ファスト映画 ファスト映画の概要

ファスト映画

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/23 06:42 UTC 版)

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概説

通常、映画配給会社は自社の扱う映画の予告編などをYouTubeなどの一般の動画サイトにアップロードして、宣伝などに広く活用している。一方でこれらの動画共有サービスは映画配給会社以外の個人も幅広く動画を自由にアップロードできるものであり、中には映画の映像や静止画を使用して動画投稿を行う者もいる。

その中でも権利者に無断で映画の映像や静止画を使用し、字幕やナレーションを付けるなどして映画自体を観なくても映画全体のストーリーがわかるように説明した短めの動画を頻繁にアップロードする人がおり、それらの動画がファスト映画と呼ばれている[2] [4]。1本の映画あたり10分程度にまとめられている[2][5]。映画のあらすじや結末をネタバレ含めて解説するものなどもある[4]。著作権などの権利を無視してインターネット上の動画サイトなどに映画の本編全てを流通される海賊版とは異なり、ファスト映画では映画の一部のみの映像や静止画しか使われていない。

新型コロナウイルスの影響による「巣ごもり需要」に伴い、2020年春頃からファスト映画の投稿が目立つようになり[6]、特に若者たちの間では映画などのエンターテインメントをなるべく時間をかけずに効率的に楽しみたいという需要が増えており、ファスト映画も一般的に約2時間ほどある映画を全部鑑賞する時間がとれない人や、効率重視でたくさんの映画の内容を把握したい人の間で支持されていると考えられている[7][8]

映画感想TikTokerとして活動するしんのすけは、ファスト映画について友達から映画の話を聞いて「観る、観ない」の判断をするのに近い。本編の映像や静止画があることで余計に観たような、知ったような気持ちになってしまう、と語った[9]

また、ファスト映画が流行した背景として、YouTubeしか感想を共有するプラットフォームを知らない映画好きが増えていることを指摘し、「コメント欄を観ていると動画の良し悪しじゃなくて、映画自体の感想がたくさん載ってました。僕のTikTokの動画のコメントにも「ファスト映画は感想を読めるからすごくいいです」とか「お互いの感想が言い合えるSNSを作ったらいいと思います」とあって。そもそもTwitterFilmarksといった映画の感想を知る場所すら知らない人は多い」「YouTubeのアルゴリズムを利用して、どの動画を観ても、自分たちの運営する別チャンネルの動画が関連に出てくるようにしていて。それが広告収入目的になってしまっているからダメなんですけど、(中略)結果的に映画と人が出会う機会を作っていた」「再生回数が何十万回も行ってるとコメントも必然的に多い。みんなコメントしてるから、自分もコメントしようと思う。さらに再生回数が多いほど、これは許されているものなんだと安心感が生まれて勘違いしてしまう。公式アカウントじゃないから書きやすいという感覚もあるかもしれません」と語っている[10]

被害

コンテンツ海外流通促進機構による2021年に報道された調査によれば、少なくとも55のアカウントから2100本余りの動画が投稿されているという[2]。1本で再生回数が数百万回に達しているものもあり、コンテンツ海外流通促進機構は、本来の映画が鑑賞されなくなることによる被害の総額を956億円と推計している[2]。コンテンツ海外流通促進機構の後藤健郎代表理事は「ファスト映画を見た人が本編を見ないことにつながりかねず、被害は甚大」と危機感を表明[2]、投稿者は再生回数に応じて広告収入を得るが、本編を見られなくなることによる映画会社の被害は約956億円にのぼると推計されている[11]

ファスト映画の中には、タイトルや説明欄に映画タイトルを記載しないようにして発見されづらくしたり、静止画を多く取り入れてコンテンツID 英語版による検知をすり抜けようとしているものも確認されている[3]

