ATP synthaseとは? わかりやすく解説

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ATP合成


ATP合成酵素


ATP合成酵素

(ATP synthase から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/19 05:00 UTC 版)

ATP合成酵素(ATPごうせいこうそ)とは、呼吸鎖複合体によって形成されたプロトン濃度勾配と膜電位からなるプロトン駆動力を用いて、ADPリン酸からアデノシン三リン酸 (ATP) の合成を行う酵素である。別名ATPシンターゼ呼吸鎖複合体V、複合体Vなど。 なお、シンテターゼはATPなどの高エネルギー化合物の分解と共役する反応を触媒する酵素を指すが、ATP合成に他のエネルギー化合物を用いることはないので、「ATPシンテターゼ」という呼称は正しくない。

ATPアーゼにおける位置づけ

一部の酵素が正反応と逆反応の両方を触媒できるように、ATP合成酵素は普通ATPアーゼ活性も持ち合わせている[1]

ATPアーゼのうちイオン輸送性ATPアーゼの一群がATP合成酵素を含んでいる。イオン輸送性ATPアーゼは以下のように分類される。

  • F型ATPアーゼ – ほとんどの生物がATP合成に用いている
  • P型ATPアーゼ – イオン能動輸送に用いられる、ATP消費型
  • V型ATPアーゼ – 液胞 (vacuole) に存在する、能動輸送に用いられる
  • A型ATPアーゼ – 古細菌の用いるATP合成酵素

すべてのイオン輸送性ATPアーゼは電気化学的ポテンシャルを用いてATPを合成できる。ただし、以上のイオン輸送性ATPアーゼの中で、生物がATPの合成に普段用いているのはF型およびA型である。

F型ATPアーゼはほぼ全生物が所持するATP合成酵素の代表的なものであり、αプロテオバクテリアのATPアーゼがその起源といわれている。A型ATPアーゼは古細菌に特有なATP合成酵素であり、その後真核細胞の中でV型ATPアーゼに変化したと言われている。A型ATPアーゼはそのためV型ATPアーゼに分類されることも多い。

ATP合成酵素の所在

ATP合成酵素は真核生物ミトコンドリア内膜、原核生物細胞膜にそれぞれ位置している。呼吸鎖複合体の近傍に位置していると考えられている。電子顕微鏡を用いると生体膜の内側(細胞内側)にキノコ状の構造体が確認できるが、この構造体がATP合成酵素である。

ATP合成酵素の構造

PDB ID: 1c17,1e79 PDBのデータを元にし、Molecule of the Monthモードで描写。F0モーターおよびF1モーターを表示。

現在、その構造が良くわかっているのはF型ATPアーゼのみである。F型ATPアーゼは Fo (エフオー)と F1 (エフワン)の2つの部位からなる。それぞれの部位のサブユニット名およびその数は以下の通りである(原核生物型)。

  • F1部位 – α(3個)、β(3個)、γ(1個)、δ(1個)、ε(1個)
  • Fo部位 – a(1個)、b(2個)、c(9–12個、cサブユニットの数は不定)

真核生物のF型ATPアーゼはF1部位のサブユニット種類数は同じだが、Fo 部位は最大で8種類存在するといわれている。

F1 部位はεサブユニットを基部としてγサブユニットが幹状に結合し、その周囲をαおよびβサブユニットが囲うように交互に配置されている(γサブユニットを幹とすればα、βは葉の部分)。δサブユニットはα、βサブユニットの頂点に位置しており、F1部位の安定化に寄与していると思われる。F1部位は活性を保ったまま界面活性剤で可溶化することが可能であり、実験が行いやすい。F1部位は立体構造が1994年にWalkerらによって決定されており、その反応機構も明らかになっている。

Fo 部位は膜貫通型であり、cサブユニットがリング状に配置され、aサブユニットがその横に結合して、bサブユニットの基部となっている。bサブユニットは F1 部位のδサブユニットと結合し F1 部位の安定に寄与していると考えられている。Fo 部位は膜貫通型であるために活性型が得られにくく、可溶化しても元の正常を保てないことが多い。いまだ立体構造およびサブユニット構成は不定である。

ATP合成酵素の反応

F1 部位はATPの反応に寄与しており、それは以下の式で表される。

ATP

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