被告人小林薫の主張
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 04:42 UTC 版)
「奈良小1女児殺害事件」の記事における「被告人小林薫の主張」の解説
公判で被告人小林は捜査段階から一転し、「強制わいせつの対象とする女児の物色を決意した時期は犯行現場に到着してからで、誘拐した時点では姦淫する意図はなかった」「殺意が発生した時期はAが風呂から出ようとした時だ。殺害後、Aの遺体の写真を撮る際に血液をふき取ったのは、Aの両親に分かるようにしたわけではない。死体も人目に付く場所に遺棄しようと考えたわけではない」と供述した。また、精神鑑定の途中からは鑑定人に対し「被害者Aに睡眠薬(ハルシオン)を飲ませていたずらしようとしたが、Aは風呂の中で溺死してしまった」と供述し、殺害行為も否定した。 しかし、奈良地裁 (2006) は「被告人は逮捕直後から罪を認め、公判でも起訴事実自体は認めているにも拘らず、合理的な理由もなく捜査段階における供述を変遷させ、自分にとって不利な情状事実を否定している。被害者Aの遺体を解剖しても、その結果ではハルシオンについては言及されておらず、解剖を担当した医師による『遺体の顔面などに現れていた溢血点は、Aが死亡時に水を吸引してかなり苦しみ、気張った状態になったことで出現したと考えられる』とする所見などに照らして不自然であり、信用し難い。よって被告人の『自分は被害者Aを殺害しておらず、Aはハルシオンを飲ませたら風呂で溺死した』という供述は、自身の刑事責任を減免するための虚偽と言わざるを得ない」として小林の主張を退けた。また、小林はこの鑑定人に対し述べた主張を公判でしなかった理由について「自分の罪を軽くするためではない」などと弁解したが、奈良地裁 (2006) は「その理由について積極的に説明するよう求めても答えようとしておらず、そのような事情に照らせば信用し難い供述だ。むしろ被告人は『自分の手紙に基づいて掲載された雑誌の記事(鑑定人に対し述べた供述と同様の内容)に誤りはない』などと供述しており、小林が鑑定人に対し『被害者Aは殺していない』という虚偽の供述をしていたこと、それに関する公判での供述状況などは、被告人の反省状況を判断する上で不利益に評価せざるを得ない」と結論付けている。 小林は逮捕後に殺害を認めた理由について、後に月刊誌『創』へ寄せた手記で「『もう生きていても仕方ないので、死刑で早く死んでしまいたい』と思ったからだ。弁護人や精神鑑定の担当医師にも同様に『被害者Aは睡眠薬を飲ませたら風呂で溺死した』という話をしたが、当時は『罪を認めた上で情状酌量を得よう』という法廷戦術により情状鑑定をしている最中で、すべてが振り出しに戻るような新証言は誰もまともに取り上げてくれなかった。このために失望し、『検察官が主張した(判決で認定された)殺人を自分は犯していないが、もう死にたいから法廷では一切争わないようにしよう』と思った」と主張している。また、同誌記事および同記事を引用した検察官からの被告人質問の際には、「裁判官・検察官だけでなく、被告人(自分)の唯一の味方であるはずの弁護人2名でさえ、警察供述調書を鵜呑みにして真偽を検証していない。人を死刑という厳罰に処する裁判としてはあまりにもお粗末だ」という反発心から、「この裁判は茶番だ」と発言した。
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