カホクザンショウ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/09 01:44 UTC 版)
分布
東アジア原産。中国では黒竜江省から広西チワン族自治区まで広く分布する。栽培もされており、四川省、河北省、山西省、陝西省、甘粛省、河南省などが主産地である。
栽培
中国の貿易商が、日本の山口県や大阪府泉佐野市にて青花椒の栽培を試みている[13]。
同属異種
一部の同属異種の果皮をも「土花椒」などと称して、香辛料に使用される例がある。
- Zanthoxylum piperitum - サンショウ(山椒)。日本原産。
- Zanthoxylum armatum DC. (Zanthoxylum alatum Roxb.) - フユザンショウ(冬山椒)。
- Zanthoxylum schinifolium - イヌザンショウ(犬山椒)。中国語で「香椒」。芳香がなく、棘が互生する。イヌザンショウの果実は黄緑から緑色で、「香椒子」「青椒」「青花椒」と呼ばれて精油を持ち、煎じて咳止めの民間薬に用いられる。
- Zanthoxylum bungei Planch - ツルザンショウ。中国語で「野山椒」「蔓椒」。
- Zanthoxylum beecheyanum K. Koch - ヒレザンショウ。沖縄県。
- Zanthoxylum simulans Hance - トウザンショウ(唐山椒)。
- Zanthoxylum argyi Lév.
- Zanthoxylum avicennae (Lam.) DC. - 中国語で「簕欓」「鷹不泊」。華南、ベトナム、フィリピン原産。
- Zanthoxylum ailanthoides - カラスザンショウ(烏山椒)
- Zanthoxylum americanum - アメリカザンショウ(アメリカ山椒)
- Zanthoxylum fraxinoides Hemsl.
- Zanthoxylum nispinum Sieb. et Zucc. - 中国語で「竹葉椒」。
- Zanthoxylum nitidum Bunge - テリハサンショウ(照葉山椒)中国で「両面針」と称して薬用にされる。葉の中心線に沿って棘がある。
- Zanthoxylum micranthum Hemsl. - 中国語で「小花花椒」。
- Zanthoxylum integrifoliolum (Merr.) Merr. - 中国語で「蘭嶼花椒」。
利用
食用
果皮は、爽やかな香りと痺れるような辛味を持ち、花椒の名で呼ばれる香辛料である。四川料理、貴州料理、雲南料理、西北料理などで多用され、煮込み料理を中心に、炒め料理、蒸し料理など幅広い料理に使われる。
特に、日本でも知られる麻婆豆腐や担担麺をはじめとする四川料理は、花椒の痺れるような辛さ(麻味)と唐辛子のピリっとした辛さ(辣味)のハーモニーである麻辣味が基本であり、花椒は欠かせない。日本国内の市場規模は2018年で約1億円で、それまでの4年間で2倍以上に拡大した[3]。果皮の乾燥粉末を料理の仕上げに使うことが多いが、果皮を植物油に漬けて成分を溶出させた花椒油(かしょうゆ)も使われる。粉末(挽きたてが望ましい)は香りに優れ、花椒油は辛味に優れるため、一つの料理で両方の使い方をすることもある。
炒った塩と同量の花椒の粉末を混ぜたものを花椒塩(かしょうえん、ホアジャオイエン)と呼び、中国各地で揚げ物につけて食べるのに用いる。
粉末を桂皮(シナモン)、丁香(クローブ)、小茴(フェンネルもしくはウイキョウ)、大茴(八角もしくはスターアニス)、陳皮(チンピ)などとブレンドしたものは五香粉(ごこうふん、ウーシャンフェン)と呼ばれ、食材の臭い消しなど下処理に多用される。
砂糖、黒酢、豆板醤、練り胡麻、トウガラシ、ニンニク、ショウガ、ネギ、砕いたラッカセイなどと組み合わせた味は複雑で奇怪な味という意味で「怪味」(かいみ、グヮイウェイ 拼音: )と呼ばれるが、これに花椒の風味は欠かせない。タレは怪味だれ、怪味ソースなどとも呼ばれる。
