西フィリピン海
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2025/07/10 22:36 UTC 版)
西フィリピン海（にしふぃりぴんうみ、英語: West Philippine Sea、フィリピン語: Kanlurang Dagat ng Pilipinas[1][2]、Karagatan Kanlurang Pilipinas[3]、 略称：WPS）フィリピン政府が同国の排他的経済水域に含まれる南シナ海の一部を公式に指定したものである。この用語は、南シナ海全体を指すために誤って使用されることもある。
| 西フィリピン海 Kanlurang Dagat ng Pilipinas |
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西フィリピン海の公式範囲に相当するおおよその領域を示す地図。国際条約上の境界線（1898年のパリ条約に基づく赤線）と、フィリピンの地図でカラヤン島群として指定されることが多いスプラトリー諸島（1978年大統領令第1596号に基づく緑線）も含まれる）[4]
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| 座標 | 北緯13度 東経118度 / 北緯13度 東経118度座標: 北緯13度 東経118度 / 北緯13度 東経118度 |
| 語源 | フィリピンに続いて (2012年9月5日に行政命令第29号に基づいてフィリピン政府により正式に採用された名称) |
| 上位水域 | 南シナ海 (フィリピンが主張するEEZのみ) |
| 島 | 南沙諸島そしてスカボロー礁 (係争地域) |
背景
「西フィリピン海」という用語は、少なくとも1961年以降、地質学および海洋学の論文で言及され、国際社会で使用されてきました。しかし、この用語はフィリピン諸島の東側に位置するフィリピン海の西部を指して使用されていました[5][6][7]。2011年、ベニグノ・アキノ3世大統領の政権下ではすでに、フィリピン政府はフィリピン諸島の西側の海域を同じ名前で呼び始めていた[8]。この名称の新たな定義は、国家地図作成システム[9]を目的としており、ウォルデン・ベロ氏によれば、中国が主張する「南シナ海」全体に対する主権に反対する意向を示すためだという[10]。
代議院では、アクバヤン代表のウォルデン・ベロ氏が2011年6月に決議案を提出し、政府に対し、南シナ海の名称を「西フィリピン海」に変更する手続きを検討するよう求めた[11]。ベロ氏によると、「西フィリピン海」という用語には特定の空間的境界や地理的特徴はなく、南シナ海は中国の海ではないことを反映したものである[10]。この海域に別の名称を使用するという提案は、2000年代半ばから西フィリピン海を使用しているフィリピン軍から支持されている[12]。
これは2012年9月の行政命令によって成文化され、フィリピン政府の各部局、部門、機関、組織にその用語の使用を義務付けた[9]。2012年9月、フィリピン政府は、政府の地図、その他の通信手段や文書において、フィリピン西部の海域を「西フィリピン海」と呼ぶ名称の使用を開始すると発表した[8]。この用語の適用はフィリピンの排他的経済水域内の水域に限定されることが明確化されました[13]。
2016年のPCA判決
2016年7月12日、常設仲裁裁判所は、命名を伴わない事件においてフィリピンに有利な判決を下した。裁判所は、「本裁判所は、両締約国間の、あるいは南シナ海に接する他のいかなる国をも含むいかなる海洋境界の画定を求められておらず、また、その意図も持っていない」と明確にした[14][15][16]。同裁判所はまた、「九段線」地図に基づいて中国には「歴史的権利はない」との判決を下した[15][16][17]。
法的範囲
西フィリピン海を形成する南シナ海の領域には、正確な境界線が定められていない[10]。この地域を正式に命名した行政命令では、次のように定義されている。
フィリピン諸島の西側の海域を西フィリピン海と称する。この海域には、ルソン海に加え、カラヤン諸島群およびバホ・デ・マシンロック（別名スカボロー礁）に隣接する海域が含まれる。—行政命令第29号（2012年）第1条[9]
フィリピンの法律では、西フィリピン海はフィリピン政府が同国の排他的経済水域（EEZ）の一部であると主張する南シナ海の部分のみを指す。この地域の命名は、2012年9月5日に当時の大統領ベニグノ・アキノ3世によって発行された行政命令第29号によって正式に決定された。この命令では、1978年に当時のフェルディナンド・マルコス大統領の任期中に発布されフィリピンのEEZを設定した大統領令第1599号、および2009年に当時のグロリア・マカパガル・アロヨ大統領の政権下で制定されフィリピン諸島の基線を定めた共和国法第9522号、すなわち基線法も引用されている[18]。
