警察における狙撃手
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 14:42 UTC 版)
詳細は「人質救出作戦」を参照 警察行動での狙撃ではほとんどの場合、絶えずその発砲の適法性を入念に検証される。特に犯人の間近に人質が存在する場合、その保護のため目標の確実な無力化が求められる。犯人射殺に至るか行動不能に留めるかは状況によって異なるが、警察活動における狙撃には「命を救うために命を奪うことを覚悟すべし」という格言もある。確実を期するために可能な限り目標に接近して行われ、複数の射手が同時に行動する場合もある。射界を広く取ることで、全体の状況を監視する役目を負うこともあるため通常は高台や周囲を見渡せる場所などへ配置される。また、ヘリコプターに搭乗して上空から狙撃を行うこともある。 警察の狙撃手は軍隊の狙撃手とはその任務や戦術を含めて多くの点で異なる。警察の狙撃手は警察活動の一環として、通常は比較的短期の任務を行うことが多い。警察が狙撃手を用いるのは主に人質事件の場合である。これらの点で、大規模な部隊の一員として戦場で交戦する軍隊の狙撃手とは異なる。SWATなどの特殊部隊の一員として、警察の狙撃手は交渉人や近接戦闘訓練を受けた突入部隊と共に配備される。警察官として、彼らは生命に対する直接的な脅威がある場合の最後の手段としてのみ射撃するよう訓練されている。警察の狙撃手は通常は軍隊の狙撃手に比べて近距離で射撃することが多く、一般的に100メートル以内である。警察の狙撃手は、人質を盾にして顔が半分しか見えていないような犯人の脳幹を正確に撃ち抜いて即死させなければならず、許容誤差も2センチメートル程度しか認められていないため、軍隊の狙撃手に比べて精度の高い射撃を行い、一発で射殺することが求められる。したがって、警察の狙撃手は100メートルで2センチメートルの精度を要求される。 狙撃装備を持たない警察部隊はSWATなどの特殊部隊に頼ることがある。そうした特殊部隊には専門の狙撃手がいる場合もある。いくつかの警察の狙撃部隊は、その運用当初、軍隊の援助を受けて始まったものもある。警察の狙撃手は、イベント警備の際に、たとえば高層ビルなどの有利な位置に配置されることもある。 ある事件では、米国オハイオ州コロンバス警察部SWATの狙撃手マイク・プラムが、自殺志願者の男が手に持っていた拳銃を狙撃して打ち落とし、彼を傷つけることもなく、自殺を防いだ。 警察における狙撃手の専門的な訓練の必要性は、1972年のミュンヘンオリンピック事件において明らかになった。ドイツ警察は、この事件の最終局面である空港での立て籠もりの期間中、専門的な警察官や装備を配備することができず、結果的にイスラエル人の人質全員が殺害された。ドイツ警察には通常の警察官しかいなかった。一方、1972年時点でドイツ軍には狙撃手がいたが、ドイツ陸軍の狙撃手をこの事件で用いることはドイツ憲法が国内事件に軍を用いることを明示的に禁止しているため不可能であった。この事件に対する取り組みとして、後に国境警備隊の隷下にテロ対策特殊部隊GSG-9が設立されることになる。
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