T613からT700へ - タトラ乗用車の終焉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/13 01:44 UTC 版)
「タトラ (自動車)」の記事における「T613からT700へ - タトラ乗用車の終焉」の解説
T613のマイナーチェンジ車として、1980年には小改良を施したT613/2が、また1986年には内外装を大幅にモダナイズしたT613/3が登場している。 T613/3はフロントノーズの平板化や三角窓の廃止など、一見洗練されたかのように見えた。が、内外装の細かなパーツ(スイッチやダクト)などは、同じチェコのシュコダや、ポーランドのFSOといった小型車からの流用品が充てられた。少量生産車ゆえのやむを得ない措置であった。 1970年代以降の東欧諸国において、乗用車の技術発展は著しく立ち後れ、西側に比して10年から30年も前の水準の自動車が生産されている状態になった。 タトラも例外ではなく、チェコスロバキアが民主化された1989年に至っても、T613の生産が続いていた(開発以来20年以上経過していた)。デザインこそ何とか時流に追いつくためリファインしてはいたが、もはやそのメカニズムは西欧諸国の自動車では想像もつかない異次元の存在となっていた。排気ガスの触媒対策が難しい空冷エンジンと、操縦安定性やトランクスペースの点で不利なリアエンジン方式は、いずれも西側では1970年代に廃れてしまったのである。 特にT613は排気ガス対策の面で立ち後れており、1991年にはイギリスのETB社の手で対策を施したT613/4が開発された。電子制御によるマルチポイント燃料噴射方式の導入(それまでのT613は特殊なモデルを除いてキャブレター仕様だった)、触媒搭載等の改良を受け、3.5リッターエンジンは200HP/5,750rpmを発生した。新たな5速ギアボックスを搭載され、フロントスポイラーやパワーステアリング、エアコン、パワーウインドウをも装備したT613/4の最高速度は、215km/hに達した。 更にイギリスの自動車マニアを視野に入れた改良型として、エアコンユニットの位置を変更し、フロントのライト回りを改変した右ハンドル仕様のT613/5が少数製造されている。これはダッシュボードにウッドを用いていた。 だが民主化後の東ヨーロッパには、ドイツ車をはじめとする西欧諸国の高品質・高性能な乗用車が輸入されるようになっており、既に「ハンドメイドの動く化石」であったT613は、チェコ本国や東欧各国においてさえも市場商品力を失っていた。結局T613の生産は1996年に終了した。22年間の総生産台数は僅かに約11,000台に過ぎない。 タトラ社はT613の後継モデルを検討し、1996年にはT700を開発した。だがこれも、本質的にはT613/5の外装パネルを模様替えした程度のモデルに過ぎず、十分な成功は収められなかった。T700は少数が製造されたのみで1998年に製造中止され、これをもってタトラの乗用車の歴史は終わった。
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