sliとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > コンピュータ > IT用語辞典 > sliの意味・解説 

Scalable Link Interface

(sli から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/16 08:58 UTC 版)

Scalable Link Interface (SLI、スケーラブル・リンク・インターフェース) とは、NVIDIAマルチGPU動作システムである。2枚あるいはそれ以上のSLI対応グラフィックスカードビデオカードビデオボードグラフィックスボード、グラフィックスチップ)を並列動作させ、出力は1つに集約させることで、コンピュータグラフィックスの描画処理を高速に行なうことができる。派生した規格としてHybrid SLIがある。

技術

元々は3dfxScan-Line Interleaveとして開発し、Voodoo2で導入した技術である。2基のVoodoo2チップをシステムに搭載し、画面の走査線を奇数と偶数で分けることでそれぞれのVoodoo2チップが並列して描画する。当時の3D描画機能としては極めて高い水準にあり、他社製品を大きくリードした。

Voodoo2の時代に開発されたSLI技術は、3dfxを買収したNVIDIAがPCI Express用に改良し、GeForceシリーズの機能の1つであるSLI (Scalable Link Interface) として実装した。これは画面を奇数・偶数走査線に分けて描画する3dfxのSLIに対し、画面を上下2分割 (あるいは搭載チップ数で分割)、フレーム毎に担当GPUを分ける方式で、3dfx SLIが潜在的に持っていたメモリコヒーレンシ問題の解消を狙ったものである。

同様の手法はATI(現AMD)のRAGE FURY MAXXにも取り入れられ、また同社のRADEON X850以降で採用されたATI CrossFireとして利用されている。

効果

ATIのCrossFireと同様、GPU2基による並列処理によってグラフィックス性能を高めることができる。対応ソフトウェアにおける平均的な処理速度上昇率はおよそ1.87倍となっている。特にDirectX 11、シェーダーモデル5.0となり、今まで以上にリッチなコンテンツが増加しつつある近年[いつ?]では有用な技術である。また、GTX 460などのGPUでは、本来の2倍以上の処理速度を発揮する場合もある。[1]

ワークステーションサーバの場合には、Quadro Plex(Quadroの項参照)を導入することでもSLIを利用できる。

応用

SLIの延長技術として、Quad SLIや3-way SLIがある。Quad SLIは、2個のGPUを搭載したデュアルGPUカードを2枚用いてSLI動作させることにより、処理速度がおよそ3.4倍となる。しかし、SLI動作可能なデュアルGPUカードは種類が少なく高価であるため、通常のSLIとQuad SLIの中間技術としてグラフィックスカード3枚で構築できる3-way SLIが考案された。3-way SLIを利用すれば処理速度が最大2.8倍になると謳われている。ただし、対応プラットフォームが数少ないため一般にはあまり普及していない。

LinkBoostテクノロジー

チップセット「nForce 590 SLI」搭載マザーボードにおいて「GeForce 7900 GTX」でSLIを組むと、ノースブリッジとサウスブリッジ間およびPCI Expressで帯域が125パーセント(毎秒8GBから10GB)になる[2]

なお、GeForce 8800シリーズ以降はこれをサポートせず、また7900 GTXは生産終了となっているため、2015年現在はこの機能を利用したシステムを新規構築することは難しい。

Hybrid SLI

Hybrid SLIとは2008年に発表された内蔵GPUと外付けGPUでSLIを構築する技術である。ATIのHybrid CrossFireXに相当する。利用するにはこの技術に対応するマザーボードとGPU、Windows Vista以降のOSが必要である。

Hybrid SLIには2種類の動作モードがある。外付けGPUによっては片方のモードのみしか利用できない。

GeForce Boost
内蔵GPUと外付けGPUでSLIを構築し、性能を上昇させるモード。
Hybrid Power
外付けGPUと内蔵GPUを状況に応じて切り替えることができるモード。これによって省電力化が可能になる。

接続方法

SLIによるマルチGPU環境の構成にあたっては、まず複数枚のグラフィックスカードと、それらを挿入できるだけの拡張スロットを有するマザーボード、そして最新のデバイスドライバを必要とし、いずれもSLIに対応するものでなければならない。

手順

  1. SLI対応チップセットを搭載するマザーボードと、SLIに対応する同一モデルのグラフィックスカードを2つ(または2つ以上)用意する。
  2. マニュアルに従い、グラフィックスカードをPCI Expressコネクターに接続し、各カードをブリッジ(ケーブル)で接続する。
  3. PCを起動させ、ユーティリティソフト「NVIDIAコントロールパネル」でSLI設定を有効にする。

SLI構成時には電源容量にも配慮する必要がある。SLIに対応した電源ユニット製品には「SLI-Ready」のロゴが記載されている[3]が、グラフィックスカードが要求する電力や補助電源仕様に関しては製品ごとに幅があるため、電源ユニット製品が実際に対応しているグラフィックスカード製品に関してもあらかじめ調査しておく必要がある。

なおLinux環境にてX Window Systemを利用している場合、NVIDIAコントロールパネルのほか、Xサーバー設定ファイルによってSLI設定を変更することもできる[4]

レンダリング方式に関しては、大別してスプリットフレームレンダリング(Split Frame Rendering, SFR)モードと、オルタネートフレームレンダリング(Alternate Frame Rendering, AFR)モードの2つから選択することができる。

