ブリッジ:4つの性格的小品
シューマン, クララ:4つの性格的小品
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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シューマン, クララ:4つの性格的小品 | Quatre pieces caracteristiques Op.5 | 作曲年: 1835or1836年 出版年: 1836年 初版出版地/出版社: Whistling |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例![]() |
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1 | 即興曲 魔女の狂宴(サバト) op.5-1 "Impromptu, (Le Sabbat)" | 1分30秒 | No Image |
2 | ボレロ風カプリス op.5-2 "Caprice a la Bolero" | 4分00秒 | No Image |
3 | ロマンス op.5-3 "Romance" | 3分00秒 | No Image |
4 | 幻想的情景―亡霊たちの踊り op.5-4 "Scene Fantastique. Le Ballet Des Revenants " | 4分00秒 | No Image |
作品解説
何年にもわたって作曲されたこの作品集は、典型的な「新ロマン主義」楽派の作品と言えよう。この作品を1836年9月にショパンのために演奏し、すっかり感激した彼はその楽譜を持ち歩いていた、と父ヴィークが日記に誇らしげに記録している。
第1曲 即興曲 魔女の狂宴(サバト)
この曲は、1つの同じ音形に支配されている。それは、2つの16分音符と1つの8分音符によるリズム型、鋭い不協和音を生み出す半音階的前打音のついた跳躍、弱拍のアクセントやsfという19世紀の典型的な「悪魔的」語法からなる。このパターンがやや単調とも思えるほどに全曲を通して繰り返されるのだが、その分変化を託された和声が絶妙な役割を果たしている。そしてそのタイトル通り、あわただしく走り去るテンポと相まって、荒々しい幽霊の踊りを連想させる。この作品は単独で1838年「魔女の舞踏」としても出版されている。
第2曲 ボレロ風カプリス
冒頭から同音反復のモチーフが、プレストで駆け巡る。クララのヴィルトゥオージティを示すのに、うってつけの曲だったことだろう。中間部は対照的に、穏やかに歌う。流れの中から浮かび上がる美しい息の長い旋律は、夢見る乙女のようなクララのもう一つの面を垣間見させる。再現部の後、ホ短調からホ長調に転調したコーダで、これまでのモチーフを回想しffの和音で華やかに幕を下ろす。
第3曲 ロマンス
3部形式。まず始めのロ長調、美しい旋律が非常に表現豊かに歌い上げられる。それを支える半音階を駆使した斬新な和音進行が、色彩感を与えている。ニ長調に転調した中間部は、とても情熱的。ターンやトリル、アルペッジョといった装飾音がますますテンションを高める。しかし急激に陰りを見せ、再現部は同主短調のロ短調で現れる。冒頭とはうってかわって悲しみにあふれ、寂しげな雰囲気の中、ppで静かに終わる。
第4曲 幻想的情景―亡霊たちの踊り
全体を通して快活なこの曲は、曲想がころころと変わる印象を受けるが、大雑把に図式化するとABCDC’B’A’というシンメトリー構造をしている。Aの中間部やDに見られる半音階的前打音や大きな音程の跳躍をはじめ、リズミカルに鍵盤上を駆け巡る様は、第1曲同様「亡霊」という超自然的な表現に役立っていて、一種のチクルスにもなっている。
興味深いのは、Aの冒頭減5度のモチーフと、Bの鼓動するリズムが特徴的な左手の旋律だ。これらをローベルトが、Aを完全5度に変えBと組み合わせることで、彼のクララに捧げた《ピアノ・ソナタ第1番》の第1楽章に用いているのだ。彼はクララへの手紙の中で、このソナタは「ぼくの心から君の心への呼びかけであり、君の旋律があらゆる形をとって出現する曲」と書き送った。結婚前の若き2人の音楽家の音楽的関係が、よく表れている例と言えよう。
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