辻大介による「右傾化」研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 01:01 UTC 版)
「ネット右翼」の記事における「辻大介による「右傾化」研究」の解説
辻大介は、2007年に20~44歳のネットユーザーを対象に行った調査で、(1) 韓国・中国のいずれに対しても「あまり」「まったく」親しみを感じないと回答、(2) 「首相や大臣のの靖国神社への公式参拝」、「憲法9条第1項改正」、「憲法9条第2項改正」、「小中学校の式典での国旗掲揚・国歌斉唱」「小中学校での愛国心教育」の5項目すべてに「賛成」「やや賛成」と回答、(3) この1年の間に、政治や社会の問題について「自分のホームページに、意見や考えを書きこんだ」「他の人のブログに、自分の意見や考えをコメントした」「電子掲示板やメーリングリスト等で議論に参加した」という3項目いずれかに、したことが「ある」と回答、という3条件にすべてあてはまるものを「ネット右翼」層とし、ネットユーザー全体の1%未満と推計した。 辻がネットユーザー998人を対象におこなった調査によれば、「ネット利用者全般というよりも特に2ちゃんねる利用が排外的ナショナリズムと関連しており、2ちゃんねるの利用はネット上の悪口や過激な書き込み、炎上に対して許容的な態度と有意に関連している」としている。また辻は、ブログや電子掲示板等で積極的に情報発信をおこなうネット利用者で『「韓国」「中国」いずれにも親しみを感じない』『靖国公式参拝・憲法改正等に賛成』『政治・社会問題についてネット上で書きこみや議論をした』の全てに該当する者をいわゆる「ネット右翼的」と操作的に定義した上で調査を行ったところ、ネット右翼的な層はネットの外でも署名・投書・募金や集会出席などの「リアル」な活動に積極的な傾向がみられた。このことから「“ネット右翼”はネット特有の現象というよりも“リアル”と地続きの現象であり、これまでは目につきにくかった“右翼”的な潜在層がネット上で可視化されたととらえるのが適当かもしれない」としている。 また、一般的な「右傾性」は愛国心やパトリオティックな意識と嫌韓・嫌中が必ずしも結びつかないというのが特徴である。政治的、文化的なナショナルプライドや愛国心といった「右傾性」に結び付く因子が高いほど韓国・中国に対する親しみが高くなり、移民に対する評価も肯定的であるという結果が出ている。これらの因子は、対人関係においても、他人への信頼の高さ、友人の多さ、孤独感の低さと結びついている。一般的な「右傾性」と比較すると、ネット右翼的な層は、近所付き合いをしている人数が少なく、一般的に他人を信頼せず、友人数は少なくはないが 対人関係での孤独感が高いという特徴がみられ、対外関係でも韓国・中国に対する親しみを感じず、移民に否定的で排外意識が高い(孤独感の高さが高いほど、排外意識が強く、また嫌韓・嫌中である傾向が強い、嫌中よりも嫌韓との相関性が強い)としている。ネット右翼的な層は右傾性に関わる諸因子・諸指標の相関構造の中で特異な地位にあって、一般的な「右傾性」を代表すると見なし難く、愛国と嫌韓・嫌中が一体化しているという特徴があると 辻は述べている。この調査における比率は『「韓国」「中国」いずれにも親しみを感じない』が36.8%、『靖国公式参拝・憲法改正等に賛成』が6.4%、『政治・社会問題についてネット上で書きこみや議論をした』が15.2%であり、全てに該当する「ネット右翼的な層」は1.3%であり、サンプルがネットのヘビーユーザーが多いという偏りがあることを考えると一般的なネット利用者における比率は1%を下回るとしている。
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