被害者保護の施策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 14:18 UTC 版)
「JT女性社員逆恨み殺人事件」の記事における「被害者保護の施策」の解説
1997年に警察庁が調査したところ、被害者へのお礼参り目的や、被害者の恐怖感に乗じて同一人物を襲う「再被害事件」は、過去10年間に38件発生し、41人が被害を受けていたことが判明している。それらの報復事件の加害者46人は、全員が男で、被害者は男性27人・女性14人だった。加害者が常習犯罪者(前科・前歴5回以上)や、暴力団関係者に該当する事件の割合は、それぞれ全事件の90%弱、65%(25件)に上っていた。動機のうち約57%(22件)は本事件と同じく、逮捕されたことへの報復で、「犯行の対象として容易」という理由も約28%(11件)に上った。 事件後、「もしAがMの出所を知らされていれば殺されることはなかったのではないか」という声が上がった。また、事件を契機に「過去の犯罪被害者に対し、加害者の出所などに関する情報を連絡する制度を充実させてもよいのではないか」という声が上がり始め、事件を重視した警察庁は同年9月29日、各都道府県警察に対し、所轄警察署が殺人・性被害などを摘発した場合、報復犯罪が発生する恐れがある場合は、その事件を各警察本部に登録し、被害者への警戒活動を行うとともに、必要な場合は事前に出所時期を通知するという方針を支持した。これは、警察庁が逆恨み犯罪に対し、初めて打ち出した組織的対策だった。また、検察庁は1999年4月から、事件の処分結果を被害者に連絡する「被害者通知制度」を開始したが、この時点ではまだ出所情報の提供はされなかった。 法務省も同様の制度について検討を進め、2001年(平成13年)3月からは、各地方検察庁で、事件の被害者や目撃者に対し、加害者が刑務所を出所したことを通知する制度を導入することとなった。同制度は、出所情報の通知を希望する被害者からの申請を前提に、検察庁が法務省の通達に従い、刑務所・保護観察所の情報を得て被害者に通知するもので、加害者の実刑判決確定後、希望する事件の被害者・目撃者に対し、懲役刑などの終了予定時期(年月)などを通知するというものだった。しかし、この段階では提供する情報は出所した事実のみに限定され、再被害の可能性が高い場合を除き、出所時期の事前通知や、加害者の出所後の住所の通知はされない方針だった。また、受刑者ではない少年院収容者の退院も適用の対象外とされた。 その後、法務省は同年7月31日に同制度を拡充。同年10月1日以降、犯罪動機・加害者の言動などから、検察官が「被害者との接触を避けることが必要」と判断した場合、被害者本人やその親族だけでなく、事件の目撃者・弁護士に対しても、必要に応じて加害者の出所予定時期・居住地をそれぞれ事前に通知する制度(出所情報通知制度)に改めることを決めた。警察庁も同日、出所情報に基づき、警察本部が組織的に再被害発生を防止する対策を取る「再被害防止要綱」を制定した。同制度の利用件数は2002年(平成14年)時点で125件だったが、2003年(平成15年)時点では250件と利用が倍増した。
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