特徴

  • 基本的にノースブリッジサウスブリッジからの接続なのでPCI Expressレーン数を増やすのが容易な代わり、ボトルネックが発生しやすい(ノースブリッジとサウスブリッジ一体型タイプもある)。
  • NVIDIA製のチップセット以外では基本的に動作しないものであったが、2008年8月28日(日本時間)、NVISION08においてIntel X58 ExpressチップセットでネイティブでのSLI動作をサポートすることを発表した。また、2009年8月10日(米国時間)、NVIDIAはIntelのCore i7、Core i5に対応するP55チップセットを利用したマザーボードにおいてSLI技術に対応する事を可能とするライセンス契約をIntel、その他マザーボードベンダーと結んだと発表した。NVIDIAはSLI対応サードパーティー製チップセットの開発を認めていなかったが[5]、2011年4月28日にライバルであるAMDの次期チップセットにSLIのライセンスを提供することを発表した[6][7]。これにより、一部ではあるがSLI・CrossFire共に「プラットフォーム・チップセットの違いによる制限」は取り払われることになった。これはCore iシリーズ以降のバスライセンス利用の許可がインテルより下りなかったため、自社製チップセットを発売できなくなったためである。
  • 同じメーカーの同じ製品を使用しないと、フリーズしてしまい、セーフモードで起動する羽目になる[8]
  • AFRモードではフレームレートを稼ぎやすいが、1フレームの処理時間が短くなるわけではないため、レスポンスの向上は限定的となる (理論値66%~)。4GPUの場合、さらにこの現象が顕著になる (理論値40%~)。
  • SLIではメモリのミラーリングが行なわれるため、たとえば4GBグラフィックスメモリを搭載するカードを2枚使用していても、実際にアプリケーションで利用できるメモリ総量は4GB×2の8GBにはならず、4GBあるいはそれ未満となる。
  • SLIは主にグラフィックスフレームのレンダリングを自動的に分散処理して高速化する技術であり、SLI環境下でのGPGPU分散処理を行なう場合は注意点や制約が存在する[9](NVIDIA GPUにおけるGPGPUはすべてCUDA基盤を利用しているため、このSLI環境における制約はCUDA/OpenCL/DirectCompute/OpenGL Compute Shaderを問わない)。

脚注

  1. ^ GPUの扱うデータに対してメモリ帯域が不足している場合、SLIまたはCrossFireによってそれを隠蔽し本来の性能を発揮できるようになる。具体例は https://www.4gamer.net/games/099/G009929/20100716100/ 等を参照。
  2. ^ 自作パーツ実験室 (52) LinkBoostとは? SLI Memoryとは? nForce 500シリーズの新機能(1) | マイナビニュース
  3. ^ DOS/V POWER REPORT | Impress Japan
  4. ^ Chapter 25. Configuring SLI and Multi-GPU FrameRendering
  5. ^ Intel 5400チップセット搭載のSkulltrailプラットフォームやLGA1336プラットフォーム環境であればSLI動作が可能なのは、エンスー向けであり出荷量が少ないことと、nForce 100、200というNVIDIAのブリッジチップを採用しているためであった。
  6. ^ NVIDIA、AMDの次期チップセット向けにSLIを提供 SLIのライセンスを拡大、AMD 990FX/990X/970でSLIが使用可能に PCオンライン 2011年4月29日
  7. ^ 解放しない理由としては、Intel等他社に開放した場合にNVIDIA製チップセット搭載のマザーボードが売れなくなることを懸念していると言われていた[要出典]。しかし、後にNVIDIA自身がチップセット事業を大幅縮小したことで他社に開放する方針に転換した。
  8. ^ ForceWare 81.84β以降のドライバーにより、異なるメーカーでの同一GPUのグラフィックボードによる、SLIでの動作が可能となった。だが、この様な使用法はパーツメーカーの保証対象外となることが多い[要出典]また、それ以前、特にごく初期の頃のSLIはきわめてピーキーで、レビュー[要曖昧さ回避]などを行うライターなどにも異なるグラフィックボードを組み合わせることに挑戦してグラフィックボードを故障させた者などが出た[要出典]
  9. ^ Programming Guide :: CUDA Toolkit Documentation

関連項目

外部リンク


SLI

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/24 01:46 UTC 版)

3dfx」の記事における「SLI」の解説

Scalable Link Interface」も参照 SLI(Scan-Line Interleave)は3dfx開発しVoodoo2導入され技術である。2基のVoodoo2チップシステム搭載させ、画面走査線奇数偶数分けることでそれぞれのVoodoo2チップ並列して描画する当時3D描画機能としては極めて高い水準にあり、他社製品大きくリードした。 なお、Voodoo2時代開発されたSLI技術は、(3dfx買収後の) NVIDIAPCI Express用に改良しGeForceシリーズ機能1つであるSLI (Scalable Link Interface) としてより高度な形で実装された。

※この「SLI」の解説は、「3dfx」の解説の一部です。
「SLI」を含む「3dfx」の記事については、「3dfx」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「sli」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「sli」の関連用語

sliのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



sliのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
IT用語辞典バイナリIT用語辞典バイナリ
Copyright © 2005-2025 Weblio 辞書 IT用語辞典バイナリさくいん。 この記事は、IT用語辞典バイナリの【SLI】の記事を利用しております。
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのScalable Link Interface (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの3dfx (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS