鉛筆削り器の配布
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 06:13 UTC 版)
「刃物を持たない運動」の記事における「鉛筆削り器の配布」の解説
強力に推進された「刃物を持たない運動」の影響を受けて、鉛筆削り器のメーカーにはにわかに注文が殺到した。それまでの鉛筆削り器は高価でありながら耐久力が低く、安価なナイフが専ら使用されていたが、技術の改良と刃物追放運動の展開を受けて、教育委員会や小中学校からの1000台単位にも及ぶ注文、折しもクリスマスや年末年始の贈答用の商店からの注文が押し寄せ、各社では新規の注文受付を停止するほどの活況を示した。 千葉県下では文房具店などで鉛筆削り器の注文が殺到し、品切れとなる店舗も多数に上った。千葉市内のあるデパートでは前年には1日平均2台ほどしか売れなかったのが、「刃物を持たない運動」が始まった11月中旬から連日20台以上売れるようになり、12月24・25日にはクリスマスの贈り物にするためか、家族連れの客に120台ほど購入されたという。一方で市内のある金物店では、1ヶ月に30本ほど売れていた刃物が、10本程度しか売れなくなったとされる。 11月16日には、埼玉県加須市の加須小の4年生のあるクラスで、生徒が自主的に20円ずつ出し合って鉛筆削りを購入し、ナイフを学校に持ってこないことを取り決めたことが、28日に開かれた同小PTAの評議会の席上で報告されている。 また、11月29日までには、東京都の千代田区立西神田小学校に現れた50代ほどの男性が「お勉強に必要な鉛筆けずりを各学級に一台ずつお送りしますから、どうか危ない刃物やナイフの代りに使って下さい」との手紙を添えて14台の鉛筆削りを寄附するという出来事もあり、「一個千円以上もするのに困っていた」学校側は、早速各学級に備え付けている。 12月1日には、東京都荒川区の鉛筆シャープナー工業会の代表者6人が警視庁を訪れ、東京都防犯協会連合会に鉛筆削り1300個(自動式500個、手押式600個)を寄贈。連合会では都内の公立中学校へ配布することとした。 12月5日午後4時半頃には、東宝芸術座で『がしんたれ』に出演中の小中学生4人(中山千夏、土田早苗、日吉としやす、矢野重治)が警視庁の防犯課長のもとを訪れ、「舞台で刃物を使う場面がありますが、本当の生活ではこの運動に参加しています」として、出演料で買った鉛筆削り30台を寄附。警視庁では教育庁に依頼して分配するとされた。 12月12日までには、東京都の足立区役所及び教育委員会は、「刃物を持たない運動」に区を挙げて協力するためとして、予算140万円で鉛筆削り器を購入し、区内の全小中学校の全学級に一つずつ置くこととしたが、これは都内でも初めての試みであった。 長崎県佐世保市の九州時事新聞社では「刃物を持たない運動」の一環として「学校に鉛筆削り器を贈る募金運動」を提唱し、1961年(昭和36年)1月25日 - 3月末にかけて、市内のロータリークラブ、防犯組合連合会、PTA連合会などの協賛を得ながら運動を展開した。
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