Y染色体グループごとの近隣集団との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 23:01 UTC 版)
「日本人」の記事における「Y染色体グループごとの近隣集団との関係」の解説
ハプログループD1a2aは、日本列島に固有に見られるタイプで、アイヌが高頻度で約85%、次いで琉球民族で約40%、本土日本人にも35%ほど見られる。縄文人の血を色濃く残すとされるアイヌや一部の沖縄県民(特に糸満や宮古島)で高頻度に見られ、反対に漢民族や朝鮮民族などの周辺諸民族にはほとんど見られないことから、ハプログループD1a2aは縄文人に特徴的なY染色体だとされる。(ミクロネシアやティモール島でもわずかに発見されている。)アリゾナ大学のマイケル・F・ハマー (Michael F. Hammer) のY染色体分析でもD系統が扱われ、チベット人にも、約50%の頻度でこのハプログループDを持っていることを根拠に、縄文人の祖先は約5万年前に中央アジアにいた集団が東進を続けた結果、約3万年前に北方ルートで北海道に到着したとする仮説を提唱した。しかし、実際にどのような経路を通ったかは様々な学説があり結論には達していない。 D系統は、現在世界で極めて稀な系統になっており、日本人 (D1a2a) が最大集積地点としてその希少な血を高頻度で受け継いでいる。遠く西に離れたチベット人 (D1a1) やアンダマン諸島(D1a2b)で高頻度である他は、アルタイ(D1*)、タイ (D1a1)、ヤオ族 (D1a1)、フィリピン (D1b)、グアム島(D1*) 等の南方地域にわずかに存続するだけである。しかしながら同じD系統とは言え、D1a2a系統と東アジア(チベット等)のD1a1系統は分岐してから4 - 5万年もの年月を経ていると考えられる(O系統が誕生したのが3 - 4万年前であるため、これよりも前に分岐しているD1a2aとD1a1等は別系統であるが双方とも日本列島で見られる)。 ハプログループOは東アジアから東南アジアにかけて最多を占めるグループである。O系統は約40,000年前(36,800年前、41,900年前、44,700年前)に東アジアにてハプログループNOから誕生し、35,000年前頃から30,000年前頃にかけて多くの現代東アジア人や東南アジア人の父系に繋がる五つの大系統を生み出した。約35,000年前の日本列島の旧石器時代初期頃に日本列島にまで到達したと考えられるD系統と比べると、O系統はその後から東ユーラシア全域に広がり、誕生時期的には比較的若い系統であるものの、西ユーラシア系のハプログループRと並んで現代人類において最も帰属人口の多い系統となっている。日本で主に見られる詳細系統はO1b2系統とO2系統である。O1b2系統は、日本列島の他、満州民族、朝鮮半島でも日本と同程度見られ、他は東アジア北東部や東南アジアでも低頻度見られる。O1b2系統はおおよそ30,000年前に現代東南アジア人男性の多くが属すO1b1に繋がる系統から分岐をして、約10,000年前から中国大陸で帰属人口が増え始め、やがて日本列島や満州地域、朝鮮半島へ拡散をしたと見られる。日本のO1b2保有者の約8割で見られるO1b2a-47zというサブグループは、おおよそ8,000年前に発生したと推定されているので、他の満州や朝鮮、インドネシアで多く見られるO1b2-M176(x47z)というサブグループとはそれ以上昔に血筋がわかれているということになる。O2系統は日本においてはO1b2系統より低頻度であるものの、中国、朝鮮、ベトナム等においては最多を占めるグループであり、日本やその他の東南アジア、インド北東部やネパールなどの南アジアでも中から低頻度見られ、O系統では最大のサブグループである。
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