2021年6月20日に日本放送協会(NHK)の『NHKニュース7』にて報じられた結果、ファスト映画を扱う多くのチャンネルが動画を削除するなど撤退の動きを見せた[3][4]。同年6月23日には、宮城県警察本部が北海道札幌市東京都渋谷区に住む男女3人を著作権法違反の疑いで逮捕し、ファスト映画をめぐって逮捕された日本での全国初の事例となった[12][13]。警察は動画サイトからの広告収入が目的だったとみられており[6]、実際に2019年からの2年間で450万円以上の収入があったとしている[13]。また、宮城県警はこの動画のナレーションに関わったとして、神奈川県川崎市に住む男性も同年7月に書類送検し、後に映画会社1社との間で1,000万円を超える賠償金を支払うことなどで和解したと同年8月に報じられた[14]

YouTube上で活動しているファストシネマ(現LONELY LUNCH)は、取材を受けたマスメディアが「コンテンツIDを理解していない」と違法性は無いと反論を続けていた。最高裁まで争う姿勢で弁護士に相談したが勝訴不可能と論ぜられた為、一部の動画を削除しチャンネル名と投稿内容を変更。現在も同チャンネルでの活動を継続している[15][16][17][18][19][20][21]


  1. ^ Inc, Natasha. “「ファスト映画」投稿者に有罪判決、犯罪の実態も判明(コメントあり)” (日本語). 映画ナタリー. 2021年11月19日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g 「ファスト映画」投稿急増 映画産業界に危機感 法的措置も”. NHK (2021年6月20日). 2021年6月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月22日閲覧。
  3. ^ a b c d e 2時間の映画を10分で紹介 「ファスト映画」累計被害額は950億円超、業界が法的措置へ”. ねとらぼ (2021年6月22日). 2021年6月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月23日閲覧。
  4. ^ a b c NHKニュース7放送、「ファスト映画」取材について”. 一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構CODA (2021年6月20日). 2021年6月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月22日閲覧。
  5. ^ ファスト映画で有罪判決 男女3人、仙台地裁”. 産経ニュース (2021年11月16日). 2021年11月16日閲覧。
  6. ^ a b 長編映画まとめた「ファスト映画」を無断で投稿、全国初の逮捕…広告収入目当てか”. 読売新聞 (2021年6月23日). 2021年6月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月26日閲覧。
  7. ^ 稲田豊史 (2021年6月12日). “失敗したくない若者たち。映画も倍速試聴する「タイパ至上主義」の裏にあるもの”. 現代ビジネス. 2021年6月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月23日閲覧。
  8. ^ a b YouTubeで横行するファスト映画、消失する億単位の需要”. NETIB-NEWS (2021年6月21日). 2021年6月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月23日閲覧。
  9. ^ Inc, Natasha. “「ファスト映画問題から考える映画の未来」映画感想TikToker・しんのすけインタビュー | シリーズ:ファスト映画 第1回” (日本語). 映画ナタリー. 2021年11月23日閲覧。
  10. ^ 「ファスト映画問題から考える映画の未来」映画感想TikToker・しんのすけインタビュー” (日本語). 映画ナタリー (2021年7月5日). 2021年11月17日閲覧。
  11. ^ 軽い気持ちが大きな代償に…無断で編集「ファスト映画」投稿者に全国初の有罪判決 多額の賠償も【宮城発】”. FNNプライムオンライン. 2021年11月20日閲覧。
  12. ^ 「ファスト映画」で全国初の逮捕者 著作権違反容疑 宮城県警”. NHK (2021年6月23日). 2021年6月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月23日閲覧。
  13. ^ a b ファスト映画の広告収入、450万円超か 投稿容疑者ら”. 朝日新聞 (2021年6月26日). 2021年7月1日閲覧。
  14. ^ 巨額の賠償、関与を後悔 著作権法違反―「ファスト映画」ナレーター男性”. 時事通信 (2021年8月26日). 2021年8月28日閲覧。
  15. ^ 名作を10分に無断編集した「ファスト映画」横行、投稿者「自分の創作物で違法性もない」 : 社会 : ニュース” (日本語). 読売新聞オンライン (2021年9月14日). 2021年10月12日閲覧。