この行政命令は、南シナ海のEEZに対するフィリピンの主張を主張しており、フィリピン政府は、1982年国連海洋法条約に基づき西フィリピン海地域に対する主権を有し、「国家地図作成システムの目的のため、適切な名称で自国の海域を指定する固有の権力と権利」を有しているとの立場を伝えている[18]。
使用法
行政命令第29号に基づき、国立地図資源情報局（NAMRIA）は、政府機関が作成および発行する地図において西フィリピン海の名称を使用することが義務付けられている。[18]
フィリピン気象局（PAGASA）は、この命令が発令される以前、2011年に同国の西側の海域を指すのにこの名称を採用したが、群島の東側の海域を指すのには引き続き「フィリピン海」を使用していた[19]。
「西フィリピン海」という用語は、南シナ海全体を指すために使用されることがあるが、この用法は誤りであると非難されている[20]。
「西フィリピン海」という名称は、Googleマップで検索可能となっている。2025年4月、Googleは地図を更新し、「西フィリピン海」というラベルをより明確に表示した。一方、「南シナ海」という表記は、新しいラベルの北西に依然として表示されている[21][22]。この動きを、フィリピン政府およびフィリピン軍（AFP）は称賛した一方で、中国外交部はこれに異議を唱えた[23]。しかし、その明確なラベルは一時的に削除され、その後再び表示されるようになった[24][25][26]。
脚注
- ^ “Senate Bill No. 405, 19th Congress” (フィリピン語). 19th Congress of the Philippines (2022年7月). 2024年8月27日閲覧。
- ^ “Pnoy, naalala sa tensyon sa China” (フィリピン語). Philstar.com (2024年6月25日). 2024年8月27日閲覧。 “Kaya’t naalala ng mga Pilipino kung paano iginiit ni dating pangulo ang mga karapatan ng bansa sa Kanlurang Dagat ng Pilipinas sa paggunita sa anibersaryo ng kanyang kamatayan sa gitna ng kasalukuyang tensyon sa lugar kasunod ng panghihimasok ng China.”
- ^ “Ang West Philippine Sea: Isang Sipat” [The West Philippine Sea: A Briefer] (フィリピン語). Department of Foreign Affairs (Philippines). p. 2 (2014年12月). 2022年2月18日閲覧。 “Nasa kanlurang bahagi ng Pilipinas ang Karagatang Kanlurang Pilipinas o West Philippine Sea (WPS).”
- ^ “Presidential Decree No. 1596, s. 1978”. Official Gazette of the Republic of the Philippines (1978年6月11日). 2017年7月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月20日閲覧。
- ^ Sato, T. (1961). “A guyot at the north margin of the West Philippine Sea Basin” (英語). Japanese Journal of Geology and Geography 32 (2).
- ^ Ludwig, W.J. (1973年5月10日). “Structure of East China Sea-West Philippine Sea Margin off southern Kyushu, Japan” (英語). Journal of Geophysical Research 78 (14): 2526–2536. doi:10.1029/JB078i014p02526.
- ^ Correspondent, A (1973年12月21日). “Origin of Marginal Seas” (英語). Nature 246 (5434): 447–448. doi:10.1038/246447a0.