中国などでは豆豉や油脂などと配合した合わせ調味料も多種販売されている。
全粒の花椒を大量に買うと、種子が果皮に挟まったものがまれに混じることがあるが、これは不味なので気付いたなら取り除くべきである。
花椒が無い場合、日本のサンショウで代用できないことはないが風味や辛さが大きく異なる。
果皮には産地により差があるが約1~9%の精油成分を含む。主な精油成分はゲラニオール、リモネン、クミンアルコール、シトロネラールなど。油脂分ではパルミチン酸とパルミトレイン酸を多く含む。主な辛味成分はヒドロキシ-α-サンショオール (Hydroxy-α-sanshool) などのサンショオール誘導体とサンショアミド。
薬用
果皮は「花椒」、「椒紅(しょうこう)」と称して生薬としても用いられる。漢方で「花椒」は健胃、鎮痛、駆虫作用があるとされ、大建中湯、烏梅丸などに使われる。『本草綱目』は性味を「辛、温、有毒」とする。陰虚の患者、妊婦は忌避すべきとされる。授乳を終える時期に花椒を煎じ、砂糖を加えて飲むと、乳の分泌が抑えられ、乳房の張りも収まるとされる。
また、中の黒い種子を「椒目」(しょうもく)と称し、煎じたり、粉砕して「水気腫満」(水腫)、「崩中」(子宮出血)、下り物の治療に用いた。利尿作用、鎮咳作用もある。主な成分はオレイン酸、パルミチン酸などの脂肪酸、リノール酸メチル、リノレン酸メチルなどの脂肪酸エステルで、モノテルペノイド、セスキテルペノイドも含む[14]。
日本薬局方では、サンショウの成熟した果皮で、種子をできるだけ除いたものを生薬・山椒(サンショウ)と規定している。このため花椒を日局サンショウとして用いることはできない。
- ^ a b GABAN®プレミアムスパイス|株式会社ギャバン
- ^ “中国語のピンイン変換ツール (変換:国際音声記号 (Lin), 声調は次のように表示されます:国際音声記号の発音区別符号)”. EasyPronunciation.com. 2023年8月30日閲覧。
- ^ a b 「スパイス 百花繚乱/花椒・ヒハツ…市場は09年比18%増/食の多様化、内食志向が背景」『日本経済新聞』朝刊2019年10月9日(マーケット商品面)2019年10月10日閲覧
- ^ a b 小曽戸洋「『日本薬局方』(15改正)収載漢薬の来源」『生薬学雑誌』第61巻第2号、2007年、p.73、ISSN 00374377。
- ^ 神農本草經 (中国語), 神農本草經, ウィキソースより閲覧。
- ^ 神農本草經 (中国語), 神農本草經#.E6.9C.A8.E9.83.A8.E4.B8.AD.E5.93.81, ウィキソースより閲覧。
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- ^ 滝戸道夫「薬草百話20:サンショウ」『月刊漢方療法』第2巻第8号、1998年、p.p.638-640。
- ^ 李時珍 (中国語), 本草綱目/果之四, ウィキソースより閲覧。
- ^ 李時珍 (中国語), 本草綱目/果之四#.E7.A7.A6.E6.A4.92, ウィキソースより閲覧。
- ^ 李時珍 (中国語), 本草綱目/果之四#.E8.9C.80.E6.A4.92, ウィキソースより閲覧。
- ^ いしもと食品工業「山椒の小部屋vol.17 花椒について」
- ^ “中国商人、日本で花椒栽培に乗り出す 海外市場に活路”. AFP (2019年6月8日). 2019年6月22日閲覧。
- ^ 李迎春ほか「椒目超臨界二氧化碳萃取物的分析」『中薬材』2001年7期、国家食品薬品監督管理局中薬材信息中心站、広州市
- ^ 「后宮則有掖庭椒房,后妃之室」
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