  16. ^ 2時間の映画を10分で紹介 「ファスト映画」累計被害額は950億円超、業界が法的措置へ” (日本語). ねとらぼ. 2021年10月12日閲覧。
  17. ^ 伊集院光、ファスト映画の投稿者が『NEWS23』の取材を受けて「1時間もインタビューしたのに編集で短時間にされた」と立腹していたことに爆笑「落語みたいなオチ」” (日本語). ラジサマリー (2021年7月12日). 2021年10月12日閲覧。
  18. ^ 「合法」主張していた“ファスト映画”投稿者、動画全消しして方針転換” (日本語). YouTubeニュース | ユーチュラ (2021年9月12日). 2021年10月12日閲覧。
  19. ^ アレクセイ・フョードロウィチ・ラスコーリニコフ - YouTube”. www.youtube.com. 2021年10月16日閲覧。
  20. ^ 映画を10分に短縮しネタバレ違法upするファストシネマさん、TVの1時間取材が一瞬しか使われないことに呆然となってしまう” (日本語). Togetter. 2021年10月16日閲覧。
  21. ^ https://mobile.twitter.com/raskolnikov83” (日本語). Twitter. 2021年10月16日閲覧。
  22. ^ a b 批評ではなく、単に広告収益を得るため?…“倍速視聴”が広まる中、悪質な「ファスト映画」動画にメス”. ABEMA TIMES (2021年6月22日). 2021年6月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月23日閲覧。
  23. ^ キューブリック作品を解説したユーチューバーが約1600万円の損害賠償を求められる” (日本語). GIGAZINE. 2021年11月21日閲覧。
  24. ^ 軽い気持ちが大きな代償に…無断で編集「ファスト映画」投稿者に全国初の有罪判決 多額の賠償も【宮城発】”. FNNプライムオンライン. 2021年11月20日閲覧。
  25. ^ 軽い気持ちが大きな代償に…無断で編集「ファスト映画」投稿者に全国初の有罪判決 多額の賠償も【宮城発】”. FNNプライムオンライン. 2021年11月20日閲覧。
  26. ^ ファスト映画で投稿者に有罪判決 | 財経新聞” (日本語). www.zaikei.co.jp (2021年11月19日). 2021年11月20日閲覧。
  27. ^ Inc, Natasha. “「ファスト映画」投稿者に有罪判決、犯罪の実態も判明(コメントあり)” (日本語). 映画ナタリー. 2021年11月18日閲覧。
  28. ^ “X分钟看完一部电影”短视频要凉凉啦?网友炸锅了_南方网”. news.southcn.com (2021年4月30日). 2021年5月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月23日閲覧。
  29. ^ “X分钟看完一部电影”短视频要凉凉啦?网友炸锅了_南方网”. web.archive.org (2021年5月1日). 2021年11月23日閲覧。
  30. ^ “XX分钟看电影”短视频侵权 国家电影局将重点打击短视频侵权盗版行为-新华网”. www.xinhuanet.com (2021年4月29日). 2021年4月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月23日閲覧。
  31. ^ 「XX分鐘看電影」要沒了?中國大陸出手打擊短片侵權 | 聯合新聞網:最懂你的新聞網站” (中国語). 聯合新聞網 (2021年4月28日). 2021年6月23日閲覧。
  32. ^ 蔡苡柔 (2021年4月28日). “5分鐘講電影吐槽短片「侵不侵權」 兩岸輿論反應大不同” (中国語). 香港01. 2021年6月23日閲覧。
  33. ^ 自由時報電子報 (2017年4月26日). “影片被破梗醜化//片商怒控「像把錢丟水裡」損失達千萬 - 生活” (中国語). 自由時報電子報. 2021年8月18日閲覧。
  34. ^ “從網紅谷阿莫事件 看兩岸三地的知識產權” (中国語). BBC News 中文. (2017年4月25日). オリジナルの2017年4月29日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170429211248/http://www.bbc.com/zhongwen/trad/chinese-news-39711314 2021年6月23日閲覧。 
  35. ^ 檢認定網紅谷阿莫涉侵權《屍速列車》等13部片 - 社會” (中国語). 自由時報電子報 (2018年6月7日). 2020年11月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月23日閲覧。
  36. ^ 大陸電影局疑禁「XX分鐘看電影」短片 隨時被列入預警名單」『Apple Daily 蘋果日報』、2021年4月28日。2021年6月23日閲覧。オリジナルの2021-06-21時点におけるアーカイブ。


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