電子的メッセージの保管
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/08/04 16:12 UTC 版)
「電子情報開示」の記事における「電子的メッセージの保管」の解説
証拠の提出が、データにアクセスできないなどの理由で、遅れたり不可能になったりすることが少なからずある。バックアップのテープが見つからなかったり、その内容が破棄されたり上書きされているような場合である。このような状況が重大な結末につながったのが、ズブレイク対UBSウォーバーグ(Zubulake vs. UBS Warburg LLC)事件である。この訴訟においては、原告は一貫して、彼女の主張を裏付けるのに必要な証拠がUBSのコンピュータシステムに保存されていると主張していた。UBSは、提出を求められた電子メールを発見できず、また、一部のメールはすでに破棄されていた。そこで裁判所はそのようなメールが存在していた可能性が強いと判断した。裁判所によれば、UBSの法務部が電子メールを含む情報開示の対象となりうる証拠については保存しておくようにとの指示があったことは認められるものの、その指示の対象となる者は必ずしもそれに従っていなかった。こういった判断のもと、裁判所はUBSに対して厳しい制裁を科した。 連邦最高裁判所は、2006年に連邦民事訴訟規則を改正し、この中で史上初めて、電子メールやIMのチャット記録も、訴訟に関係があれば保存して提出しなければならない電子的記録の範囲内にあるものとして明確に例示された。2005年から2007年にかけて、IMはビジネスにおける通信手段としてにわかに台頭し(IMのビジネスでの使用についての項参照)、電子メールと同様にビジネスの場で普遍的に利用されるようになってきた。これによって、企業は電子メールと同様にIMチャット記録も保存し検索できるような手段を採ることの検討を余儀なくされるにいたっている。 電子メールとIMの双方を電子的に保存することができれば、電子情報開示において電子メールやIMチャット記録を検索することは比較的単純な作業となる。情報保存システムの中には、メッセージやチャットに特有のコードを付することによってそれらが本物であることを担保することができるものがある。こういったシステムにより、元のメッセージを変更したり、メッセージを削除したり、権限のないものがメッセージにアクセスすることを防ぐことができる。 電子的記録の開示においてもうひとつ重要なことは、情報を適時に開示することである。2000年の3月に、アル・ゴア(Al Gore)副大統領(当時)の政治資金調達に対する連邦司法省の調査があった。この事件においては、ホワイトハウスの弁護士であったベス・ノートン(Beth Norton)が、625巻のバックアップテープから必要な情報を探し出すには6か月程度かかると発言した。これ以来、電子的記録の適時の開示を強制するにはどうしたらよいか議論されていたが、2006年の連邦民事訴訟規則の改正は、こういった議論と検討が実を結んだものである。 最新のメッセージ保管システムによって、弁護士やテクノロジーの専門家は、電子的メッセージを効果的に保存し、適時に検索することができるようになっている。
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