諸藩で起きたお家騒動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/13 23:48 UTC 版)
江戸時代の庶民の目から見て、遥か彼方のまるで雲の上のような異質な環境、すなわち御所(皇居)や殿中(江戸城中)そして御殿(藩庁や江戸藩邸)などを舞台とする芝居は、たとえそれが江戸時代になってからの出来事であっても、つい数か月前に起きたばかりの事件であっても、それらを一律に時代物として扱った。 その理由は二つある。まず演出上、こうした場所で登場人物が見せる動作や交す言葉には、庶民の仕種や会話との鮮明な違いが求められたことがあげられる。そうした演出は極めて大仰で様式的なものにならざるを得ず、その結果内容も自然と時代がかったものになったのである。 いま一つの理由は、こうした環境のもとで繰り広げられる出来事のうち、庶民の関心事といえばそれはもっぱら「国崩し」(国家転覆)や「お家騒動」(お家乗っ取り)に他ならなかったことである。そもそもお家騒動というものは善玉と悪玉があってはじめて物語が成り立つが、かといってその善悪の内容を詳細を描くと、ここでもまた一つ間違えば御政道の批判と受け止められかねない余地があった。したがってこうした内容の芝居を実録風に仕立て上げることは、江戸時代を通じて固く厳しく禁じられていた。そこでこうした題材の芝居もすべて江戸時代より前の時代の「世界」に仮託して描いたのである。これらの演目は時代物の中でも特に御家物(おいえもの)と呼ばれる。 演目下敷きとなった出来事歴史的時代区分系統物語の世界仮託した時代『黒白論織分博多』 寛永9年に福岡藩で起きた黒田騒動 江戸時代前期 御家物 『太平記』の世界 『太平記』の時代 『伽羅先代萩』 寛文11年に仙台藩で起きた伊達騒動 江戸時代前期 御家物 『先代萩』の世界 『太平記』の時代 『仮名手本忠臣蔵』 浅野長矩の殿中刃傷と赤穂浪士の吉良邸討入 江戸時代中期 御家物 『忠臣蔵』の世界 『太平記』の時代 『加々見山旧錦絵』 延享5年前後に加賀藩で起きた加賀騒動 江戸時代中期 御家物 『鏡山物』の世界 『太平記』の時代 『小笠原諸礼忠孝』 享和3年に小倉藩で起きた小笠原騒動 江戸時代後期 御家物 『太平記』の世界 『太平記』の時代
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