関連する用法と術語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 15:47 UTC 版)
以上述べた主要なもののほかに、「コナトゥス」のいくつかの使用が数百年の間に様々な哲学者によって定式化されてきた。コナトゥスに関係して、多かれ少なかれ似たような意味と用法を持ついくつかの重要な術語・概念が存在する。ジャンバッティスタ・ヴィーコ(1668年 - 1744年)は「コナトゥス」を人間社会の活動の本質と定義した。さらに、より伝統的には、物活論的な意味で、自然全体に充満する運動を作り出す力と定義した近代科学が始まってから百年近く後に、ヴィーコはネオプラトニズムに触発されて、慣性の原理や新しい物理学の法則を否定した。彼にとって、自然は、支配的な見方として原子や、デカルト的な見方として延長から出来上がっているのではなく、神によってもたらされた「コナトゥス」によって励起される「形而上学的な点」から出来上がっているものであった。 アルトゥール・ショーペンハウアー(1788年 - 1860年)はホッブズの「コナトゥス」のそれと明らかに似通っている原理を含む哲学を築いた。その定理は「Wille zum Leben」、つまり「生への意志」といい、有機体の自己保存の本能に具体的に現れているような現象を表す。しかしながらショーペンハウアーは、生への意志は時間的に縛られずに存続すると述べることでこれを定義した。フリードリヒ・ニーチェ(1844年 - 1900年)は早くからショーペンハウアーの影響を受けた哲学者だが、ショーペンハウアーの生への意志の優位を否定して別の自己保存の説を発展させた。彼は自分のヴァージョンを「Wille zur Macht」つまり力への意志と呼んだ。 ジークムント・フロイト(1856年 - 1939年)は、スピノザの定式化した自己保存の体系としての「コナトゥス」の原理に強く依拠したが、公刊した作品の中でスピノザに言及することはなかった。同時期に、アンリ・ベルクソン(1859年 - 1941年)が「エラン・ヴィタール élan vital」、つまり「生命の衝動」という原理を発展させたが、それは有機体の進化の助けとなるものだと考えられた。この概念は、あらゆる生命の背後にある根本的な駆動力を示していて、スピノザその他の「コナトゥス」の原理を思い起こさせる。 マックス・シェーラーによれば、「衝動 Drang」という概念は哲学的人間学及び形而上学の中心的な要素である。この概念は彼の哲学的遍歴全体を通じて重要であり続けたが、彼の人生の後半、彼の主眼点が現象学から形而上学に移ってから発展させられたのみであった。ベルクソンの「エラン・ヴィタール」と同様に、「ドランク」(駆動もしくは衝動)はあらゆる生命のインペトゥスである。しかしながら、ベルクソンの生の形而上学の場合と違い、ドランクの特徴は、それが魂(「Geist」)の駆動力や動機付けをも与えることにある。ここで言う魂は全ての理論的な志向性を含んでいるが、心理学的な原理たる「エロス Eros」と同じだけ物質的な原理たる「Drang」なしには力を持ちえない。 文化人類学者のルイ・デュモン(1911年 - 1988年)はスピノザの『エチカ』IIIP3 に記された影響力の強い定義に基づいて作り上げられた「文化的コナトゥス」について述べている。この派生的な概念に基づいた原理は、あらゆる与えられた文化が「存続中は他の文化を支配するか他の文化の支配で苦しむかどちらかを我慢する傾向がある」と述べている。
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