を使い、日本料理や西洋料理に比べて、食用油(ラードやごま油など)を多用する炒め物が多いという傾向がある。逆に生野菜の使用や冷たい料理は少なく、伝統的な料理では涼麺や粉皮、杏仁豆腐程度である。中国文化においては飲料水においても冷たい水は好まれず[3]、茶や白湯、常温で提供される[注釈 1]。
精進料理
宗教的な理由による食のタブーを持つ人々もおり、仏教徒(チベット仏教は除く)、道教信者の一部向けの精進料理は素菜と呼ばれる(台湾素食など)。イスラム教徒向けには、豚肉及びその加工製品、ラードを用いない清真菜(清真料理)がある。調理器具、技法、忌避されない素材・調味料には類似性がある。
世界各国の料理との融合
中国文明は周辺地域にも伝播し、日本料理、朝鮮料理、ベトナム料理などは中華料理の影響を強く受けている。また世界各地に渡った華僑・華人が移民先の国に持ち込んだため、東南アジアや南北アメリカ、ヨーロッパなどに広く普及し、また現地化も進んでいる(日本式中華料理、アメリカ風中華料理など)。
日本も含む世界各地の中華料理関係団体を集めた「世界中国烹飪連合会」は、1992年から中華料理の世界大会も行われている[4][5]。この大会の中には、持ち込んだ国の料理と融合したり、中国大陸に存在しない食材を利用したり、現地人の料理人が考案したりした、中国本土にも見られない進化を遂げた「中華風」とも言うべき中華料理もある。
中華料理は外国に大きな影響を与える一方、中華料理の手法も日本料理を含む国外の料理に大きな影響を受け、独自の発展を遂げる例も珍しくない。大皿に盛られた料理を取り分けるスタイルから、フランス料理のように一人前ずつ盛った料理をコース順に出し、素材や料理法も現代的に洗練されたヌーベルシノワなどはその一例である。
注釈
出典
- ^ a b 読売新聞大阪編集局 編『雑学新聞』〈PHP文庫〉2000年、60頁。
- ^ a b 「第1428回放送用語委員会(東京)2018年10月19日 用語の決定 および報告 〜「水族館」「洗濯機」「進学校」「デミグラスソース・ドミグラスソース」ほか〜」『放送研究と調査』第69巻第1号、NHK放送文化研究所、2019年1月。
- ^ “日中の生活習慣の違い「冷たい水を好む日本人と、お湯を好む中国人」=中国メディア (2019年3月5日)”. エキサイトニュース. 2020年6月1日閲覧。
- ^ “第5回中国料理世界コンクール、中国広州で開催”. 日本中国料理協会. 2017年10月31日閲覧。
- ^ “世界中国烹饪联合会”. 百度. 2017年11月6日閲覧。
- ^ 石毛直道『世界の食べもの 食の文化地理』(講談社学術文庫、2013年。ISBN 978-4062921718)65頁
- ^ 宮崎市定 著「宋代における石炭と鉄」、礪波護 編『中国文明論集』岩波書店〈岩波文庫〉、1995年。ISBN 9784003313312。
- ^ 岩間一弘『中国料理の世界史 美食のナショナリズムをこえて』慶應義塾大学出版会、2021年。ISBN 9784766427646。37-39頁。
- ^ 坂出祥伸「日用類書について」『初学者のための中国古典文献入門』筑摩書房ちくま学芸文庫、2018年(原著2008年)。ISBN 978-4480098696。
- ^ 中村喬 訳『中国の食譜』平凡社東洋文庫、1995年。ISBN 978-4582805949
- ^ “Traditional Chinese diets: A template for healthy eating habits” (英語). Harvard Health (2023年7月1日). 2023年6月21日閲覧。
- ^ 「“インチキNY中華街”同メニューでも1ドル高」産経iza(2007年3月14日付配信)
- ^ 大河内正敏『味覺』(1947年、東京・有情社)p.118
- ^ 本場の味求め「ガチ中華」『産経新聞』朝刊2022年11月14日(生活面)
- ^ 「しゆうまいと支那そばの作り方」(昭和11年 第2巻第12号 p22山田政平)|http://eiyotoryori.jp/
- ^ 小項目事典,デジタル大辞泉,世界大百科事典内言及, 日本大百科全書(ニッポニカ),精選版 日本国語大辞典,日本の郷土料理がわかる辞典,ブリタニカ国際大百科事典. “卓袱料理とは”. コトバンク. 2022年12月21日閲覧。
- ^ 第2版,世界大百科事典内言及, 日本大百科全書(ニッポニカ),和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典,ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,百科事典マイペディア,精選版 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,世界大百科事典. “普茶料理とは”. コトバンク. 2022年12月21日閲覧。
- ^ 塩田雄大「“すべき”の問題をどうするべきか〜2018年「日本語のゆれに関する調査」から〜」『放送研究と調査』第68巻第12号、NHK放送文化研究所、2018年。
- ^ 帝国書院編集部(守屋美佐雄)『新編・中学校社会科地図(初訂版)・文部科学省検定済み教科書46(帝国)地図-704中学校社会科用』帝国書院編集部編、2008/1/25、21頁下段より。
- ^ https://www.cookdoor.jp/useful/glossary/chinese-food/2248101/
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- ^ 中華料理・中国料理店用語集 明油(みんよう)クックドア飲食店用語集(2022年11月28日閲覧)
- ^ 中華料理・中国料理店用語集 蒸(ちょん)クックドア飲食店用語集(2022年11月28日閲覧)
- ^ 中華料理・中国料理店用語集 紅焼(ほんしゃお)クックドア飲食店用語集(2022年11月28日閲覧)
- ^ 中華料理・中国料理店用語集 泥(にぃ) クックドア飲食店用語集(2022年11月28日閲覧)
- ^ 中華料理・中国料理店用語集 排(ぱい)クックドア飲食店用語集(2022年11月28日閲覧)
- ^ 国土交通省 総合政策局 観光事業課、日本交通公社『多様な食文化・食習慣を有する外国人客への対応マニュアル (PDF)』(レポート)、国土交通省、2008年2月、108頁。2016年8月25日閲覧。
- ^ ※記事名不明※『中日新聞』朝刊日曜版2020年4月12日1面
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