ブラームス:4つのバラード
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ブラームス:4つのバラード | 4 Balladen Op.10 | 作曲年: 1854年 出版年: 1854年 初版出版地/出版社: Breitkopf & Härtel |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例![]() |
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1 | 第1番 ニ短調「エドワード」 d moll | 6分00秒 | No Image |
2 | 第2番 ニ長調 D dur | 5分30秒 | No Image |
3 | 第3番 ロ短調 h moll | 4分00秒 | No Image |
4 | 第4番 ロ長調 H dur | 10分00秒 | No Image |
作品解説
1853年、ブラームスは、デュッセルドルフのシューマン家を訪ねた。そして、作曲家、またピアノの名手として、シューマン夫妻が最も信頼する音楽家となった。これらの4曲は、作品9《シューマンの主題による変奏曲》とほぼ並行して、1854年夏に、デュッセルドルフで書き上げられた。そして、1856年に出版され、友人でピアニストのユリウス・オットー・グリムに捧げられている。
ブラームスとしては、作品4につづく小品。ブラームスは、作品5でピアノ独奏用のソナタから決定的にはなれ、ピアノ独奏曲では変奏曲と小品の世界に向かったのである。
これらの4曲はバラードと題されているが、「バラード」としての明確な叙事的、物語的な性格をもっているのといえるのは、第1番のみであろう。他は、多分に純音楽的なアプローチがとられ、かなり力感的な曲となっている。3部形式にしたがっており、規模はショパンのものほど大きくない。
これらの4曲は、それぞれ独立させて演奏されることもあるが、調性的な関連があることから、まとめて演奏されることも多い。
第1番:アンダンテ、ニ短調、四分の四拍子
バラードとしての性格が最もつよく、全曲中、最も演奏される機会が多い。劇的な迫力、緊張感をもった曲。
この曲はドイツロマン派の詩人ヘルダーの「諸民族の声」のなかの「スコットランドのバラード〈エドワード〉」によった作品であり、「エドワード・バラード」とも呼ばれる。
この詩は、父を殺したことを静かに問い詰める母、気持ちを荒立て、また罪の意識にさいなまれる息子エドワードの対話からなっている。
この詩に対しては、歌曲作曲家のレーヴェが歌曲(作品1の1)を書いており、ブラームスも、1877年にアルトとテノールのための2重唱曲(作品75の1)を作曲している。
第2番:アンダンテ、ニ長調、四分の四拍子、三部形式。ロマンスの曲想に近い、優しい雰囲気をもつ。はじめのFis-A-Fisの進行はブラームスのモットー(Frei aber froh “自由にしかし喜ばしく”)の各語のイニシャルにもとづく。このモットーはヨアヒムのモットーF-A-E(Frei aber einsam“自由にしかし孤独に”)から思いついたものであり、のちにもしばしばブラームスの作品の中で用いられる。
第3番:アレグロ、ロ短調、八分の六拍子、「間奏曲(インテルメッツォ)」と記されているが、ここでは晩年の間奏曲の性格がそれほど強調されているわけではなく、4つのバラードの中で間奏曲的な位置を占めるものである。スケルツォ的な性格をもつ。
第4番:アンダンテ・コン・モート、ロ長調、四分の三拍子。
シューマンからの影響があらわれており、間奏曲風な味わいをもつ作品。「親しみのある感情をもって。しかし旋律をあまり強調しないように」との指示がある。ブラームスの特徴となっている“癒されぬ郷愁”が感じられる。
バラード (ブラームス)
(4つのバラード から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/05 05:02 UTC 版)
『4つのバラード』(Vier Balladen)作品10は、ヨハネス・ブラームス初期のピアノ曲集。ショパンやリストの劇的なバラードと異なり、叙情的な小品集となっている。1854年作曲の日付を持ち、親友で音楽家仲間のユリウス・オットー・グリムに献呈された。この曲集の作曲とほぼ同時期に、ブラームスの創作活動の船出を後押ししていた有名な作曲家ロベルト・シューマンの妻、クララ・シューマンへのブラームスの生涯にわたる愛が始まっている。
4曲のバラードは、同主調になっている2曲が2組組み合わされた構成となっている。
- ニ短調(アンダンテ) Andante
- ニ長調(アンダンテ) Andante
- 「間奏曲」 ロ短調(アレグロ)Intermezzo. Allegro
- ロ長調(アンダンテ・コン・モート) Andante con moto
第1曲は、ヨハン・ゴットフリート・ヘルダーの編纂した詩集『諸国民の声 "Stimmen der Völker" 』所収のスコットランドの民族詩「エドワード」に霊感を受けている。空虚5度やオクターヴ、単純な三和音の多用は、おそらく神話的な過去の雰囲気を与える効果が意図されており、ブラームスのケルト的様式(オシアン様式)の作品の好例の一つとなっている。第二曲にはシューマンのクライスレリアーナ終曲へのオマージュが見られる。
ブラームスは、『6つの小品集』作品118の第3曲において、無言バラード様式を再び用いている。また二重唱曲『バラードとロマンス』作品75のバラードの1曲は、作品10-1の「エドワード」と同じ詩に曲付けされている。
関連項目
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