菊人形とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 文化 > 工芸 > 人形 > 菊人形の意味・解説 

きく‐にんぎょう〔‐ニンギヤウ〕【菊人形】

読み方:きくにんぎょう

菊花衣装部分こしらえた人形また、その見世物。主に歌舞伎当たり狂言題材をとる。《 秋》「夜風たつ—のからにしき蛇笏


菊人形

読み方:キクニンギョウ(kikuningyou)

キク細工した人形人形衣装キクの花でする

季節

分類 人事


菊人形

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/09 10:26 UTC 版)

南陽の菊まつり(2005年)

菊人形(きくにんぎょう)は、細工の一種で、菊の花や葉を細工して人形の衣装としたもの。また、その人形を展示する興行

概要

菊人形の多くは、頭や手足以外の部分が菊の花でできた等身大の人形である。江戸時代後期、花卉業が盛んであった江戸染井ソメイヨシノを産出)や巣鴨の周辺で流行した菊細工が起源である[1]。現代では、菊人形の題材はその年に日本放送協会(NHK)で放送されている大河ドラマが採用されることが多い[1]

歴史

文化年間に江戸で起こった造り菊=菊細工では、当初船や鶴といった形を作るのが流行したが、天保末頃に人形に形作る細工の流行が起こったと考えられている[1]

安政頃、団子坂の植木業「植梅」が歌舞伎を題材にした菊人形を手がけて評判となり、近隣の園芸業者が競うように菊人形を手がけ、盛んに行われるようになった[1]

団子坂の菊人形」 菊人形は、人気役者や花鳥などの人形の衣装を、菊の花や葉を組み合わせて作った細工物で、江戸後期に見世物として始まった。明治9年(1876)から木戸銭(入場料)を取って正式に興行化し、東京の秋の名物として繁栄した。20年代から30年代(1887 - 1906)が最盛期で、植惣、種半、植梅、植重の四大園が毎年出し物を競い合い、歌舞伎や最新のニュースねたを、廻り舞台や全景装置を用いて見せた。生人形師による迫真の頭も評判で、根津裏門前より駒込の狭い団子坂には群集が殺到した。人形の衣装に使用する小菊の絵あり。 — 清水晴風著『東京名物百人一首』明治40年8月「団子坂の菊人形」より抜粋[2]

江戸時代後期、流行していた生人形師のうち安本亀八山本福松、大柴徳次郎などが人形の頭部・手足を担当し、後世に実物が残る。1909年(明治42年)より本所両国国技館で斬新な菊人形興行が行われるようになると、明治末年までには団子坂は興行地としては衰退する(1984年より再開、後述)[1]

その後、見世物興行が全国的に流行し、名古屋市大須奥村伊三郎が経営した奥村黄花園、それを引き継いだ高松の乃村工藝社[1]、そして大阪の浅野菊楽園が、遊園地などを中心として全国興行を牽引する。戦前は両国国技館や大阪・新世界ルナパークのものが、そして戦後は東急多摩川園、京成谷津遊園のものが有名であった[1]

近年には福島県二本松市福井県越前市(旧武生市)、大阪府枚方市ひらかたパークでの興行が日本三大菊人形と呼ばれるに至る。しかしレジャーの様式の変化や、少子化による遊園地の経営状態の悪化などにより枚方市の菊人形が2005年(平成17年)限りで中止されるなど、近年の開催は減少傾向である。それでも従来どおり開催されている地は多く、日本各地で伝統を保っている。

製作方法

菊人形は、専用の菊を栽培する「園芸師」、人形の制作をおこなう「人形師」、人形に菊を着付ける「菊師」の分業で、以下のような流れで制作される[3][4]

  • 菊は人形に着付ける際に作業しやすいように茎が細くて長く、しなやかで、折れにくい「人形菊」と呼ばれる小菊が用いられる。栽培は1年がかりでおこなわれ、菊人形の展示の期間に開花を合わせるため、人工照明も使用し、日照時間を調整する工夫も行われる。
  • 下絵をもとに角材を使用し、人形の骨格を形作る。ついで、衣装の下地となる胴殻(どうがら)を作る、竹ひごの芯にを糸で巻き付け固定した巻藁(まきわら)を使用し、衣装の立体的な形状を作りながら、角材の骨格に取付けていく。
  • 胴殻に菊を着付けていく、これを菊付けという。切り花ではなく、根付きのまま数株ずつまとめ、水苔で根巻きし、い草や藁でしばった束を用いる。胴殻の中に根の部分を固定し、花の部分をい草や紙紐で表面に止めていく。一体に付き小菊が120~150株が必要という。
  • 人物の年齢や身分、その場面の感情などを考慮し、首(かしら)を制作、手足、小道具(鎧、扇子、帯など)を胴殻に取り付ける。
  • 完成した菊人形は、1日1回根巻きに水やりし、10日から2週間程度で菊の付け替えをおこなう。

各地の菊人形展

たけふ菊人形(2014年)

このほか北見市弘前城吉野川市などで開催されている。

過去
  • ひらかた大菊人形 - 大阪府枚方市ひらかたパークにおいて開催された。大掛かりなイベントとしては2005年を最後に96年の歴史に幕を下ろしたが、その後も毎年秋に、市民ボランティアが作成した菊人形が数体ひらかたパーク内に飾られている。2010年秋に京阪電車開業100周年記念として復活開催された。1992年(平成4年)に廃業した大阪府枚方市の小北酒造場は、ひらかた大菊人形に因んで銘柄「須賀天杯菊人形」を製造していた。

菊人形が登場する作品

脚注

  1. ^ a b c d e f g 文京ふるさと歴史館だより 第9号(平成14年4月1日) - pp.2-3「菊人形の来し方・行く末」
  2. ^ 清水晴風著『東京名物百人一首』明治40年8月「団子坂の菊人形」国立国会図書館蔵書、2018年2月9日閲覧
  3. ^ 『グラフふくい』 2004年10月号 ふくい祭り紀行 たけふ菊人形、2018年7月1日閲覧
  4. ^ 『たけふ菊人形40回記念誌 花が輝くとき』、2018年7月1日閲覧
  5. ^ 谷中菊まつり 台東区

参考文献

  • 文京ふるさと歴史館『菊人形今昔―団子坂に花開いた秋の風物詩』(図録)2002年

関連項目

  • 菊花展覧会 - 菊の展覧会。「一本幹千輪咲」など、人形以外の主な菊細工の説明。

菊人形

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/18 20:47 UTC 版)

千里山遊園」の記事における「菊人形」の解説

千里山花壇でも、京阪電気鉄道保有となる以前から菊人形として数千種類ともいう菊花陳列し昭和初期には枚方の菊人形と並ぶ秋の名物行事となっていた。一時期年間40万人もの入場者を記録している。1944年昭和19年)に枚方香里遊園地(現・ひらかたパーク)は軍の資材食糧増産目的とした農地転用されたため、終戦後枚方用地使えない状態の中、1946年昭和21年)から1948年昭和23年)までは、同一会社京阪神急行電鉄保有施設であった千里山遊園菊人形展開催した

※この「菊人形」の解説は、「千里山遊園」の解説の一部です。
「菊人形」を含む「千里山遊園」の記事については、「千里山遊園」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「菊人形」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「菊人形」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



菊人形と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「菊人形」の関連用語

菊人形のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



菊人形のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの菊人形 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの千里山遊園 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS