りょうかい‐きせん〔リヤウカイ‐〕【領海基線】
読み方:りょうかいきせん
⇒基線3
領海基線
【英】: baselines of the territorial sea
領海の幅を測定する根拠となる基線をいう。 通常の基線(normal baseline)と直線基線(straight baseline)の 2 種類がある。通常の基線は沿岸国が公認する大縮尺海図に記載されている海岸の低潮線である。環礁の場合は海側の低潮線をとる。もし海岸線が著しく曲折しているか、または海岸に沿って至近距離に一連の島がある場所には、適当な地点を結ぶ直線を基線とすることができる。直線基線の場合、海岸の一般的方向から著しく離れて引いてはならず、またその内側は内水としての規制を受けるから、陸地と十分密接な関連を持たなければならない。また高潮時に水面下に没する低潮高地との間に直線基線を引いてはならないが、灯台が建設されているなど国際的に承認を受けた慣行に基づく場合はこのかぎりではない。なお、低潮高地が本土または島からの領海幅の外に位置するときは領海を持てないが、一部または全部が領海幅を超えない距離にあるときは、その低潮線は領海基線として用いることができる。直線基線には特別の場合として、河口直線、湾口閉鎖線および群島基線がある。群島基線はインドネシアのような群島国家において、群島の最も外側の島および常に水面上にある礁の最も外側の点を結ぶ直線として引くことができる。ただし、その場合基線の内側に主要な島を含み、また基線の内側の水域と環礁を含む陸地のそれぞれの面積の比が 1 対 1 から 9 対 1 の間にあることが条件となる。さらに 1 本の基線の長さは 100 海里を超えてはならないが、基線総数の 3 %までは最大限 125 海里まで延長することが許される。(→低潮線、内水、群島水域) |

基線 (海)
(領海基線 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/17 19:52 UTC 版)
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基線(きせん)は、領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚の幅を測定するための起算点となる線である[1][2][3]。領海基線(りょうかいきせん)と言われることもある[4]。
各海域の幅算出
国連海洋法条約によると、海岸を有する国家は、陸地側から見て基線から沖合に12海里までを自国の領海[5]、基線から24海里までを自国の接続水域[6]、基線から200海里までを自国の排他的経済水域[7]、とそれぞれ宣言することができる。また同条約は、領海をこえて領土の自然の延長をたどって大陸棚縁辺部の外縁に至るまでの海底部分をその国の大陸棚として宣言できるとしたが、大陸棚縁辺部が基線から200海里の距離までに延びていない場合には200海里までの海底部分をその国の大陸棚として宣言できるとし、逆に大陸棚縁辺部が200海里を超えている場合には基線から350海里か、または2500メートルの等深線から100海里までをその国の大陸棚の限界線とした[8]。ただし2カ国以上の国が海を隔てて向かい合っているか、または同一の海域に面して隣り合っているために、たがいが主張する排他的経済水域や大陸棚などが重なり合う場合はこの限りではない[9][10]。群島基線の場合を除き、基線より陸地側の水域は内水となる[11][12]。基線は線の引き方に応じて通常基線、直線基線、群島基線に分けられる[1]。
通常基線
通常基線は大縮尺海図上の低潮線に沿って線を引く方式であり[1][4]、この通常基線が最も古くより用いられてきた領海基線の引き方である[3]。一般に海岸線が直線に近く単純な形状をしている場合に採用されることが多く、海岸線に平行に線を引く形で用いられる[13]。
直線基線
海岸が複雑に湾入していたり本土から至近距離に島が散在する場合には、直線基線方式が採用される[2][3]。直線基線を引くことによって通常基線を引いた場合よりもより広い内水・領海を確保しようとしたノルウェーによる措置の適法性が争われた1951年のノルウェー漁業事件国際司法裁判所判決では、それまで通常基線方式の採用が慣例として認められてきたことを確認しながらも、基線が海岸線の一般的方向から逸脱していないことや、直線基線方式の採用によって内水として取り込まれる水域と陸地部分との間に経済的要因などを考慮して密接な関連があることを条件として、直線基線方式の採用を認めた[2][3][14]。このノルウェー漁業事件で示された要件は後に領海条約(1958年)第4条や国連海洋法条約(1982年)第7条に取り入れられ、直線基線方式は一般的に承認されるところとなった[2][3][14][15]。
群島基線
群島基線は、群島国にのみ認められた基線の引き方である[12]。国連海洋法条約によると、群島国とは全体が群島からなる国家のことで[16][17]、群島の最も外側の島の点を結んだ直線の内側の水域の面積と陸地側の面積の比が1:1〜9:1の間でなければならない[12]。そして最も外側の島の点を結んだ直線が群島国の群島基線であり、群島基線で囲まれた水域は群島水域となる[12][18][19]。水域と陸地の面積の比の他に、国連海洋法条約は群島基線が群島の輪郭の一般的方向から外れてはならないことも条件としている[17]。群島の外側を結んだ直線であることから、これを直線基線とする場合もある[18][19]。こうした条件を満たす群島国として具体的にはフィリピン、インドネシア、フィジー、バハマ、パプア・ニューギニアなどが挙げられる[16]。
出典
- ^ a b c 筒井(2002)、60頁。
- ^ a b c d 山本(2003)、365頁。
- ^ a b c d e 杉原(2008)、125頁。
- ^ a b 小寺(2006)、254頁。
- ^ 筒井(2002)、340頁。
- ^ 筒井(2002)、213頁。
- ^ 筒井(2002)、279-280頁。
- ^ 筒井(2002)、229-230頁。
- ^ 山本(2003)、407-414頁。
- ^ 杉原(2008)、154-156頁。
- ^ 筒井(2002)、260頁。
- ^ a b c d 筒井(2002)、76-77頁。
- ^ 山本(2003)、364頁。
- ^ a b 松井(2009)、156-160頁。
- ^ 小寺(2006)、255頁。
- ^ a b 筒井(2002)、77頁。
- ^ a b 山本(2003)、378頁。
- ^ a b 杉原(2008)、133頁。
- ^ a b 小寺(2006)、258頁。
参考文献
- 小寺彰、岩沢雄司、森田章夫『講義国際法』有斐閣、2006年。ISBN 4-641-04620-4。
- 杉原高嶺、水上千之、臼杵知史、吉井淳、加藤信行、高田映『現代国際法講義』有斐閣、2008年。 ISBN 978-4-641-04640-5。
- 筒井若水『国際法辞典』有斐閣、2002年。 ISBN 4-641-00012-3。
- 松井芳郎『判例国際法』東信堂、2009年。 ISBN 978-4-88713-675-5。
- 山本草二『国際法【新版】』有斐閣、2003年。 ISBN 4-641-04593-3。
関連項目
- 海洋の法的区分
- 国境#海上の国境
外部リンク
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領海基線と同じ種類の言葉
- 領海基線のページへのリンク