市町村
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/04 00:06 UTC 版)
要件
市となる要件
町村が市となるためには、以下の要件を満たさなければならない(8条第1項)。
- 人口5万人以上。但し、1965年(昭和40年)以降は、市町村の合併の特例に関する法律(平成16年法律第59号の新法では第7条)の規定が適用されれば3万人以上。
- 中心的市街地に全戸数の6割以上がある。
- 商工業その他の都市的な業態に従事する者およびそれと同一世帯に属する者の数が全人口の6割以上。
- 当該都道府県の条例で定める都市的施設その他の都市的要件を備えている。
町となる要件
村が町となるためには、その村の属する都道府県が条例で定める各要件(人口、連坦戸数あるいは連坦率、必要な官公署等、産業別就業人口割合等)を具備する必要がある(8条2項)。人口要件は、5,000人とする県が最も多く、次いで8,000人とする府県が多い。
なお、村の要件については特段の定めはない。町となる条件を満たしていなければ、自動的に村となる。
町となるための人口要件
下限 | 都道府県(※村の有無は、2010年/平成22年現在) | |
---|---|---|
村あり | 村なし | |
1万5,000人 | 栃木県 | |
1万0,000人 | 岩手県・ 群馬県・ 東京・ 新潟県 | 福井県・ 香川県 |
8,000人 | 石川県・ 静岡県 | |
7,000人 | 佐賀県 | |
5,000人 |
北海道・ 宮城県・ 秋田県・ 茨城県・ |
|
4,000人 | 鳥取県 | 広島県・ 長崎県 |
3,000人 | 富山県・ 岡山県 | 兵庫県 |
原則として単独町制の場合であり、合併促進のために特例を設けている都道府県もある。
市・町への移行
町・村が市に、または村が町になるためには、関係市町村の申請に基づいて都道府県知事が都道府県議会の議決を経て決定し、直ちに総務大臣に届け出る(8条3項)。
移行は義務ではない。たとえば茨城県美浦村と東海村は、いずれも町となる要件(茨城県の人口要件は5000人)を満たしているが、町にはなっていない。
廃置分合等による「移行」
町、村を廃し、同時に市または町を新設すれば、町、村から市または町に「移行」したように見える。しかしこの場合、たとえ(「市」「町」「村」部分を除いた)名前が同じでも、旧町・村と新市・町は別個の地方公共団体であり、法人格は連続していない。
実際には廃置分合(合体・編入、いわゆる市町村合併)などによってこのようなケースが生じるが、新設自治体が市や町の要件を満たしていてもそれを選択するのは義務ではない。平成の大合併で初の「村」の新設となった熊本県南阿蘇村は、旧3村の合併によって町となる人口要件(5000人)の倍以上の人口を有しながら、阿蘇山南郷谷の自然環境や農村のイメージを重視して村であることを積極的に選択した。
町・村への「降格」
移行による「降格」
市への移行後にその要件を満たさなくなった市が町や村に、または町への移行後に要件を満たさなくなった町が村になる場合も、前述の市・町への移行と同様の手続きを取る(8条3項)。市が町や村に、または町が村になれば、一部の業務を都道府県の管轄に移管することができる。これにより負担が軽くなるメリットが見込めるが、一方で業務軽減に応じて地方交付税の交付額が減額されたり、職員の名刺や印刷物の表記変更などの事務量が発生するデメリットがある。
地方自治法上、市町村間に「格」の違いや上下関係は存在しない。従って「降格」や「昇格」といった概念もないが、市が町・村よりも格上、町が村よりも格上と感じる意識は住民の間に存在している[6]。こうしたことから、住民や職員のモチベーション、地元への愛着、イメージ等に与える負の影響を避けるため、そもそも町や村への移行が検討されることもまずなく、2019年(令和元年)現在まで行われた例は一つもない。たとえば、ピーク時には人口約4万6000人を数えた北海道歌志内市は、後の過疎化によって町となる人口要件(5000人)をも下回っているが、村にはなっておらず、深刻な財政難に陥り2006年(平成18年)に町への移行が本格的に検討された北海道夕張市でも結局選択されなかった[7]。
廃置分合等による「降格」
市または町を廃し、同時に町または村を新設すれば、市または町から町または村に「降格」したように見える。しかしこの場合、たとえ(「市」「町」「村」部分を除いた)名前が同じでも、旧市・町と新町・村は別個の地方公共団体であり、法人格は連続していない。実際には他の廃置分合や境界変更を伴う場合にこのようなケースがあり、たとえば以下の例が挙げられる。
- 神奈川県渋谷町→渋谷村(現:大和市)
- 町域の一部が他市に編入され、残った町域で町が廃され同時に村が新設された。
- 長野県宮田町→駒ヶ根市→宮田村
- 他の自治体と合併して市となった後、再度分離独立して村が新設された。
「降格」が回避されたケースとしては、加美町がある。平成の大合併の際、宮城県加美郡では中新田町、小野田町、宮崎町、色麻町の4町が合併して加美市を作る構想があった。しかし、途中で色麻町が合併協議を離脱したため、合計人口が3万人を割り込んで市制の条件を満たさなくなり、さらに中心部の建物の密度が県条例で定める町の要件に満たなかったので、合併によって逆に村に「降格」するのではと取り沙汰された。市町村間に「格」の違いや上下関係は存在しないが、たとえば西日本新聞社のニュースでも「降格」「昇格」という用語が用いられたり、「残念」「みっともない話」とする市民の声が取り上げられていた。県条例を改正した結果、最終的に加美町として新設合併することとなった[6]。
注釈
出典
- ^ 東京都例規集第1編第7章 区市町村行政
- ^ 政治山 (2016年7月26日). “区市町村と市区町村、呼び方の違いは都政の習熟度か”. 2023年4月7日閲覧。
- ^ “「市区町村」と「区市町村」 用語の違いが生まれた背景”. NEWSポストセブン (2021年5月2日). 2023年4月7日閲覧。
- ^ 総務省|地方自治制度|広域行政・市町村合併, 総務省 2021年3月18日閲覧。
- ^ 「広域行政・市町村合併」、総務省、2016年11月27日閲覧
- ^ a b “分権の行方【1】困惑/地方改革最前線”. 西日本新聞 (福岡市). (2002年12月13日). オリジナルの2012年9月8日時点におけるアーカイブ。 2013年10月15日閲覧。
- ^ “北海道・空知管内 3市が人口1万人割れ ピーク時の9割減 町への「移行」もメリット乏しく”. 北海道新聞 (札幌市). (2013年10月15日). オリジナルの2013年10月15日時点におけるアーカイブ。 2013年10月15日閲覧。
- ^ 北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律(昭和57年8月31日法律第85号)第11条
- ^ 「用語集>住所とは?」、株式会社パスコ、2021年11月11日閲覧
- ^ 「Q.「須坂市○○町1234番地」と「須坂市大字△△1234番地」須坂市には住所表記が2つあるのはなぜ?」、須坂市、2021年11月11日閲覧
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