薬理学の不十分な知識
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 00:06 UTC 版)
同時に不十分な知識により患者は危険に晒される。 英国精神薬理学会(British Association for Psychopharmacology)関連の指導者層は、2011年にも、大抵の医師が精神薬理学について十分ではないかもしれない修習課程や独習または実地によっており、危険性/利益に基づき向精神薬を利用するためには、過剰投与と多剤投与、不十分なモニタなどに改善の余地があることを指摘している。 過剰投与と多剤投与に関しては、同じ種類の薬を2つ以上出し、それぞれが限度用量まで出されれば過量服薬になっていることが理解されていないということである。 2004年の日本精神神経学会でも、抗精神病薬の単剤療法が推奨されることについて言及している。大量の抗精神病薬を投与し副作用が出るために副作用を抑える目的で、さらに抗パーキンソン病薬が用いられるような薬剤の投与方法は、日本において適正な投与方法が模索される以前の方法であり不適切である。ビペリデン(アキネトン、タスモリン)の添付文書には、このような副作用には無効で場合により悪化する旨が記載されている。 2008年には、過量服薬の危険性がある境界性人格障害のガイドラインが公開され、有効性が示されないベンゾジアゼピン系の薬剤の使用を避け処方するとしても数日から2週間程度とし、全体的にも抗うつ薬と抗精神病薬といった組み合わせは支持できず単剤療法を中心とすることが推奨されている。2009年のNICEによる同疾患のガイドラインは、自殺企図や自殺念慮の強い傾向がある場合には薬物療法を用いず、もし用いるとしても相対的に安全な薬で1週間をめどにし、効果がなければ中止することを推奨している。 2009年には、日本うつ病学会が大量処方を避けるという一般的な指摘行い、2012年にも単剤療法を原則とする旨のガイドラインを出している。 2010年には、精神科領域の4学会が合同で、しばしば過量服薬の原因になる医師による合理性のない不適切な多剤大量処方に対して注意喚起を行った。さらに2012年には、医薬品医療機器総合機構は、気分安定薬により重篤な副作用が生じているため過量に投薬せず、監視を行う旨の注意喚起を行っている。 2012年にも日本うつ病学会の診療ガイドラインは、乱用の可能性があり、睡眠薬として自殺企図時に危険なバルビツール酸系薬の処方を避け、その他においても漫然と処方すべきではないとしている。バルビツール酸系薬は、1950から1960年にかけて危険性が指摘されほかの薬剤にとってかわられた歴史があるのに関わらず、日本において2010年にも不審死からのバルビツール酸系のベゲタミンの成分の検出が増加している。2013年には、厚生労働科学研究と日本睡眠学会によるガイドラインが公開され、睡眠薬として危険性の高いバルビツール酸系や多剤併用や漫然とした長期処方は避けることが推奨されている。 2013年7月には、認知症の特に周辺症状に対して、原則的にこれらの薬は用いないとするガイドラインが公開された。 2013年10月には、入院患者に多い証拠がないのにもかかわらず3剤以上用いられている抗精神病薬多剤を減薬するためのガイドラインが公開された。
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