前田夕暮 前田夕暮の概要

前田夕暮

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/13 09:21 UTC 版)

長谷川利行画・前田夕暮賞像。1930年(昭和5年)

尾上柴舟に師事。歌集『収穫』(1910年)で自然主義歌人として牧水と並称された。その後北原白秋らと「日光」を創刊。『水源地帯』(1932年)では、自由律短歌に傾くなど、生涯新境地を求めた。

人物

現・神奈川県秦野市にあたる大住郡南矢名村の豪農の家に生まれる。父は県会議員、村長を務めた厳格な人物であった。

若山牧水とともに自然主義文学を代表する歌人であり、「夕暮・牧水時代」といわれる時代を築いた[4]。その後、ゴッホゴーギャンなど印象派画家の影響を受けた外光派風の作風を経て、昭和初期には口語自由律短歌を牽引し、後の口語短歌の基礎を固めた。

主宰歌誌「詩歌」(白日社)は短歌に限らず幅広いジャンルの作品を載せ、三木露風山村暮鳥斎藤茂吉室生犀星萩原朔太郎高村光太郎などが活躍した[5]。朔太郎の『月に吠える』出版にあたっては夕暮が実質的な編集・発行を行うとともに、印刷は「詩歌」の印刷所、装丁は「詩歌」の表紙絵を制作していた恩地孝四郎が行うなど、全面的に協力した。

門下には宮崎信義、矢代東村(都会詩人)、香川進米田雄郎中野嘉一三宅千代松村又一などがいる。

関東木材合名会社を経営する実業家としては、奥秩父小森川水源地帯の山林開発に関わった。埼玉県秩父市には夕暮の名に因んだ「入川渓谷夕暮キャンプ場」がある[6]

年譜

記念碑

  • 前田夕暮誕生の地碑-神奈川県秦野市南矢名2134にひっそりと建てられている[10]。その他にも前田の歌碑・記念碑は「桜土手古墳公園」など、市内に11基建立されている[11]

代表歌

  • 木に花咲き君わが妻とならむ日の四月なかなか遠くもあるかな(『収穫』)
  • 向日葵は金の油を身にあびてゆらりと高し日のちひささよ(『生くる日に』)
印象派絵画の影響を受けて詠まれた、小中学校の教科書に採用されることも多い作品。
  • 自然がずんずん体のなかを通過するーー山、山、山(『水源地帯』)
初めて飛行機に乗った時の感慨を詠んだ歌。口語自由律期を代表する作品。

著書

  • 収穫(易風社、1910年) - のちに短歌新聞社文庫より出版
  • 疲れ(白日社、1910年)
  • 陰影(白日社、1912年
  • 生くる日に(白日社、1914年) - のちに短歌新聞社文庫より出版
  • 歌話と評釈(白日社、1914年)
  • 黒曜集(植竹書院 現代和歌選集叢書、1915年
  • 深林(白日社、1916年
  • 短歌雑話(白日社出版部 短歌講話叢書、1916年)
  • 原生林 自選歌集(改造社1925年
  • 短歌作法(松陽堂、1925年)
  • 緑草心理(アルス、1925年)
  • 烟れる田園 詩文集(アルス、1926年
  • 虹 歌集(紅玉堂書店 新歌集叢書、1928年
  • 雪と野菜 散文集(白日社 詩歌叢書、1929年
  • 朝、青く描く 散文集(白日社 詩歌叢書、1931年
  • 水源地帯 歌集(白日社 詩歌叢書、1932年
  • 顕花植物 第五散文集(人文書院1936年
  • 青樫は歌ふ(白日社 青樫叢書、1940年)
  • 素描 自叙伝体短歌選釈(八雲書林、1940年) - のちに日本図書センターより出版
  • 青天祭(明治美術研究所、1943年
  • 富士を歌ふ(明治美術研究所、1943年)
  • 烈風 歌集(鬼沢書房、1943年)
  • 耕土 歌集(新紀元社1946年
  • 新頌・富士(富岳本社、1946年)
  • 白秋追憶(健文社、1948年) - のちに日本図書センターより出版
  • 草木祭(ジープ社、1951年
  • 夕暮遺歌集(長谷川書房 現代短歌叢書、1951年
  • 前田夕暮全歌集(至文堂1970年) - 斎藤光陽編
  • 前田夕暮全集(角川書店1972年1973年、全5巻)
  • 詩集 若き陸地(東京四季出版2004年) - 前田透との共著

脚注、出典

関連人物

外部リンク




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