DNAの証拠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 02:23 UTC 版)
21世紀に入るとペスト菌をゲノム解析するようになり、ハーンシュらは2010年に成果を医学系学術誌 (PLOS Pathogens) に発表した。彼らは、黒死病やその後の再発と関連したヨーロッパ各地の集団墓地から出土した人骨の歯槽に存在するDNAやRNAを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて評価した。フランス南部やドイツで行われた以前の分析と共に、この新しい研究が「黒死病の原因に関する議論の決着となり、ペスト菌が中世時期のヨーロッパを荒廃させた疫病流行の病原体だったことを明白に示している」と著者らは結論づけた。2011年、英国イーストスミスフィールド墓地の黒死病犠牲者から採集された遺伝的証拠でもその結果が追加確認された。シューネマンらは「中世ヨーロッパの黒死病は、今や存在しないかもしれないペスト菌の変種によって引き起こされた」と2011年に結論づけた。 2011年後半、ボスらは同じイーストスミスフィールド墓地で採集したペスト菌の最初のゲノム概要をネイチャー紙で報告し、黒死病を引き起こした菌株がペスト菌の最も現代的な菌株の祖先であることを示した。 以降の追加ゲノム論文では、さらに黒死病の原因となったペスト菌株がペスト第3のパンデミックを含む後年のペスト流行感染の祖先にあたり、かつペスト第1のパンデミックを引き起こした菌株の子孫である、との系統発生学的な位置づけを確認した。加えて、先史時代のかなり昔のものからもペスト遺伝子が回収された。 14世紀ロンドンからの人骨25体から採取されたDNAは、ペストが2013年にマダガスカルを襲ったのとほぼ同じペスト菌株であることを示している。
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