Y染色体ハプロタイプ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/23 01:10 UTC 版)
父系に付随して遺伝するY染色体の調査も行われている。これによると三大始祖は何れもHT2と呼ばれるハプロタイプを持っていたと考えられ、Y染色体で父系を区別することはできない。しかし、幸運なことにダーレーアラビアンから8代目のWhalebone以降はY染色体のYE3領域に突然変異(1塩基の欠失)が発生しておりHT3に分類され追跡が可能である。なお、牝系では系図の誤りが見つかっている一方、父系では非サラブレッドまで広げてDefence(1824)、Goldschaum(1891)の子孫などかなりマイナーな父系を含む116頭について調べられたが、HT2とHT3の出現は血統書に忠実で矛盾は見つからなかった。家畜馬全体で支配的なHT1と呼ばれるハプロタイプの混入もなかった。 HT2はサラブレッドの3.5%を占める。馬が家畜化されてからかなり経過してHT1から派生したタイプで、西アジアに多くアラブ種の50%がこれである。西ヨーロッパ在来馬にはほとんど存在せず、三大始祖の東方馬起源説を裏付ける。サラブレッドのヘロド系、マッチェム系、セントサイモン系がHT2に所属する他、ダーレーアラビアン系から早期に派生し、中間種に残るヤングマースク系、フライングチルダーズ系もHT2となっている。 HT3はHT2の派生タイプであり、サラブレッド及びその影響を受けた馬種に限られる。サラブレッドではおおよそ96.5%を占める。サラブレッドWhaleboneの父系子孫がこのタイプであって、PotooooooooまたはWaxy、Whalebone何れかの世代でY染色体のYE3領域に突然変異が発生し、区別できるようになったと考えられている。なお、この領域に意味のある遺伝子は存在していない。また、家畜馬のY染色体は元々極端に多様性が低く、タンパク質コード領域は、X染色体と組換えを起こしやすい擬似常染色体領域(PAR)を除いてほぼ全ての家畜馬で一致している。
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