擬似常染色体領域
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/16 09:48 UTC 版)
「X染色体の不活性化」の記事における「擬似常染色体領域」の解説
X染色体上のいくつかの遺伝子はXiでの不活性化を逃れる。Xist遺伝子は、Xiでは高レベルで発現し、Xaでは発現しない。その他のXiでの不活性化を逃れた遺伝子は、XaとXiとで同様に発現する。ヒトのXiでは染色体の遺伝子のうち最大25%程度が発現しているのに対して、マウスでは不活性化を逃れる遺伝子はほとんど無い。 不活性化を逃れる遺伝子の多くはX染色体上で、他のX染色体領域と似ておらずY染色体にある遺伝子の一部を含む、特定の領域に属している。この領域は「擬似常染色体領域」と呼ばれ、Y染色体と擬似常染色体領域の間での乗換えも起きる。このY染色体および擬似常染色体領域にある遺伝子座では、常染色体と同じように、雌雄どちらの個体でも(性染色体にある伴性遺伝子と違って)2つの遺伝子が遺伝する。そのためこの領域では雌の遺伝子量補償が必要なく、X染色体不活性化を逃れるメカニズムを発達させたと推定されている。Xiの擬似常染色体領域の遺伝子は、典型的なヘテロクロマチン構造を持たず、Xist RNA結合もほとんど無い。 Xi中に不活性化されない遺伝子が存在することは、X染色体数の異状によって起こるターナー症候群 (XO) あるいは クラインフェルター症候群 (XXY, XXXY...)といった染色体異常による症状が現れる原因となる。X染色体不活性化は、理論的には常染色体で起きる様な染色体数の異状による発現量異状の影響を除去することができるが、擬似常染色体領域の遺伝子についてはその機構が当てはまっていない。ただし、常染色体数の異状による影響は流産等の重度のものが多いのに対して、X染色体数の異状の影響は目立たないほど軽度であることも多い。
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