DNA複製のタイミングの調節と染色体安定性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 05:05 UTC 版)
「長鎖ノンコーディングRNA」の記事における「DNA複製のタイミングの調節と染色体安定性」の解説
ASAR(asynchronous replication and autosomal RNA)はスプライシングやポリアデニル化を受けない非常に長い(~200 kb)ncRNAであり、正常なDNA複製のタイミングの決定と染色体安定性に必要である。ASAR6、ASAR15、ASAR6-141の遺伝子座のいずれか1つを欠失させると、染色体全体で複製のタイミングの遅れと分裂期の凝縮の遅れ(DRT/DMC)という同じ表現型が引き起こされる。DRT/DMCは染色体分離のエラーを引き起こし、secondary rearrangementの頻度の増加と染色体不安定性をもたらす。Xistと同様、ASARはランダムな単一アレル発現を行い、アレル間でDNA複製が同期していない染色体ドメインに位置する。ASARの機能の機構は現在も研究中であるが、Xist lncRNAと類似した機構で、しかし常染色体内のより小さなドメインにのみ作用することでアレル特異的な遺伝子発現の変化を引き起こしていると予想されている。 また、DNA二本鎖切断(DSB)の不適切な修復は染色体組換えを引き起こし、がんの発生の主要因の1つとなっている。非相同末端結合(NHEJ)や相同配列指向性修復(英語版)(HDR)など真核生物細胞におけるDSB修復の主要な経路のさまざまな段階において、多数のlncRNAが重要な役割を果たしている。こうしたRNA遺伝子の変異や発現の変化は局所的なDNA修復の欠陥をもたらし、染色体異常の頻度を増加させる。さらに、一部のRNAは長距離間の染色体組換えを刺激する可能性が示されている。
※この「DNA複製のタイミングの調節と染色体安定性」の解説は、「長鎖ノンコーディングRNA」の解説の一部です。
「DNA複製のタイミングの調節と染色体安定性」を含む「長鎖ノンコーディングRNA」の記事については、「長鎖ノンコーディングRNA」の概要を参照ください。
- DNA複製のタイミングの調節と染色体安定性のページへのリンク