- ^ a b Agence France-Presse (2012年9月12日). “Philippines renames coast 'West Philippine Sea'” (英語). South China Morning Post. 2019年6月18日閲覧。
- ^ a b c “Administrative Order No. 29 : Naming the West Philippine Sea of the Republic of the Philippines, and for Other Purposes” (英語). Official Gazette. Government of the Philippines (2012年9月5日). 2012年9月5日閲覧。
- ^ a b c “The West Philippine Sea?”. The Diplomat (2011年12月15日). 2019年6月18日閲覧。
- ^ FRJ (2011年6月3日). “Gawing Western Philippine Sea: Tawag sa South China Sea, pinapapalitan ng kongresista [Make it Western Philippine Sea: Congressman urges the name of South China Sea be changed]” (タガログ語). GMA News 2021年6月9日閲覧。
- ^ Evangelista, Katherine (2011年6月8日). “PH military favors calling South China Sea as Western Philippine Sea” (英語). Philippine Daily Inquirer 2021年6月9日閲覧。
- ^ “IBP Statement on the West Philippine Sea”. Integrated Bar of the Philippines (n.d.). 2025年3月15日閲覧。
- ^ “The Republic of the Philippines v. The People's Republic of China” (英語). Permanent Court of Arbitration. 2019年1月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月14日閲覧。
- ^ a b “PCA Press Release: The South China Sea Arbitration (The Republic of the Philippines v. The People's Republic of China) | PCA-CPA” (英語). pca-cpa.org. 2016年7月12日閲覧。
- ^ a b Perlez, Jane (2016年7月12日). “Tribunal Rejects Beijing's Claims in South China Sea” (英語). The New York Times. 2016年7月12日閲覧。
- ^ 2016年の南シナ海仲裁判決に関する日本のニュースソースをさらに追加しました：
- “中国の南シナ海支配を否定 仲裁裁判所「歴史的権利なし」と判断”. 『読売新聞』 2016年7月13日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - “中国の主張「九段線」認めず 仲裁裁判所判決”. 『毎日新聞』 (毎日新聞社) 2016年7月13日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - “中国主張の南シナ海境界線「根拠無い」 仲裁裁判所判決”. 『朝日新聞』 (朝日新聞社). オリジナルの2016年7月12日時点におけるアーカイブ。 2016年7月13日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - “南シナ海 国際仲裁裁判 中国に厳しい内容に”. NHKニュースWEB (日本放送協会) 2016年7月13日閲覧。
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- “中国の南シナ海支配を否定 仲裁裁判所「歴史的権利なし」と判断”. 『読売新聞』 2016年7月13日閲覧。
- ^ a b c Ubac, Michael Lim (2012年9月13日). “It's official: Aquino signs order on West Philippine Sea” (英語). Philippine Daily Inquirer 2019年6月18日閲覧。
- ^ “South China Sea renamed in the Philippines” (英語). www.asiaone.com. 2025年4月10日閲覧。
- ^ Agcaoili, John Gabriel (2021年5月25日). “Panelo confuses West Philippine Sea with whole South China Sea” (英語). ABS-CBN News 2025年1月8日閲覧. ""If you say the West Philippine Sea, the basis should be really Administrative Order [No.] 29, which clearly refers to only part of the South China Sea, which is under Philippine jurisdiction. It has never been synonymous with the South China Sea," Batongbacal said."
- ^ Dava, Bianca (2025年4月14日). “West Philippine Sea is now on Google Maps” (英語). ABS-CBN News. オリジナルの2025年4月21日時点におけるアーカイブ。 2025年4月14日閲覧。
- ^ “'West Philippine Sea' now visible on Google Maps without specific search” (英語). France 24. (2025年4月14日) 2025年4月21日閲覧。
- ^ Kang, Taejun (2025年4月16日). “Beijing, Manila at odds over Google Maps update on South China Sea”. Radio Free Asia 2025年4月27日閲覧。
- ^ Argosino, Faith (2025年4月30日). “West Philippine Sea no longer visible on Google Maps” (英語). Philippine Daily Inquirer 2025年4月30日閲覧。
- ^ Dava, Bianca (2025年4月30日). “‘West Philippine Sea’ no longer visible on Google Maps”. ABS-CBN News 2025年4月30日閲覧。
- ^ Diana, Blanca (2025年5月1日). “'West Philippine Sea' label back on Google Maps after tech issue”. ABS-CBN News
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関連項目
- “The West Philippine Sea | The Territorial and Maritime Jurisdictional Disputes from a Filipino Perspective | A Primer” [西フィリピン海 | フィリピンの視点から見た領土・海洋管轄権紛争 | 入門] (英語). Institute for Maritime Affairs and Law of the Sea | University of the Philippines (2013年7月15日). 2024年4月21日閲覧。
- Kanlurang Dagat ng Pilipinasのページへのリンク
